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TSヒロイン・塔の攻略の秘策

2019/01/14・17に投稿した『┌(┌^o^)┐ホモォ…』『塔の攻略を誓う・真』の2話を結合し、誤字表現を中心に改稿しました。

 思考回路は完全に麻痺していた。

 女になって生きようと覚悟を決めて旅に出たのに、まさか男に戻されるとは……


 鏡に映る自分。


「ひでぇ顔……」


 目の下には泣きはらした痕が出来、髪の毛はボサボサ。

 エロゲカラーに変色したままの髪色も、少し尖った耳も、瞳の色だってそのまま。

 顔立ちは元々母さんの顔立ちに似ていた女顔だったせいか、特に大きな変化はなかい。

 まぁ、目は多少切れ長になった気もするけど……

 見た目的にほとんど変化が無いから、尚のこと腹が立つ。


「オレ、もう女じゃ無くなったんだ……これじゃ、男の娘じゃん……」


 男に戻って改めてわかったのは、やっぱりおっぱいでかかったんだってこと。

 肩が軽くなったのは良いけど、アル君が大好きだったおっぱいがすっかりペッタンコになってしまった。

 そして、股間にある異物……


 や、そもそもこれは異物じゃ無くて、本来の持ち合わせていたモノだから「お帰り、マイサン」と言ってあげないと駄目なモノで……


「でも、オレ女だもんっ! じゃなくて、男だったけど女になったから、さよならマイサン! って言わないとダメで……ああ、何言ってんだ!」


 洗面所で気が付けば崩れ落ちていた。


 ダメだ、考えすぎて思考回路がメタメタだ。


「リョウ、大丈夫?」

「アル君……ダメ!」

「え?」

「やだ! 入ってくるな!!」


 洗面所を覗きに来たアル君を思わず追い出してしまう。


「リョ、リョウ……」

「あ、ご、ごめん……違うの……」


 気が付けば、口をついて出た拒絶の言葉。

 アル君が最も怖がる言葉を思わず吐き出してしまい、喉の奥が震えた。

 だけど、それ以上に今の自分を見られるのが怖い。

 アル君を拒絶したいんじゃない。

 だけど、このままだとアル君に拒絶されるんじゃ無いかって、そんな恐怖が脳裏を支配する。


「ごめんね、アル君……だけど、今見られたらアル君に嫌われちゃう……」

「はぁ?」

「はぁ、じゃないよ! だって、男に戻ったんだよ! もうアル君のお嫁さんにもなれないし、おっぱいで慰めてあげる事だって出来ないんだよ!」


 叫ぶだけ叫ぶと、刹那の沈黙が訪れた。

 だけど――


「リョウ、ここを開けて」

「嫌だってば!」

「あ・け・て」

「や、やだぁ……」

「黙って開けろ!」


 ドゴンッ!!


「うわぁっ!」


 な、何だ!?

 鈍い音が鳴り響いたと思ったら、オレは床に転がっていた。

 えっと……


「あ、あれ? 何でアル君が目の前に……」


 気が付けば、仁王立ちしているアル君が居た。

 恐る恐る辺りを見渡せば、無残にも粉々に砕け散ったドアの破片が。


「この家、アル君が子供の頃にカーズさんと住んでた家だから、大切に使ってきたんでしょ? 何でこんな事するのさ……」

「そんな事はどうだって良い!!」

「怒鳴んないでよ!」

「五月蠅い!! また勝手に迷って、自分の答えに迷子になる気かよ!」

「な、何だよ、勝手に迷子って……」

「そうやって自分の中で出ない答えに迷って、惑わされて、ボクから離れたの忘れたのかよ!」

「そ、その節は……どうも、ご迷惑を……」

「ご迷惑だったよ! こんなに好きなのに勝手に離れられて! どんなにボクが寂しかったと思ってんのさ!」

「あ、あうぅぅ……」

「あの時は確かにボクも悪かったって言ったよ。でもさ、こうやってまた勝手に離れていこうとするなら絶対に許さない! 絶対に許さないからな!! キミはボクの恋人で、ボクの嫁で、ボクだけのリョウだ!」

「ア、アル……くん……で、でも、オレ、もう女じゃ無くなったんだよ……」

「だからなんだ! これは先生がボクたちに生きるために与えた試練だって言うなら乗り越えれば良いだけだ。リョウが一人じゃ乗り越えられないってんなら、ボクが先生をぶっ飛ばしてでも動きを止めてみせる! だから、一人で泣くなんて許さない!!」

