04話 初戦闘
この世界は、元の世界と同じで一月が30日前後、一年12カ月であった。これも先代の勇者が決めたいことらしいく、今では世界中に浸透しているらしい。僕はと言えば、この世界の生活にだいぶ慣れてきて先週6歳の誕生日を迎えた。この体の誕生日は12月24日であり、この世界にはクリスマスという風習はないのだが、すごく損した気分になる。
そんな寒空の中、というか新年の早々に何をしているのかと言うと、町の外周を走っている最中だ。もう日課になってしまい、はじめの頃は午前中かかっても1.2周しかできなかったのが、今では半分の時間で同じ距離を走る事ができる。もちろん走っている最中にも魔力制御の訓練は怠らない。
僕がいる国はアネモイ王国と言うらしく、アネモイ王国は王都を中心として北はボレアース地方、南はノトス地方、東はエウロス地方、南がゼピュロス地方と言うらしい。
今いるのは北のボレアース地方の最北端、領主のフランツ男爵が治る土地らしくこの町の名前もフランツと言うそうだ。
領主の館を中心に住宅区などがありその外周を高い外壁がかこっている。
町を周りには草原が広がり、南に行けば農村地帯が広がり、北には広大な森がひろがっている。その森のなかを北に1月ほど進むとダンジョンがあるらしく、ダンジョンからあふれ出た魔物によって森は魔境とかしているそうだ。父さんもたまに町の騎士たちと一緒に森に行き魔物を間引いているらしい。6歳の誕生日の時に連れてってくれるようにお願いしてみたが当然のように殴られた。
脳筋親父である。言いたいことはわかるのだがまずは手が出るのだ。
数年に一度、魔物がかなりの数ダンジョンからあふれ出てくることがあるらしく、それを防衛するために、最後の砦としてこの街が築かれているとのことだ。その町の領主のフランツ男爵もかなりの剣の使い手だそうだ。というか、父さんの師匠らしい。町の領主で剣の達人で、なおかつ冒険者の師匠ってどういうこと?経歴を疑ってしまうことばかりだ。いつか見てみたいとおもう。
そんなわけで魔物があふれてくるダンジョンが近くにあるといいつつも、そのダンジョンまでのは広大な森があることで普段はこの町は平和だそうだ。(平和じゃなかったら6歳児が一人で町の外に出て走り込みを行うとかありえないけど)家の近くの北門から外に出て4週目に差し掛かろうとするとき森の方角から馬車がすごい速度でこちらに走ってきている。
「た、たすけてくれー」
よくみると、北門から森へ向かう道を馬車が爆走している。
さらに、馬車の後ろから子供くらいのサイズの何かが追っている
「ゴブリン?」
確か母さんと一緒に行った図書館の魔物の本でみたことがある。1メートルくらいの背丈に全身緑で髪は生えてなく腰に布1枚巻いただけの人型魔物だ。軽装でイノシシの魔物にまたがり棍棒を振り回して追ってきている
「なぜこんなところにゴブリンが?ソラ、危ないから今すぐ町に入りなさい」
そういって今日は後ろから付いてきていた父さんが腰の剣を抜きさり馬車のほうへと走っていく。
遠くでよく見えないが、ゴブリンの投げた棍棒が運悪く馬の頭にあたり馬車が止まってしまった。馬車を取り囲むようにゴブリンが集まってくる。馬車から剣を持った冒険者が下りてくるがその数は3人しかいない。冒険者は馬車を守るようにゴブリンを牽制していく。いくらゴブリンが低級の魔物だとしても今回は数が多い。イノシシに乗っていなかったゴブリンも追いついてきて合計20匹以上はいる。父さんは数的不利を感じたのか身体強化魔法を使って一気にかけていくがまだ距離はあり追いつきそうにない。
町の衛兵も異常に気が付いたのか僕のことを通り過ぎて馬車の方角まで向かっていくが、身体強化魔法が使えないのかそのほとんどは動きが遅い。
どう考えてもここから馬車までは距離がありすぎる。
仕方ない加勢しよう。
ゴブリンと冒険者の戦闘が始まった。数で負けてる冒険者は、1個人の力の差を生かせずゴブリンに数で押されている。このままじゃ危ない。
