05話 説得
ある日の昼過ぎ、今日は母さんは町の集まりがあるらしく魔法の練習に付き合えない為僕は一人でブラブラ町を出歩くのだった。
魔力制御の練習をサボってるように見えるが、ブラブラしつつも体内の魔力をひたすら循環させている。こうすることで常に魔力が全身に行き渡り体と魔力の相性が良くなっている気がする。現にここ一年で魔力保持量はかなり多くなってるし、制御可能量も増えている。
「僕や、トムのとこの坊やだろ?悪いがこの荷物店に運ぶのてつだってもらえんか?」
「いいですよー」
肉屋の前を通り過ぎようとしたとこで店主の奥さんが声をかけてきた。どうやら荷台で市場から肉を仕入れてきたらしいが思いのほか荷物が重く、店に運べないらしい。先日教えてもらった身体強化魔法で自分自身を強化して荷台の自分と同じくらいの大きさはいるイノシシ?ブタ?の肉を持ち上げて店に運んでいく。
「どこに置きます?」
「奥のまな板の上に置いてもらってもいいかい?」
「はーい………よいしょっ」
「ありがとねぇ。お礼にこれ、冷めちゃったけど肉串もっていき。」
「ありがとうございます。でも、お金は払いますよ。ここの肉串はしっかり下味がかついてて美味しいって評判ですよ?そんなものを手伝ったとはいえただでもらったら悪いですよ。」
「あら、小さいのに立派ね。でもこれはあげるは。子供がそんなこと気にしなくていいのよ」
「ありがとうございます」
実はこの前の商人の馬車を助けたことで、冒険者ギルドからそのお礼にとそこそこのお金をもらったのだ。まぁ、ほとんどは父さんと母さんに渡してしまったが買い食いできるくらいは残ってる。
6歳児が10匹以上のゴブリンを一瞬で殲滅したと言うことでこの街ではちょっぴり有名人になってしまった。衛兵達からのはなしで、身体強化を駆使しして戦ったと話が広まり、街をブラブラしているとこうやって声をかけられる事が多々ある。
大の大人が6歳児に力仕事頼むってどうなの?と、思うが魔法がある世界ならではだなとおもう。
ちなみに、どうして北のダンジョンがある方から商人が馬車で来たのか気になって父さんに聞いて知ったのだが、どうやらここが最北端の街だとではないらしい。森の中を少し行ったところにエルフの交流村があらとのことだ。エルフは警戒心が強く基本的に人間を自分達の村には入れたくないらしく、だからといってこの街に来るのも嫌なようで、エルフの村とこの街の間くらいの場所に交流村をつくり、そこで貿易をしているらしい。
ちなみに先代の勇者がエルフと交渉したらしい。
先代勇者様まじぱねぇっす。
てか、自重してない勇者何してるん?全然話聞かないんだけど……
もしかして神託もらって自重中?僕必要なかった?
そんなくだらない事考えてると後ろから声をかけられた。
「ソラくんこんにちは!お散歩中?」
振り向くとピンクの髪を肩くらいに切りそろえた猫耳の女の子がいた。はい、定番の幼馴染です。同い年です。ウチの隣に住んでる猫耳一家の長女のココちゃんです。ちなみに次長はコレットちゃんでお母さんはコーラさんです。何故“コ”縛り?そこ、飲み物の名前とか言わないの!