「うぇ……アユ、くん……で、でも相手はカーズさんだよ? 怖くない、の?」

「う、ぐ……相手が誰だって……例え先生が相手だって! リョウが居なくなる恐怖に比べたら、怖い事なんてあるものか! 全力でぶつかって、ボクたちの願いを絶対に勝ち取って見せる!」


 一瞬乗り越えなきゃならない壁がカーズさんと聞いて顔を歪めたが、まるで気にしないとばかりに断言すると、オレを力強く抱きしめてくれた。


「アル君……だけど、良いの? オレ、男になったのにアル君が好きなままなんだよ?」

「性別が変わったぐらいで嫌いになられてたまるか」


 力強く抱きしめられて、高鳴る心臓。

 アル君から感じていたあの幸せの香りは、悲しい事に少し変わってしまった。

 だけど、今まで育んできた感情までもは変わらない。


「アル君、オレ、えっちぃヤツだよ?」

「知ってる。ボクだけがそれを知ってる。世間のヤツらに自慢したいぐらいだ。こんな可愛い恋人が、ボクにだけガチで惚れててボクにだけ可愛い素顔を見せるって」

「あうぅぅ……そ、そんなに可愛いって連呼するな……」

「キミがボクから離れる事が出来ないって理解するまで何度でも言ってやる!」

「うん、それは十分分かってるから……」

「本当に理解してる? ボクは絶対にキミを手放さないよ」

「わ、分かってる。もう、十分理解してから……でも良いの? オレえっちぃから、もしかしなくてもアル君を襲うかも知れないよ」

「今さらだと思うけど?」

「だけど、オレ今は男だよ? 今まではアル×リョウだったけど、リョウ×アルに変わるかもしれないんだよ?」

「……えっと、ごめん、何を言ってるのか分からない」

「だから、このままだとオレは……アル君と兜合わせしたいとか、アル君に入れたいとか言い出す可能性があるってこと! アル君はそんなオレでも一緒に居たいといってくれる?」

「…………」


 おい、何で無言で人を押しのけようとする?

 アル君、オレから離れようとしてるだろ。

 自分から言った台詞をあっさり反故にする気か!?


「アル君、やっぱりオレのこと……嫌いになった?」

「だから、好きだって言って……って、そんな泣きそうな顔しないでよ。って言うか、キミが落ち込んでたのってえっちぃこと出来ないからじゃないだろうね?」

「…………」

「おい、何で無言になる?」

「うぅ……アル君とエッチしたい。アル君にいっぱい愛して欲しいですぅ……」

「だ、だからそんな甘えたような声出さないで」

「ごめん、オレの声、もう可愛いくないよね?」

「そんなこと無いよ。少し低くなったかも知れないけど、ちゃんとボクが好きな、ボクの事を好きになってくれたリョウの声だよ」

「アル君、オレもアル君が好き。男に戻っても、この気持ちまでは無くせない」

「だから、無くなったら困るんだってば。キミはボクの大切な人だ。それは性別が戻ったとかそんなのは関係ない! キミはボクの記憶を共有したんだから……そ、その、ボクがキミに救われた気持ちとか、全部知ってるだろ!」

「うん、オレもルーシェが初恋だった。思ってたのと違う形だったけど、初恋が実って、すごく幸せで……絶対に手放したくなんか無い。アル君、大好き。愛してる!」

「うん、ボクもだよ。だから、勝手に離れないで。その抱いてくれてる気持ちに嘘をつかないで」

「ありがと、アル君……」


 思わず抱きしめていたアル君の感触。


「ごめんね、おっぱい無くなちゃったから、胸硬いよね?」

「ボ、ボクは別に巨乳フェチじゃない」

「嘘つき……」


 柔らかかった髪の毛は、ショリショリとした感触に変わってしまった。

 だけどその温もりは、オレが大好きになった男の子のままだ。


 アル君、アル君、アル君……


 変わらず好きって言ってくれてありがと。

 オレもアル君が大好き。


 アル君……アル君……アル君……ハァハァ……


「リョウ、何で呼吸が荒くなってるのさ? って言うか、いまボクのお腹に何か硬いモノが……」

「アル君……」

「な、何? 目が肉食獣みたいな……」

「お互いの愛の深さは確かめ合ったわけですよ」

「そ、そうだ、ね……」

「だから、ね」

「そのだからが何にかかるのかが気になるのだけど」

「いっそ、今しか出来ない経験しませんか! って言うか、オレ童貞のまま何ですけど!」

「やっぱそっち方面か!」

「大丈夫! 男と男の娘との愛はホモじゃ無いはず!」

「キミが何を言ってるのか……あ、こら、人の服を毟る……って、しょ、昇龍拳ッ!!」

「ぐはぁ……」


 飛びかかったオレは、アル君に見事に迎撃されたのだった……

 ふ……

 寂しいぜ……




 愛完全復活!