まずは一瞬だけでもゴブリンの注意を引くために魔法を使用する。
右手に魔力を集め、その魔力を使い空気を圧縮していく。いつもの練習の応用だ。圧縮した空気と魔力をさらに魔力の層で覆い、放物線上に馬車の方角に向かって思いっきり投げる。その時に馬車までは飛ぶように魔力の玉をさらに加速の魔法をかける。
魔力の玉は、そのまま馬車の近くに着弾する。そして、……
ッポンっと大きな音をだす
「コントロールわっる!?まだまだ練習が必要ですね」
ただの大きな音を出しただけだ。しかし、ゴブリンはその音に気を取られてしまう。冒険者も一瞬確認を行うがすぐに自分たちへの影響はないと判断し、注意のそれたゴブリンを叩き斬る。
仲間の悲鳴を聞きゴブリンがさらに注意をそれたすきに僕は自分に魔法をかけていく。
3匹倒したといってもまで残り17匹以上、父さんはまだ追いつかない。このままではすぐにまた冒険者が不利な状態になってしまう。その前に……
「【体内加速】っ…からの【視界内転移】!、さらに【視界内転移】!【視界内転移】!【視界内転移】!」
僕は1メール先に座標を限定し転移を連続で使用する。
衛兵集団の間をすり抜ける。
馬車を守ろうと無理にゴブリンと馬車の間に入った冒険者が後ろから別のゴブリンの棍棒で殴られて冒険者の一人の剣を落としてしまった。
父さんの横を転移で抜ける。
剣を落とした冒険者を取り囲み、獲物を見つめる目をしたゴブリンが冒険者に棍棒を振る。冒険者は後ろに避けようとバックステップを踏むがその先にいたゴブリンにさらに殴られる。2回も棍棒を振られよろけて冒険者は倒れてしまった。
ゴブリンはそれを見て追い打ちをかけるように笑いながら棍棒を振り上げる。その眼には一人の少年が映っていた
「やらせないよ?」
ゴブリンは転移の連続使用で急に目の前に現れた少年にあせりつつも振り上げた棍棒を少年に向かった振った。
普通ならよけられない距離。よけられない速度。唯一でるのは少しでも急所に食らうのを避けるために体をひねるくらいだろう。少年はその距離にいたのだ。しかし、少年はするりと横にかわしつつ、こん棒を持つ腕を手で押しつつ軌道をずらす。結果棍棒は何もない地面にぶつかる。
少年は冒険者が落とした剣を拾いに走り魔力を集めた右手で剣を拾う。そして、その剣をゴブリンに向かい投げる付ける。剣は魔力による推進力を得て先ほどのゴブリンに一直線に飛んでいき刺さる。
「やっぱり投げながら魔力で加速させるよりも、素直に運動エネルギーを魔力で変換させたほうがコントロールはあがるのか」
一瞬で仲間の1匹がやれれたことで、ゴブリンは少年の異常性を察知しいち早く排除すべく全員でとりかかろうとする。二人の冒険者もそうはさせるかと追いかけようとするが、2匹のゴブリンに囲まれ動けない。
「ソラ!逃げろ!」
父さんがあと少しのところまで来ている。でも僕は焦っていない。だって君たち遅すぎるんだもの。
先ほど投擲した剣に向かって転移して剣を引き抜く。おもったよりも深く刺さっていて、というか貫通してて自分の力じゃ引き抜けなかったので魔法を使い引き抜く。そしてこちらを追ってくるゴブリン1匹に向けて剣を投擲。投擲した先にさらに転移する。周りをゴブリンに囲まれているが近寄られる前に剣を引き抜き一番近くのゴブリンに投擲、転移。そして引き抜き……
父さんが駆けつけ、二人の冒険者のところにいたゴブリンは一瞬で切り伏せた。
7匹のゴブリンに囲まれるが魔力を今までよりも多く使い、弧を描くように剣を投擲する。剣は残っているゴブリン7匹の胸を貫通し僕のところに戻ってくる。
「ふぅ。初めての戦闘だったけどうまくいってよかった。」
「ふぅじゃない!お前は何をしてるんだ!なにかあったらどうするんだ!」
そう叫び父さんは僕のことをなぐ……れなかった。たまにはよけてみました。
