表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終わりゆく世界に紡がれる魔導と剣の物語  作者: 夏目 空桜
第六章 それぞれの過去に
98/266

TSヒロイン・魔法少女(?)頑張る

2019/04/22~24に投降した『キュアっと』『お約束』『褒めてくれる?』の三話を結合改稿し、ご先祖の悪ノリを悪化させました。



あ、ちなみに変身するときは全裸です。

え、聞いてない?

そうですか……

 どうか叶えてくれ、ね。 

 ふん、お前の思惑や周りの思惑はオレには関係ない。

 ただ、


 負けてくれるな――


 これだけは同意してやる。

 アル君と二人で絶対に帰るんだ!


 ――それで良いんだよ、どうせ君は考えすぎるとショートするんだし――


「むきぃー!! いちいちうっさいな!! ぐちゃぐちゃ居てないで、早く力貸せ!」


 ――……やれやれ、人が素晴らしい奇跡を授けようと言ってるのに、偉そうに……まぁ良いや。これからボクの言う手順で行動して――


「ふ……アル君以外の言うことをオレが聞くと思うのか?」


 ――いちいち面倒臭いな。アルフレッドを助けたいなら、早く言うこと聞きな。良いかい、ここからはボクの言った文言通りになぞるんだよ。一言一句間違いなく――


 ぐむぅ……

 ちょっとひねてる辺りが、アル君に似てて遣り難いったら、ありゃしない。

 全部を信用するのは危険な気もするけど、とりあえずアル君を助けるためだ。


 よっしゃ、腹は括った!


 男は度胸って言葉もあるし、『女は度胸だ』ってドーラママも言ってた!

 オレは、両方だ!

 じゃあ勢いで暴走すれって事だよな!!


「やぁぁぁぁってやるぜッ!! へいご先祖! 援護してくんな!」

 

 ――どっから出たキャラか知らないけど、とりあえずその覚悟やよし! じゃあ呪文を教えるから、ボクに続くんだ! 『緑吹き抜ける清浄なる風』――

 

「緑吹き抜ける清浄なる風!」

 

 ――参上! キュアエルフ!! ――

 

「参上! キュアエルフ! ……ん? なんですと!?」


 ちゃ~らっら~♪ ら~らっら~♪


 何だ? 頭の中に変な音が流れて……


 バシュッ!!


 ん、何の音だ? ちょっと寒……

 ふぁ!?


 何故かオレの服が全部はじけ飛んではる!?

 その様、まさに痴女!!


「ぴゃ、ぴゃ~! ><」


 慌てて身体を隠そうとするが、何故か身体の言う事が聞かない。

 それどころか、何故か全身を変なリボン状の生地がクルクルと包み込み、膝上20cmはありそうな超ミニスカートの、ふりふり衣装!!

 ……ぶっちゃけ、女の子と大きな子供向けのニチアサアニメみたいな変身ヒロインの格好である。


「キュアエルフ、正義の呼び声に導かれキュアっと参上! (✿╹◡╹)キラン」


 ……

 …………

 ………………


 おおぅ……orz 


 おい、口が勝手に動いたぞ!

 しかもオレの意志に反してポーズまで決めてるし!

 あと、キュアっと参上ってなんじゃい!


 もう、いっそ殺せ……


 ――ふふ……ボクと契約して魔法少女になったね――


 ……おい、なんか邪悪なマスコットみたいなこと口にし出したぞ!?


 ――あ、でも今は少女じゃ無いから魔法男の娘か? 何だかうっすい本にありそうな変身だね。『触手に弄ばれる魔法男の娘リョウ』とかね――


「うるせー! 黙れこのオタ先祖!」


 ――ま、それは冗談として――

 

「ほんとだな!? 因果律がどうのこうのとか言い始めないだろうな!? マミるとかやだぞ!」

 

 ――戦闘系ヒロインなら、変身シーンはつきものだろ――

 

