TSヒロイン・招かれざる転移者
2019/02/07・9に投稿した『異世界へかもん! 〇〇〇〇〇!!』『異界から来襲せし者』の2話を改稿し、誤字表現を中心に改稿し、無駄にあのおっさんの台詞を追加しました。
「アル君、その顔は酷いと思う」
「いや、一回キミは冷静になるべきだ。Be COOl……」
呪文みたいに唱え続けられるBe Coolの言葉。
「むぅ……それじゃまるで、オレがいつも本能の赴くままに生き急いでるみたいじゃ無いか」
「自覚無いの?」
「うわぉ、酷い!」
「酷い言い方かも知れないけどさ、たまにはゆっくりと冷静に考えてから行動した方が良いと思うよ?」
「うぎぃぃぃ……恋人にその言い草は酷くない?」
「恋人だから言ってるの。キミが心配何だよ」
「えへへ、恋人だから……うへへ」
えへへ、やっぱり口に出して言ってもらえると凄く嬉しい。
「……キミは馬鹿犬か?」
「何か言った?」
「いや、何も言ってないよ」
「そ? なら良いんだけど」
「一応、キミが思い付いた方法を聞いておくよ。危険なら止めるし、問題無さそうなら見守らせてもらう」
「ありがと。あ、その前にアル君に聞きたいんだけどさ」
「何?」
「魔法の威力の差ってイメージ力の大きさで間違いないんだよね?」
「そうだね。多少の語弊はあるけど、その認識で間違いない」
「語弊?」
「契約の度合いも大切なんだよ。下位の契約なのか上位の契約なのか……もちろん下位でもイメージ力がしっかりしていれば、上位契約以上の力を出せたりする」
「じゃあ、上位と下位の差って何?」
「恩恵の差だね」
「恩恵?」
「要は信奉する相手から力を沢山借りて魔法が使えるか、自分からひねり出して魔法を使うかの差だよ」
「なるほど、分かりやすい」
楽して魔法を使うか、魔法を使うたびに疲れたり死にかけたりする差って事か。
「何度も言うけどキミは想像力が豊かすぎるから気を付けてね。さっきも言ったけど魔法は基本的には信奉する相手から力を借りるものだ。何度も言うけど、借りられる以上の力を想像してしまうと、自分でその不足分を補わないといけない」
「そして自分の力を使っても制御出来無かったら、その魔法は術者を襲うだったよね」
「そう言うこと。本来なら自分の出せる力のイメージってそんなに大きくならないはずなんだけど、キミの世界は想像力を刺激する漫画という絵本が多いみたいだから、その影響もあるんだあろうね」
「厨二に美味しい恩恵があったと思ったけど、そう言う危険もあったんだね」
「とりあえず、キミに読ませて貰った漫画みたいな、星を破壊するようなエネルギー波とか間違ってもやろうとしちゃ駄目だよ。一瞬で干からびるから」
「ラ、ラジャ!」
そうか、あの時撃ったか〇はめ波は、ちょっとお試し感覚だったから大丈夫だったけど、宇宙の帝王様と戦った辺りのを想像して撃ってたら、雄エルフの干物が出来上がってたかも知れないんだな……
「こわっ! 魔法こわ!!」
「だから何度も魔法は危ないって言ってるでしょ。やっと理解した?」
「うん、改めて理解したよ。気を付ける」
「ほんとにそうしてね」
本当に心配しているという顔。
うん、別に試しているつもりは無いけど、こうやってオレを想ってくれてるアル君の顔を見ると、やっぱり愛されてるという実感が湧く。
……がるるるる。
ヤバイ、また発情し――
「ハウス!」
「何故!? しかも犬扱い!?」
「またエロいこと考えてるだろ」
「ギクッ」
「攻略中は体力温存!」
「昨日もおあずけ~今日もおあずけ~、明日は明日の風が吹く~」
「こらこら、人に背中向けて石を蹴る動作しない」
「だって~……」
「わかったわかった、じゃあ、今日は一緒の布団で寝よ」
「よっしゃー!!」
「凄く嬉しそうだね」
「だってアル君と居られるんだもん♪」
「そ、そうか……ありがと。ボクだってその気持ちは同じだよ……」
「えへへ」
アル君は照れたように後頭部を掻くと、誤魔化すみたいに小さく咳払いした。
「それはそうと、この部屋に来たとき召喚魔法で良い手を思いついたって言ってたよね?」
「言ったっけ?」
「言ったよ」
えっと……あれ、何だっけ? アル君と一緒に寝られる喜びですっかり……
「あ、思い出した! 要はリアルに想像さえ出来れば召喚魔法も出来るんじゃないかなって」
「まぁ、確かにそうだけど、でもドラゴンとか古代種みたいな桁外れな力を持った連中は膨大な魔素とかが必要だから無理だと思うよ」
「そんな無茶はしないよ」