「衛兵長!大丈夫ですか?その子供は?ってソラ君じゃないですか!」
追いついてきた衛兵が僕の顔をみつけて驚く。そりゃそうだろう、6歳児がゴブリンを15匹近くを瞬殺したのだから。
「どういうことだソラ?いつの間にこんな魔法が使えたんだ?というか俺のゲンコツかわした時といい早すぎないか?そんな魔法聞いたことないぞ。」
あ、【体内加速】の魔法切り忘れてた。通りで回りのひとがゆっくりしゃべると思った。
「いやー、これはあれです。秘密です。それより大変でしたよ。父さんが剣術教えてくれないから剣があっても投げるしかできなかったじゃないですか!」
逆ギレしてみました。説明っていても前世の幼馴染から魔法をもらったとか、神様からもらったとか言えないしな……
「まぁいい。聞いても俺は魔法のことはさっぱりわからんしな。」
「おい、そこの子供。助けてくれてありがとう。助かった。」
ん?あぁ、完全に蚊帳の外だった冒険者が声をかけてきた。そのうしろから馬車から商人がでてくる
「ほんとに助かりました。私の名前はカーターです」
「私は衛兵長のトムだ。詳しいお話は詰所で聞こう。同行をおねがいしてもいいかな?ソラ、お前は先に家に帰ってなさい。私が帰ったら説教だ。すまないがグラント、うちの息子を家まで送って貰ていいでか?」
「はい!衛兵長。私が責任もって送っていきます。じゃぁソラ君、一緒にかえろうか。」
グラントという衛兵はそう言って僕に手を差し出してきた。
「はい。よろしくお願いします」
グラントの手を握って二人で家まで帰った。家に着く前グラントからのさっきの魔法の追及もすごかった。
やっと家について解放されると思ったら、グラントから説明を聞いた母さんの質問攻めにあい、それが終わったと思ったら今度は家に帰ってきた父さんからの説教が待っていた。
結局、エクストラスキルについては自分で考えて使ったらできたで言い張った。その内容をはぐらかした。最後に父さんに、明日からちゃんと剣術を教えてもらえる約束をもらえたので良しとしよう。その日も寝る前に魔力を使い切ってねるのであった。
翌日より剣術の稽古が始まったが、6歳児にあう木刀で素振りをするのであった。そう、木刀である。この世界に来て初めて転移者の持ってきた商品に触れることができた。最初が木刀って……
神様は信託をするって言ってたけど、転生してから6年。最北端の街ではあるがいまだにこの街にはリバーシもない。ん?これは一攫千金のチャンス?そんなことを思いながらにやにやしてると
「集中しろ!!」
ビッシ!
痛っ。父さんに木剣でたたかれた。あくまでこの世界の基本は両刃の剣である。刀は勇者が持ち込んだとされるらしく使っている人はほとんどいない。父さんと鍛冶屋に行き子供サイズの木刀を見つけ、父さんにお願いして買ってもらったのだ。だって、異世界に来たら刀の方がかっこいいじゃん。僕の中に眠る中2病がうずいたのだ。
しかし、今思えば父さんと同じ木剣にしておけばよかったとおもう。なぜなら……
「俺は刀の使い方はわからん。」
父さんはそう言って、ひたすら僕に剣を振らせるのであった。イメージするのはどこかで見たことあるような撫でるように引いて切るイメージ。力でたたき切るのではなく引く。それで切断する。この世界の刀がどの程度のものなのかはわからないがたぶんあっているはず……
「そろそろやるか?」
「はい。お願いします」
父さんが飽きてくると実践形式で剣を振るう。稽古をつけるために父さんも木剣を買い僕と打ち合ってくれる。ただし、その日の機嫌で6歳児に向かって力任せに剣を振ってくるのだから迷惑きわまりない。
体内加速を使えば対応できるのだがさすがに稽古で使用したら練習にならない。1年間鍛えた体で挑んでいく。6歳児だけど。相手は大の大人だけど……
午後は母さんと魔法の勉強をする。実技のときは母さんと町の外周に来て練習する。母さんの説明や本の内容をよく読み、自分の中で仮説を立てていく。