 例えカーズさん()であろうと、二人の真実の愛の前じゃ無力だったのだ!!


 何でそんなにテンション高いって?

 エロい事はさせて頂けませんでしたが、夜はアル君の腕枕で寝る事が出来たのです。

 エロが無くても愛は充填完了!

 

「おはよう」

「お早うアル君♪」

「うぉ、活きが良ろしい事で……」

「何か鮮魚みたいな表現をされたのは気になるけど、YES! 元気! アイラブアル君!!」

「あ、朝から熱烈な愛情表現ありがと」

「うん! さあさっそくカーズさんからの試練をチャチャっと乗り越えに行っちゃお!」

「や、待って」

「レッツゴーアル君! オレはやる気が滾っておるぜよ!」

「だから待っててば」

「ゴーゴー! ヤッフー!! 行くぜ行くぜヒャッハー!!」

「待てと言ってるだろ!!」

「うきゅー><」


 怒られた。

 別にエロい事が出来なくて、エナジーが溜まってるとかじゃ無いのです。

 アル君の腕枕で愛情をたらふく感じ取ったので、さらにその先に進むべく気合いを入れた訳であります!


「逸る気持ちは分かるけど、まずは戦略を練ろう。ボクたちは味方が多かった時ですらソウルドレイクに惨敗している。その先に向かうには絶望的なほど戦力が足りていない」

「うぅ……忘れてました」

「あと先生にも言われたろ。キミの拳は軽いって」

「それまた忘れとりました」

「忘れんなよ。とりあえず今のままじゃ59階層で全滅するのは目に見えている。先生が試練と言った以上、手を貸してくれるのは望み薄だ」

「う、うん……」

「それにその先にはマインドイーターが居る」

「マ、マインドイーター……」


 思い出したくもない魔物の名前。

 あの軟体生物の如きバケモノを思い出しただけで背筋が凍り付く。


「キミにとってもボクにとってもトラウマ級なのは確かだ。だけど先生は乗り越えられない試練を与えるような人じゃない。必ずボクたちなら100階まで到達出来る、そう確信してくれているはずだ」

「そうだよね! オレとアル君なら絶対にカーズさんを打ち倒せるはずだよ!」

「倒しちゃ駄目だろ。って言うか、たぶんおそらく絶対にそれは不可能だと思う」

「むぅ、アル君の臆病者」

「じゃあキミに出来る?」

「無理でーす」

「でしょ。でも、一発お見舞いするくらいは先生の弟子としてはやっておきたい」

「卒業証書代わりだね」

「まぁね」


 卒業証書。

 卒業証書とアル君……


『おう、センコー、一発お見舞いしに来たぜ』

『ふん! 若造が……体育教師の本気を見せてやろう』

『ガキだと思って舐めんじゃねぇぞ!』

『教育委員会やSNSが怖くて体育教師が出来るか! 喰らえ! 数多の不良を血祭りに上げてきた我が必殺技!』

 

「リョウ? リョウってば! またおかしなこと考えてるだろ」

「はっ!? ごめん、学ラン姿のアル君を妄想してたら、股間のイルカが()ってきた!!」

「そのイルカに知性を与えろよ!」

「無理だと思う!」

「諦め早いな。あと学ランって何だ?」

「学ランには萌える日は来ないと思ってたけど、アル君にならいくらでも萌えられる!」

「やかましい! とりあえず今は目先の事を優先しよう」

「愛の確認も大切だと思いますが?」

「それはとりあえず心の交流で! 先生を早く追いかけないと、問題が山積み何だから」

「う~、う~、でもでも、う~……そか、うん、らじゃった」

「やっと理解してくれたか」

「しぶしぶ」

「しぶしぶは余計。とりあえず本題に戻すよ。先生の元に向かう。だけど確実に遂行するためには一切の油断も過信も排除して、今回は多少時間がかかっても良いから焦らずにじっくりと階層を攻略する。そして無理だと判断したら即時撤退。幸いにも今回はこの家があるしね」