「ホントかね」
「ホントだってば、一応危険が無いようにアル君に見ていてほしいの」
「……分かった、そう言う事なら」
アル君の了解を取れた事で、二人で外に出る。
星空が美しい塔の中。
う~ん字面にすると意味不明だが、虫の鳴き声や星明かりなど、とにかく都会じゃ見られない壮大な景色なのだ。
塔の中だけど。
て、自然をいつまでも満喫している場合じゃ無い。
オレは早速地面に棒で五芒星を描く。
「何、そのシンプルなマーク?」
「うん? これはね、五芒星って言って、まぁ向こうの世界じゃおまじない的な意味があるのさ」
「ふ~ん、意外だけどそう言うの信じてたの?」
「信じてたと言うか……」
アル君に真顔で聞かれると照れてしまう。
ま、厨二病あるあるの闇属性を欲すると言うか、陰陽道を意味も無く信じてみるというか……
「どうしたの沈黙して?」
「いや、人に歴史ありと言いますか、主に黒歴史ありと言えば良いのか……」
「わ、分かった聞かないどくよ」
「うん、それが優しさというものさ」
さて、ここで何で五芒星を描いたかというと、特に意味は無い。
と言うのも、あくまで書籍でそういうのをちょっと調べたくらいの知識しか無いからだ。
じゃあ何でこんな物を描いたのかって言うと、魔法はイメージの力だからだ。
身近だったネタを媒体にする事で具体的にイメージが出来ると思ったのだ。
さて、呼び出す存在をしっかりとイメージする。
たぶん戦力にはならんけど、オレに癒やしパワーを与えてくれる心強い味方。
イメージ……イメージ……
淡く光り出す五芒星。
「相変わらず凄いイメージ力だね。魔法の才能は間違いなくボク以上だ。うん、魔力も安定している。大丈夫」
アル君のお墨付きを得た。
よっしゃッ!
「へいかもん! モンジロウ!!」
「は?」
カッ!!
と明滅を繰り返していた魔法陣が光を撒き散らした。
「うああぁぁぁ……目、目がぁぁ、目がぁぁ……」
バルスかっ喰らったムスカ大佐みたいな呻き声を上げるアル君。
「だ、大丈夫?」
「目がぁぁぁ……モンジロウの名前に拍子抜けして対応遅れたぁあぁ……」
「あ、モンジロウ呼ぶって言ってなかったもんね、ごめん」
「モンジロウを呼ぶなら呼ぶって――」
「ひゃんっ!」
鳴き声に二人同時に振り返ると、そこには――
「「???????」」
そこに居たものを見て、混乱。
思わずアル君と目を合わす。
どうやら、アル君も混乱しているのは確かなようだ。
「えっと……モンジ、ロウ?」
「ひゃんっ!!」
ケモ耳をピコピコ動かし、女の子が笑っている。
召還したうちのモンジロウは可愛い女の子でした。
……じゃなくて!
ふああぁぁっ!?
何故に女の子?
うちのモンジロウは雄だ!
だからモンジロウなんて和風でサムライ感(?)溢るる名前にしたはずなのに……
あれ?
モンジロウもTS属性だった?
「この飼い主にしてこの飼い犬ありか……」
「や、オレはちゃいますよ!? これ先祖の呪い!!」
アル君もオレと似たようなこと考えていたみたいだけど……
え?
異次元扉を越えたら肉体に変異があるってのは聞いてた話だ。
でも、わんこだよ?
わんこも変身願望あるのか?
や、まぁ……無いとは言えないか。
飼い犬は自分を人間と思い込むって言うもんな。
そうしたら、モンジロウは本当は女の子になりた……
あ、モンジロウ去勢してた。
判明。
「そうか、うちに来てすぐだったもんな、去勢したの。心は乙女に成長していたのか……」
「そういう、ものなのかい?」
「それぐらいしか判断材料が無いもん」
モンジロウの頭を撫でてやると、耳の間を広げ、目を細めて笑う。
うん、この表情はモンジロウの面影が……おも、かげが……ねぇな面影。
ふむ……
主人はTSエルフ娘、飼い犬は幼女でニューハーフ……
字面にするとやう゛ぇな、これ。
「ちょ、リョウ」
もっとマイルドな表現なかべか?
「リョウ!」
柴犬TS幼女転生……あかん、ますますニッチな状態に。って言うか、幼女ってほど幼女でも無いよな。
う~ん、需要がありそうな感じでこう、何か……飼い犬少女転生……
これじゃエロ本みたいやな……
「リョウってば!!」
「ふぁ!? な、何、アル君!?」
オレがモンジロウの立ち位置を考えていると、アル君が血相を変えていた。
「どうしたの?」
「魔法陣! キミ、他に何を呼んだの!?」
アル君が慌てる視線の先を見るとモンジロウを召喚した魔法陣が激しく明滅していた。
え?
オレ、また余計な事しちゃった?