「ココこんにちは。今日は母さんが用事があるらしいから魔法の訓練ができないから、ブラブラしてたんだ。ココはどうしたの?」
「私はお母さんと魔術用の杖を買いに行くところなの!」
あ、後ろにコーラさんいた。
「こんにちはコーラさん」
「こんにちはソラくん。この子ね、ソラくんの話を聞いて私も魔法の練習するっていって聞かなくてね、しょうがないから教える事にしたのよ。それでいきなり杖なしじゃ大変だろうから子供用の魔法杖を買いに行くところなのよ。」
「へへーいいでしょう」
ココはにたっと可愛く笑い自慢してくる。
ちなみ魔法杖とは生活魔法や属性魔法を使う時に補助として使う道具で使う事で、魔法の方向性を事前に決めて設定できる。設定しておくことで魔法を使ったときに調整したくてもすみ、制御しやすくするとこができる。
また、杖についた魔石が空気中から魔力を集めて術者の足りない魔力を補うこともできるそうだ。さらに、ダンジョンさんの強力な杖、性能の良い魔石の付いた杖のなかには、振るだけで魔法が使えたり、自動で装備者の魔力を回復してくれたりするそうだ。
ソコソコの杖でも術者の魔力+魔石による空気中の魔力を使いより強力な魔力を使ったり、杖に行使した魔法の制御を記憶させ術者は魔法の発動のみに集中してより複雑な魔法を複数つかえるらしい。
魔術士は杖を持つのが必須らしい
と、言っても僕は無詠唱で基本発動してるからあんまり杖の必要性を感じない。まぁ、魔石空気中の魔力を集めるっていうのは気になるから試したい気はするけど……
「ココは魔法使いになりたいの?」
「んー?わかんない。でも、魔法が使えたらソラくんと同じ学園に学部に入学できるかなって思って」
10歳から入る学園では基本的な通常授業の他に、より専門的なことを学べる学部が存在する。基本授業では魔法は生活魔法とごく一部の身体強化と属性魔法しか教えないらしのだが、魔法学部に入ると属性魔法のより難易度の高い魔法も教えてくれるそうだ。
そこで実力がある者はさらに三年間上級学園に行き、より自分がなりたいものになれるように学業に励むそうだ。学園にはいろんな学部があり、ようは上級学園の見学みたいなものだ。最初の3年で才能があるものを見つけて、何を学びたいかを決めるようだ。すでになりたいものにが、決まっているものからすれば基本的な内容はすでに習得している為、学部で自分の持ち味を伸ばす為学業に励むようだ。
「ココ、多分僕は魔法学部にいかないよ?」
「えっ?」
ココが驚く。
「ほら、ココ言ったでしょ。ソラくんのお父さんは衛兵長だから騎士学部とか、剣術学部とかに行くんじゃないかしら」
「はい、そうです。うちの父さんが厳しくて剣術学部に入るように言われてます。」
「そ、そんなぁ」
ココが、悲しそうな顔をする。
「あ、でも、僕は父さんや母さんと同じように冒険者になりたいこら、もしココが良ければ学園卒業後は一緒に冒険者になる?
まぁ、まだ先のことだからその時になってみないとわかんないけど」
「なります。私、冒険者になります!お母さんいいですか?」
「あれあれまぁまぁ、お父さんが許してくれるかしら?父さんを、説得するためにも頑張って魔法の練習をしないとね?」
「はい!頑張ります! じゃぁ。ソラくんじゃーねー」
そう言ってココはコーラさんの手を引いて駆けていく。
まぁ、冒険者になる為には父さんとの約束を守らないといけないんだけどね……
実はこの前の父さんと、母さんに冒険者になりたいことを打ち明けたら父さんに大反対された。まぁ、たしかに実の息子を危険な冒険者に、させなくはないよね。母さんは、魔法の理解があるからすでに僕の魔法の才能に気がついてるらしくほとんど心配していなくOKしてくれた。いつも心配しているのは周りへの被害らしいです。父さんは脳筋だからか剣で打ち合わないと納得できないらしい。いや、6歳児に本気で木剣振るやつとかマジでやばいだろ。一回魔法でブーストしてしばいたろうかな?
(やったら、後がこわきから)そんなことできるはずもなく、口論の結果、上級学園の剣術学部の主席に剣で勝つか、父さんに剣で勝てたなら冒険者になってもいいよとお許しをもらえたのだ。
「はぁー、家に帰って素振りでもするか。」
そう思い、家への帰路につくのだった。
その日の晩、夕食の席で父さんが言った。
「この前のゴブリンの襲撃の件を受けを街の衛兵と冒険者で調査する事になった。
領主とも話し合ったがやはりあの数のゴブリンが街の周辺に出るなんて今までなかった。森のどこかでゴブリンの集落があるかもしれない。集落を発見して殲滅する。エルフも同意見らしく、調査隊と協力してくれる事になった。それに、今は森の移動に優れるエルフが集落の場所を探してくれている」
「大丈夫なんですか?」
母さんが心配そうに聞く
「いや、わからない。集落の規模にもよるが、今回は犠牲者が出るかもしれない」
「そんなぁ」
この世界のゴブリンはゲームのような雑魚モンスターではない。1匹1匹でみたら小学生高学年程度の実力しかない。しかり想像してみてほしい、その小学生高学年が冒険者1人に束になってかかっていく様子を、全然が棍棒を振り回して襲ってくる。全力で。仲間が減っても関係ない。最後の1人になるなっても襲ってきたら?