「家のあるこの階まで撤退するってこと?」

「いや、この家を持ち歩く」

「今日本で流行りのタイニーハウスってヤツでも車輪が付いてるし車がないととてもじゃないけど引けないよ? まさか聖帝十字陵でも造るみたいに担いで運べと?」

「キミがどんな思考回路で物を考えてるのか本気で悩むんだけど、この家は手のひらサイズまで小さくなるから大丈夫だよ」

「ふぁ!? え、そうなの?」

「まぁ言ってなかったかも知れないけど、この家は先生の魔法で作られている。正確に言えば小さくなるんじゃなくて大きくしてるって言った方が正解だけどね」

「ん? 凄いのは分かったけど、あんまり差は無いよね」

「いや、そうでもない。大きな物を圧縮しても重量は変わらないけど」

「あ、小さいのを大きくしているから軽いってこと?」

「そう言うこと。ま、本来ならそんな事をすれば物質は脆くなったり不具合は出るんだけど、魔法の恩恵は物理法則の外の物だから可能としているみたいだね」

「魔法の恩恵なら逆でも良いんじゃないの? 重さを制御すれば良いだけの気がするけど……」

「重さってのは質量だけじゃなく重力とも密接なんだ。それに重力の発生にはそもそも星クラスの質量を必要とするし、あるレベルを超えたら時干渉にも繋がる。先生が戦った最悪はその時間が生み出した化け物だ。だから先生自体がその力を禁忌としているんだよ」

「なるほど……分かったような分からんような。とりあえず、この家が凄い事は理解した」

「うん、それで良いと思う。ボクも理解はほとんど出来てないからね。あと話を戻させてもらうと、結界も張られてるから、魔物達も近付かない」

「あ、言われてみれば、塔の中だってのを忘れかけるぐらい魔物に襲われないよね」

「まぁ、これも正確に言えば結界と言うよりも魔除け。ボクの住んで居た森と同じものさ」

「えっと、アル君の森というと、あのボコしたモンスターを逆さ吊りにしてたってやつ?」

「そ、この家の屋根、赤茶色だよね」

「うん。この家の雰囲気に合った綺麗な……まさか」

「正解。上層階に巣くうアダマンレプタイルっていうモンスターの血を精製したペンキを塗ってるんだよ」

「うへぇ~……」


 オレの想像は逆さ吊りにして切った首からバケツの中に血を溜めてるような絵面だ。


「その反応も分からなくはないけど、これが一番効率的なんだよ。モンスターって基本的には本能に忠実だから自分よりも強い敵には歯向かわないし近付かない。その性質を利用するのが一番って訳さ」

「なるほど、野生は生きる事に関しては特化してるって言うもんね」

「まぁバカじゃ長生き出来ないのは野生も人間も一緒だろうね」

「う……勢い任せに行動するのは気を付けましゅ」

「ボクも惰性に流される事があるから人の事は言えないけど、リョウはノリと勢いに任せる事があるから特に気を付けてね」

「あい……」

「さて、基本的な情報はこの程度にしておいて、戦い方を少し見直して行こう。幸いこの階層はまだ30階辺りだから今のボクたちならよほど油断でもしない限り後れを取ったりしないはずだ。だからここら辺でもう一度しっかりと基礎を積み上げよう」

「そうだね」

「……ソウルドレイクに負けっ放しなのは気に入らないから、次こそ絶対に勝たないと」


 アル君の眼光がギラリと光る。

 さすがの負けず嫌いだ。


「あ、でもでもソウルドレイクはこの塔で倒した魔物のソウルを吸収することで復活するんだよね? だとしたら、ここで魔物相手に練習すればするほどソウルドレイクの体力も底上げされるって事だよね?」

「うん、そうだね。それで対策だけど、実は……キミの……で……」

「え? あ、なるほど……じゃ……」


 アル君の発想、それは向こうの世界の漫画好きなら誰でも知っている方法だった。


 ただ、まさか実際にそれをお目にかかる日が来ようなんて、今日、この時まで思ってもいなかった。

全体改稿中で、既存の読者様には大変にご迷惑をおかけしております。

もう少し先になりますが、展開が大きく変わると思いますので、もう少しだけお待ちください。

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