「偏った考え方をしていなはる。というか、改めて理解した。お前やっぱり父さんの先祖だ」


 ――ほれほれ、思考加速はもうそろそろ切れるから、早く対応しないとブルーソウルのブレスで消し炭になるぞい――


「ぞいとか言うな、この野郎……んで、この後はどうすれば良いんだ?」


 ――えっと……まぁ、ほら、そこは適当にバスターエルフとかサイクロンエルフ、もしくはエルフインフェルノとか――


「なんだよ、その頭の悪そうなネーミング。そんなんで本当に大丈夫なのか?」


 ――魔法はイメージの力だよ。だからネーミングなんてのは、自分がイメージをより具体的にするための手段に過ぎない。だから、いっそ『あ』でも『へっ!』でも何でも良いのさ――


「確かに、そうらしいけど……『へっ!』って、春日じゃないんだから……」

 

 ――じゃ、思考加速切るよ――

 

「え? あ、おい、まだ……って、ええい、ままよ! クリスタルウォール・リフレクション!!」

 

 オレ達が展開したクリスタルウォール・シュッセルは、その形状を蓮の蕾へと変えて高速回転を始める。

 襲い来る鈍色のブレス。

 鈍色の濁流に飲み込まれる!

 そう、恐れを抱いた瞬間、蕾は花開き、輝ける水晶の花となってブレスと衝突した。


 ――いちいち技名で格好つける辺り、さすが京一の子供だね――


「やかましゃあ!」


 吠えるオレの正面では、蓮型の水晶は高速回転を繰り返しながらブレスを切り刻む。

 防げてはいる。だけど有効打になっているかと聞かれれば、あくまで防げているにすぎない。

 むしろブレスを受けた水晶の蓮の花は、まるでその花びらが一枚一枚剥がれ堕ちるみたいに、徐々に削れて輝きを弱めていく。


「本当に大丈夫なんだろうな」


 ――さあ? ――


「おいぃ!?」


 ――その力はかつての十分の一以下だとしても、相手は全ての竜の頂点に立つ存在。ボクの助力が有るとて、今のキミが余裕で勝てるような存在では無いよ――


「じゃじゃ、じゃあ……」


 ――じゃーじゃー言う暇があるなら願うんだ。君の力は魔王やエルフ寄りかもしれない。だけどその肉体を構成していたのは、間違いなく人間のそれだ。まして、君は家族や祖父母から人間としての愛情を一杯受けてきたんだ。その思いが、魂に刻まれてきた優しさが、魔王如きに屈すると思うのかい? ――


「それって……」


 ――『愛は何よりも重く、そして、紡ぐべき感情』……あの人が、ボク達によく言った言葉だ――


「オレも、それ、聞いたことある……」


 ――なら、もうわかるだろ。魔法でも、魔術でも無い奇跡。君が契約した人の本質が持つ力の意味を――


「……ああ!」


 そうだ、オレがアル君の戦いを止めたかったのは、暴力に染まる彼を許せなかったからだ。

 喩え、その原因がオレに合ったとしても……

 いや、オレに合ったからこそ、アル君を止めたかったんだ。


 だからこそ、ソウルドレイク……いや、悪心に染まった善なる竜王ブルーソウルを止めるのは暴力じゃダメだ。

 かつての善なる竜が何でこんな恐ろしい姿になったのかはわからない。

 だけど、アル君もお前も、オレが止めてみせる!!


 いと慈悲深き者よ

 人のためにその身を捧げし者よ

 貴方の真心を我に貸し与え賜え

 天から堕ちし者にも祝福を与え賜え


「ホーリー・ブレス!!」


 目には目を。

 スペルは違えどブレスにはブレスを!!


 いつの間にか持っていた杖(白とかピンクの基調で羽まで付いてる、ソウルが高一男子なオレにはハードルが爆上がりな恥ずかしいアイテム)は、即興の詠唱に反応して溢れる光を放出した。


 ブレスとブレスのぶつかり合い。

 眩い光と暗澹たる光が衝突し、凄まじい衝撃波が辺りを襲う。


 ――いちいち術名にドイツ語を入れるし、詠唱はいらないって言ってるのに唱える辺り、読めもしないのに意味も無く英字の聖書とか持ち歩く厨二と一緒だねぇ――


「うーさいっ!」


 このクソ忙しい時にいちいちチャチャ入れてきやがって。

 お前なんかに構っている暇なんぞ、こっちには無いんじゃ!


