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◆◇ある夏の日のことです◇◆
お天道様
ーー愉快に笑う声は、不愉快でした。アスファルトに滲む血を辿った先の傷を案じていると、笑い声はどんどん近くなっていきます。
逃げろ。そう脊髄さんと脳さんが警鐘を鳴らします。カンカンカンカン。頭の中で劈くような大きな音。笑い声と警鐘が交互にひしめき合う。それが私にとって一番嫌な音でした。
逃げながら涙を溢さぬように上を向くと、夏の空。遠い透いた夏の空。
優しく見つめてくれるという夏のお天道様は、どうやら私へ手を差し伸べる術を持っていないようで。突き放しもせず助けてもくれず、ただにっこりとそこに存在しているのでした。