属性魔法は今知られているのは6種類だ。その6種類を自分のなかでどんな効果の魔法なのかを仮定する。
【火属性魔法】 熱量上昇 物質創成
【水属性魔法】 熱量減少 物質創成
【風属性魔法】 運動エネルギー
【土属性魔法】 物質創成 運動エネルギー
【光属性魔法】 不観測エネルギー
【雷属性魔法】 応用 電気エネルギー
そこで、気が付くのは火属性と水属性魔法は両方とも熱量の変更だと思う。二つの魔法の違いは火属性魔法は空気中の温度を上げても基本は炎は生まれない。つまり無意識のうちに可燃物質=魔力を創成し燃やしてて消化していることが多い。逆に水属性魔法は魔力で水を生み出し、それを打ち出したり、場合によっては温度を下げて氷にしたりして応用する。
つまり、
火属性魔法は魔力を消費して現象を引き起こしている
水属性魔法は魔力で水を創成してそれを加工している
こうなってくると結局は土属性魔法と風属性魔法の応用になってくる。つまり、属性魔法というのは魔力で何かを創成したり、加工することをさすのではないだろうか。
まぁ、光魔法に関しては物理障壁作成とか物理法則も関係ないような現象をおこすので意味わかりません。が、まぁ、困ったら魔力に頼るってことでOKらしいです。
で、なぜそんなことを検証したかというと、詠唱魔法と無詠唱魔法の違いを知りたかったのです。
この世界の人間は母さんの知る限り無詠唱魔法を使う人は基本的にはいないそうです。詠唱の省略はできるそうですが……。この世界っという言い方をしたのは、どうやら異世界からきた勇者は無詠唱で魔法がつかえたらしいです。(あくまで図書館で読んだ物語の内容ですが…)
基本的にできない。っというのはどういうことかと聞くと、生活魔法に関しては無詠唱で魔法が使えるようだ。おそらくだが、イメージが簡単だからではないかなと思います。イメージできるかどうかが問題なのではないだろうか。
詠唱魔法はその文章に規定された効果をイメージできるから難しい魔法であっても魔法が使える。そして魔法に必要な魔力はは自動で消費される。また、魔法の照準や効果の調整は自分で修正しなければならないから魔法ごとに経験を積んで制御方法を知らなければならない。
無詠唱魔法は魔力を使ってその現象や効果を選択していく。つまり、イメージができてそれに必要な魔力があれば理論上どんなことも可能なのだ。まぁ、元高校2年生の僕の頭じゃできることなんて限られているけど……
たとえばファイアーボールを使おうとしたとき母さんが詠唱で使う場合は、詠唱を行う、魔力が消費されて炎が発生する、その炎が射出される前に魔力を使い、威力の調整や射出する方向や速度を既定の魔法から調整しなければならない。
まぁ、慣れてくれば魔法名のみを唱えるだけでいいそうだけど。つまりは魔法ごとに調整を毎回しなければならないのだ。
無詠唱で魔法を使おうとした時は、まず魔力で火を生み出し、その火の玉に運動エネルギーを魔力で作り出すだけで終わるのだ。しかも詠唱しないわけだから声に出さなくても良い。戦闘中にも魔力を操作するだけで済むのだ。
出来ることなら無詠唱で魔法が使えた方がいいだろう。
と、思い無詠唱で魔法の練習をするのだが、元となるものがないため失敗したら何が起こるかわからない。ファイアを使おうとして住宅地のど真ん中で火柱が出た。……なんてことになっては大変だ。
実際にはやってしまい、こっぴどく怒られてから、魔力操作の練習以外は家での魔術の練習は禁止されたしまたまたのだ。
そんなわけで、魔法の練習の時は母さんと一緒に町の外にきて練習をするのだった。
「だいたい属性魔法の基本はできるようになってきたわね。一年でここまでできるようになるなんてすごいわね。
今日は身体強化の魔法をおしえましょうか」
「はい。お願いします。」
「じゃぁ、まずは思考加速からやりましょうか……」
こうして父と母による息子の魔改造が続くのであった。