 さっさとこのソウルド……ブルーソウルを倒してアル君助けないと。

 大怪我したままじゃ、いつ命を落としたっておかしくない……


 カーズさんも世界も、先祖の思いも全部ひっくるめて救うとか、そんな神様みたな事は言わない。

 でも、アル君だけは、せめてアル君だけは……


「アル君だけはっ!!」


 恥ずかしいステッキはさらに輝きを増し光を放つ。


「これがオレの、全力だああぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁっ!!」


 バキンッ!


「そんな……」


 ステッキの先端のオーブが音を立てて粉々に砕け散る。

 やっと、やっと起死回生のチャンスが回ってきたと思ったのに、もう終わりなのか……


 ――まさか、ボクが500年もの間研鑽し続けたオーブが、たったの一回で崩壊するなんて……――



 あっさり壊れるとは、ずいぶん怠惰な500年を過ごしたものだ。

 とか思ったけど、口には出さない。

 五月蠅そうだし。


 それよりも、気になるのはこの纏わり付くオーブの破片だ。

 確かこの自称先祖(認めたくは無いけど)はかつて宮廷魔術師だったはず。

 そのエルフが作ったオーブだけ有って、破片となってもまだ莫大な魔力を帯びていた。

 いや、それだけじゃ無い。

 魔力を帯びた舞い散った破片が、まるでダイヤモンドダストにも似た煌めきを放ちながらオレに纏わり付いてきた。


 ――……いや、これはあるいはチャンスかも知れない。予定していたよりも早くアレ(・・)を試すチャンスかも!? ――


 どうやら、この先祖、まだ何か嫌な隠し球を考えていたらしい。


 ――オイ、子孫! 今から言うボクの呪禁をそのままなぞるんだ! ――


「…………」

 

 ――何だよ、その反応――


「嫌な予感しかしない」

 

 ――アルフレッドと未来を歩きたいなら、黙って言う事を聞きなよ――


 ぐ、この野郎、痛いところ突いてきやがって……


「わかった、わかったから早く力貸せ!」


 ――偉そうに……良いかい、言うよ。輝き失う事なきダイヤの煌めきよ、天に繋がる架け橋となれ――


「……輝き失う事なきダイヤの輝きよ」


 若干どころじゃ無く警戒する。


 ――エターナル・ダイヤモンドパワー――


「エターナル・ダイヤモンドパワー……」


 ん?

 エターナルでダイヤモンドパワーとな?

 何だ、その厨二が好きそうな『相手は死ぬ』的なパワーワードは。

 こいつのフリで、初めてイケそうなネタな気がするぞ。


 ――メイクアップ!! ――

 

「メイクアップ!!」


 ……ん?

 メイクアップ?



 バシュッ!!


 嫌な予感……

 この聞き覚えのある音と何か覚えのある肌寒さは……


 ふぁ!?


 また俺の服が全部はじけ飛んではる!?

 その様、まさに痴女part2! いや、今は男だからただの露出狂!


「ぴゃ、ぴゃ~! ><」


 信じた俺がバカだった。


 ――安心しろ! 露出狂の《きょう》の字を卿に変えれば何か凄そうだから! ――


「あほ! 抜本的に間違ってるわ! って、何を人の心読んどるんじゃい!!」


 ご先祖との罵り合い。

 やっぱりコイツを真っ先に浄化しとくべきだった。

 

 だが、そこからはさらに予想外の事が起きた。

 オレに纏わり付く砕け散った破片はさらに細かい破片と成り、オレの衣装を変化させたのだ。


 ……ええ、もっとふりふりのキラキラに。


「この地上に絶望なんかいらない! ヴィヴィッド・キュア・エルフ、皆の呼び声に応えてここに復活だよ!! (✿>◡╹)キラン♥」


 ……

 …………

 ………………ほんと、もういっそ殺してくれorz


 ――よっしゃ、上手くいった!! やっぱりテコ入れ多段変身は男女問わずヒーローのお約束だよね~――

 

「こっちとらさっき恥ずかしい変身したばかりじゃい!! テコ入れ早すぎだろ、このポンコツクソエルフ!!」


 ――何だと!! こっちが素晴らしい力を貸してあげてるってのに、そんな言いぐさ無いだろ!! ――


「力貸すならすんなり貸せやゴルァ! ポーズも台詞もこんな衣装もいらんだろ!!」


 ――テコ入れだよテコ入れ――


「人の身体使って、己の欲望満たしてるだけだろ!!」


 ――良いからほら、ブルーソウルが来てるよ~――


「こ、こにょ野郎……ブルーソウル浄化したら、絶対にお前を冥府送りにしてやる!!」


 GRORORORO!!