「ア、アル君、どうしよう?」
「どうしようって、キミが発動した魔法陣だろ。何か他に召喚しようと考えなかった?」
召喚……モンジロウ以外……
いや、他には何も……
そんな事を考えていたら、明滅を繰り返す魔法陣に突如穴が空いた。
まるで、奈落の底にでも繋がるみたいな深い深い穴……
「まさか魔界と繋がったのか?」
アル君はオレの前に立つと身構える。
さらりとオレを守ってくれるアル君、格好いい。
「ひゃん♪」
オレの腕の中で可愛く鳴き声を上げるモンジロウ。
尻尾をぶんぶんしてる。
……ちょっとは飼い主の緊張感を察しようぜモンジロウ。
それじゃただのバカ犬だぞ?
誰に似たんだか……
そんな事を考えていると、穴の底から男の唸り声のようなものが聞こえてきた。
「…………――――」
「何だ、この魂の叫びは……まさか、本当に魔界の……」
「ア、アル君、どうやったら閉じられるかな?」
「下手に覗き込むのは不味い。魔界に引きずられるかも知れない。どうする? こうなれば急いで上層階に逃げ込んでソウルドレイクにこいつをぶつけた方が……」
「……ず……」
「ひっ!」
「………………もん……だ……」
「な、何だこの莫大な魔力は! まさか、魔族どころか魔王クラス!?」
「…………ずるいぞ!!」
「な、何を叫んでるんだ!?」
ん、あれ? この声……
「こうなればちょっとでも時間稼ぎだ、喰らえ!」
うぉん……
と光ったアル君の手。
そこには光球が握られていた。
「すごい……」
初めて見るアル君の魔法。
今なら分かる。これほどの力を一瞬で練り上げるアル君の凄まじい技量が。
って、悠長に魅入ってる場合じゃ無い。
「アル君、待って!!」
「喰らえ、エイティスボール!!」
七色に輝く光球が召喚陣の穴に吸い込まれるみたいに消えていく。
「おぎゃあああぁああぁぁぁぁぁぁ!!」
「よっしゃあっ!!」
アル君らしくも無いガッツポーズ!!
て言うか……あ、ああぁぁ、やっちゃった……
だが、ガッツポーズをしたままアル君の顔がそのまま強ばった。
「まだまだぁあぁぁぁ!! モンジロウだけ、異世界転移なんてずるいぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
ガサガサと怒濤の勢いで這い上がってくる謎の人物の絶叫。
「父さんも異世界デビューするんだあぁぁぁぁぁっ! タイトルは『父さんな、異世界で勇者やってるんだ!!』これで決定だ!!」
「…………」
うおぉぉぉぉぉっ!! っと、怒濤の叫び声が穴から聞こえてくる。
「……リョ、リョウ? 異界の穴を凄い勢いで京一さんが登ってくる。って、リョウ!?」
「かーめー……」
「ちょ、リョウ! すでに攻撃したボクが言うのも何だけど、登って来てるのはキミの父さん、京一さ――」
「波!!」
穴に向かってオレは世界一有名な必殺技をぶちかました。
絶叫を聞いた瞬間、オレは悟ったのだ。
アル君の選択肢こそ正しいと。
青い光が召喚陣の中に吸い込まれ、穴の中の岩肌のような崖を四つん這いで駆け上がってくる謎の人物に直撃する。
「おぎゃあぁあぁぁぁ……こんなはずでは……お、俺の……い、異世界……いせ……まだだあぁあ! 俺は諦めんぞ!!」
「チッ! しぶとい!」
「リョ、リョウ?」
「さっきのタイトルがダメなら、『父ですが、なにか?』でどうだ!」
「くもっ!」
「ぎゃああぁあぁぁぁ……だ、だったら、『ちち父ダディー』でどうだー!!」
「くまっ!」
「おぎゃああぁあぁぁ……こ、このタイトルがダメなら『通常攻撃が無属性で三回攻撃なお父さんはどうでしょう?』でも良いぞ!!」
「悪化してはる!?」
猛烈に恥ずかしくなって雑に迎撃するも、父さんの異世界への執念は半端なかった。
「ひょおぉぉーっ!!」
どこぞの水鳥拳の使い手みたいな絶叫とともに穴から抜け出し、ついに父さんは半ば自力で異世界に来襲したのであっ――
「さーて、次回の京一さんは! 『異界から来襲せし者、その名は京一』『うちのTS娘の為ならば、父さんは勇者にだってなれるかもしれない。』『父ですが、なにか?』の三本でお送りするぜ!」
「……京一さん、何やってるの?」
「たぶん、勝手に次回予告……」
何か本気で居座りそうな予感が、ヒシヒシとする……
「次回もぜってー読んでくれよな! んがんん……」
悪ノリが過ぎる!
全体改稿中で既存の読者様にはご迷惑をおかけしております。
もう少し先になりますが、展開が大きく変わると思いますので今しばしお待ちください。