ゴブリンには理性や恐怖はない。あるのは欲望のみ。
男冒険者は動かなくなるまでひたすら殴り、動かなくなったら解体して肉にする。女冒険者は装備を剥がして犯す、そして口に肉を突っ込む、かんがえるのはそれのみ。そうやって自分たちの数を増やす。タチが悪い事に人間が、ゴブリンを殲滅してもダンジョンが新たに生み出すのだ。つまりダンジョンがある限りゴブリンに絶滅の未来はない。
不足した数はダンジョンが生み出す。子孫を残す為になんでも犯す。本には魔物のイノシシを犯しているが発見されされたらしいと書いてあった。。穴があればなんでもいいらしい。
「そこで今回は元冒険者にも声がかかった。悪いが一緒に来てくれるか?」
「私もですか?ソラはどうするんですか?」
「隣の家の主人とも話しはつけてきた。コーラさんがしばらく面倒を見てくれる。成人するまでのお願いもしてきた。」
「それってつまり、帰ってこれないかもしれないって事?」
「あぁ、規模にもよるが馬車一台襲うのに20匹だ。集落は下手をしたら100匹以上の規模の可能性もある。」
冒険者とはそういうものだ。いつ、何が起こるかわからない。それが嫌で父さんと母さんは冒険者を引退したんだ。
迷っている母さんにさらに父さんは、さらにおいうちをかけられる。
「すでに100匹以上の規模の集落と想定すると、放置すれぼどんどんその数は成長する。なるべく早く殲滅しなければならない。できかったらこの街は飲み込まれるぞ」
「それは、そうなのでしょうけど……」
この街にはダンジョンから溢れ出る魔物の進行が数年に一度ある。その時には1000匹を優に超える魔物が襲ってくる。それから街や近くの農村の住民を守る為に、外壁を高くし街を囲うように設置している。
でも、その時には襲ってくるほとんどが意思のない魔物だ。突進のみを繰り返すイノシシの魔物や、魔物化により動きが遅くなりその代わりに力が強大になった熊の魔物。ごく稀に虎の魔物や巨大蛇の魔物が出るがそのほとんどが個の個体のため、基本一直線に人間の多い街に向かって進行してくる。
森と街の、間にいくつもの罠を作ればそのほとんどは罠で倒せる。撃ち漏らしがあってもそれを倒せばいいだけなのだ。街は外壁があり、魔物は一直線に進んでくるのみ。
人間様の圧倒的有利である。
しかし、今回のゴブリンは集落がある。つまり拠点があるのだ。向こうの好きな時に攻められて、なんなら街を迂回して農村地帯の畑を狙うこともできる。街に籠城したら農村地帯を襲われて街の中で全滅。罠を貼ろうにも向こうがいつ、どこから攻めてくるかわからないから罠のはりようがない。できる選択肢はこちらからの奇襲のみ。少数戦力で挑んでもゴブリンには数の有利がある為、すぐに取り囲まれてしまう。なら、最大戦力を集めて殲滅するしかない。
「あの、僕、行ってもいいですか?」
「「ダメ!」」
2人から反対された。誰か自分達の息子をそんな危険なところに連れていくのだろう。反対されて当然か……
「お前みたいなガキがでしゃばるんじゃない 、お前はコーラさんのところでおとなしく…っん?」
「まって」
母さんが父さんをとめる。そして、僕の顔を見つめて少し考えて口を開いた。
「いいわ。ソラはいきたいのね?」
「母さん、……はい。僕なら力になれます。」
「わかったわ、ただし、そうね、本気の私達2人に1人で勝てたら連れて行きましょう。」
「セシリー、俺は反対だ。これは大人の問題だ。子供を連れ出すのは良くない。こんなチビの甘ったれなんかな。少し魔法がうまくて、街の周りをいつまででも走り続けられる体力馬鹿だとしてもな」
父さんひどくね?本気で戦ってないだけで、魔法ありなら父さんにもかてる気がする。まぁ、後が怖いし気まずいから隠してるけど…
「トム、この子はあなたが思っている以上に強いわよ。正直に言えば私もソラを連れて行くのは反対。でも、話を聞く限りそんな事言ってる場合じゃないと思うの。それに今のソラはあなたのより強いわよ」
「ほほう。いいだろう。明日の仕事は昼までだ。そのあとやってやろうじゃないか。最近息子に馬鹿にされてる気がしてならなかったんだ、いっちょ元C級冒険者ペアの実力見せてやろーじゃねーか」
父さんが怖い。めちゃ怖い。
「そうと決まればソラ、今日は早く寝なさい。明日は朝から魔力使っちゃダメよ?訓練してて、魔力切れで負けたなんて言わせないからね?」
「街の周りの走り込みも明日は中止だな。まぁ、どっちにしろこんな状態じゃいつゴブリンがおそってくるかわかんないから走り込みはなしだけどな。そのかわり午前中は素振り1万回だ!」
この親父、腹黒い。息子の体力を削ってきやがる