「やかましゃあ! お前も助けてやるって言ってんだから、こっちの心意気を少しは汲みやがれ!! 喰らえ、バスター・ホーリー・ブレス・アルティメット・インパクション!!」


 ――何、その頭の悪い法術名。とりあえず強そうな言葉ばかり並べてみました、みたいな――


「うるさいうるさいうるさい!! 皆お前のせいじゃ!!」


 ――や、その法術に関しては、って言うか、さっきから君が使っている法術に関してはボクは無関係だよ――


「…………」


 ――だってボク、使徒じゃ無いから法術使えないモン――


「…………(〃・ω・〃)」


 やめよう、余計なことを言うと自分の傷口が血を吹き出しながら開きそうだ。

 とりあえず、オレのホーリーブレスは猛り狂うブルーソウルを飲み込んだ。


 ――ホーリー・ブレスじゃなく、バスター・ホーリー・ブレス・アルティメット・インパクションだろ? ――


「うーさい! いちいちそこに触れるな!! もうこうなったらやけくそだ! ホーリー・ブレス・ダイヤモンドパワー!!」


 新生・恥ずかしいステッキからさらなる光がほとばしった。


 光が輝きを増すごとに、身体から根こそぎ力が失われていく。

 気を抜けば、自分の放った法術で意識を失いかねないほどの疲労。


 これは正真正銘の全力。


 後先なんか考えていない全力だ。

 これで勝利に手が届かなければ、オレとアル君の敗北は決まる。


 ……敗北?


「正義は負けない! 乙女の祈りは届くから!! ……っておいごるぁ!! 人の身体勝手に使って変な台詞吐かすなや!!」


 ――てへ――


 このクソエルフ……

 ブルーソウルの前に、本気で成仏させたろか!!


 ――でも肩の力は抜けたでしょ。あんまり気負うなよ。命を賭けても賭けなくても個人が出来る事なんてたかだか知れてんだからさ、悲壮感なんて背負い込んでもしゃあなしじゃん――


「エルフ……」


 ――いや、そこはせめてご先祖とかイプシとか呼んでよ――


 正直気にくわないヤツだ。

 気にくわないヤツだけど……コイツの言うとおりだ。

 そうだな、オレが出来る事をやりきろう。

 眉間に皺を寄せたぶっさいくな顔でアル君を抱きしめたくない。

 脳天気なバカと思われるぐらいでも良いから、オレは笑顔でアル君を抱きしめる!!


「もちろん……勝利をもぎ取ってだあぁああぁぁあぁっ!!」


 ドウッ!!


 と一際強烈な輝きがステッキからほとばしり、光のブレスは鈍色のブレスを飲み込んだ。



 静寂、そして、まるで網膜が焼き尽くされたみたいな真っ白な暗闇が辺りを包んだ。

 どこかで、何かの断末魔が聞こえた。


「……勝った、のか?」


 ダメだ、身体が重たい。

 何も、考えられない。

 でも、まぁ……勝ったなら、良い、か……

 うん、オレ頑張ったよね……


 アル君、褒めてくれる……かな?


 ふらりと揺れる身体。

 自ら立って支える事も出来ず、身体が膝から崩れ落ちていくのがわかる。


 トサ……


 それは夢か幻か、柔らかな感触だった。


「ナイスファイト……」


 うっすらと聞こえた声。


 ああ、この声……

 それは、オレが初めて本気で好きになった、少年の声だった。

全体改稿中で既存の読者様にはご迷惑をおかけしております。

もう少し先になりますが、展開が大きく変わると思いますので今しばしお待ちください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