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TSヒロイン・古の英雄、その願い

2019/01/04~8に投稿した『俺、気になります!』『古の英雄』『強くなるために』の3話を結合し、誤字表現を中心に改稿しました。

 朝が来た。

 二度寝したせいだろうか、頭のさえはイマイチよろしくない。


 アル君はまだベッドで健やかな寝息をあげている。

 そりゃいくらアル君でもあれだけ夜戦に励んで、更には明け方近くに頭を悩ませたのだ仕方ないよね。

 って言うか、今がチャンスだ。

 向こうで密かに練習していた料理をアル君にお見舞いしてやろうと思うのですよ。


 俺は静かに部屋を後に……


 うん?


 グッと引っ張られるような感覚。

 よく見るとアル君が俺のパジャマの裾を握りしめていた。


「うきゅ~、もう、甘えんぼなんだから❤」


 俺は握るアル君の指を一本一本離し、布団の中に戻してあげる。

 もぞもぞと動きながら布団の中に潜っていく。


 よし、飯作りだ!

 朝は和食! 日本人なら米! パンも麺も旨いけど、米!

 米と味噌汁、あと家の冷蔵庫からパチって勝手に持ってきたニンニクの味噌漬けと温泉卵三個入りタレ付き! さらに味付け焼き海苔!

 完璧だ。完璧過ぎる朝の献立だ……ん?


 だが、そこで俺は端と気が付く。


 これって俺の手作りと言えるのか?

 全部実家からパチくってきた食材を器に盛り付けただけじゃん。


「いかん……」


 別に世のご家庭の朝ご飯を否定している訳じゃ無い。

 これだって忙しい日本の朝には十分すぎる朝食だろう。

 だが、俺としてはここで色を一つ入れたい。

 と言うか、初めて料理を振る舞う……まぁ、初めてでも無いが、ちゃんと料理を作れるようになったと言う事をアル君に見せつけて、新妻階段を駆け上がりたいのだ。


 う~ん……


 買ってきた食材は魚に肉、それと球団持ちのハム屋が作ってるちょっとお高いウィンナー、あと卵……

 焼き魚は外じゃ無いと臭いが残りそうだから却下。

 なら、目玉焼きとウィンナーか、卵焼きとウィンナーにするかのどっちかだな。


 目玉焼きは美味しいけど、ここは卵焼きだな。

 実はアル君が甘党だというのは向こうの世界に戻った時に知った。

 リンゴ飴とかアイスとか、まぁ物珍しいのもあるんだろうけど喜んで食べていたのだ。

 なら甘塩っぱく、だけどちょっと甘さ強めの卵焼きだ。


 買いあさった調理器具で朝餉の準備に取り掛かる。

 米を土鍋で炊きながら、味噌汁の準備を終える。

 手際は母さんとネットから学んだ。

 レミさんの調理法はハイレベルすぎるから、星澤サッチー先生と土井ヨッシー先生の料理手順を参考にする。

 まぁ、所詮素人が見よう見まねしているだけ何だけどさ。


「だけどね、お料理いうんは、食べさせたい相手を思いやって作るのが大切何んよ」


「えっと、その口調は誰の真似?」

「料理の先生の口まねですわ。あ、おはよアル君」


 振り返ると卵焼きが出来たタイミングでアル君が起きてきた。


「朝餉の準備出来たよ、アル君」

「ごめん。朝ご飯の準備させちゃったね」

「気にしない気にしない」

「ありがと。それにしても、何か甘い良い香りがするんだけど」

「あ、卵焼きを作ったんだよ。ほらほら、座って座って」

「う、うん……」


 むぅ、アル君の若干警戒気味な反応。

 まぁ散々なご飯作ってきた身としては仕方が無いところか。


「ほらほら、向こうで密かに料理スキルを上げてきたんだから食べてみてよ」

「そ、そうなの? あ、でも本当だ。綺麗なおかずが並んでる……黒くない!」

「えへへ、ちょっと卵焼きは不格好になっちゃったけど、味はばぁちゃん直伝だから良い感じのはず」

「うん、いただきます」


 手を合わせると、綺麗な姿勢で箸を持って食事をはじめるアル君。

 その見た目とは全然違う、日本人よりも日本人らしい作法。

 向こうに戻っているうちに身に付けたと言うよりも、元から身に付けていた作法だ。

 と言うのも、ウチの家族にこんな綺麗な作法は出来ない。


「ねぇねぇ」

「何? あ、この卵焼きすごく美味しいよ」

「え、ほんと!? ありがと♪ えっと、その事じゃなくてね。あ、もちろん褒めてくれるのも嬉しかったんだけど」

「えっと、何かあった?」

「アル君の食事の作法、すっごく綺麗だよね」

「食事の作法? あ、これは先生にメチャクチャ怒られて直されたんだよ」

「カーズさんに?」

「うん」


 なるほど。考えるまでも無くアル君に作法を教えられる、と言うかアル君が素直に聞き入れるとしたらカーズさん以外にはいないよな。


「ボクはずっと一人だったからね、作法なんて全く知らなかったんだ。研究所でもその頃は食事に興味が無くて空腹さえ満たされれば良かったから、主食にしてたのは塩茹でしたビーンズ。あとは糖分補給に果物ばかり食べていたよ」


 あっけらかんと話すアル君。

 うん、悲しいけどオレが想像通り(しっている)のアル君の過去だ。

 ふむぅ、一応こっちの世界の食文化はあの宿で食べた時に知ったけど、ホークとナイフを使う西洋のそれだ。

 ……箸文化って、確か東アジアの文化だよな?

 異常に長生きしてるらしいカーズさんなら知識はすごそうだけど……


「ねぇ、アル君」

「なに?」

「あのね、アル君が前に『頂きます』の精神が~って話をした事あったよね?」

「あったね」

「それって、以前に出会ったって言う間延びした話し方をする戦場カメラマンの人から教えて貰ったんだよね?」

「うん、命の大切さとかも教えられたよ。でも、結局ボクはその言葉の意味をしっかりと胸に刻む事は出来なかった。先生に改めて教えられたとき、その意味を理解出来ないのは自分自身の命も粗末にしてるのと同じだって諭されてさ……命を頂く意味とか作法とかも含めて一から叩き込まれたよ」

「そっか……」


 うん、やっぱりだ。

 アル君が歩んできた、十年そこそこの人生。

 それは想像を絶するほど過酷で他者を拒絶する日々だったはずだ。だけど、確実に彼に鮮烈な記憶を植え付けた人達がいた。


 それは、異界の地で出会った日本人達。


 もちろん、その中の一人にオレも居る。

 絶対にオレも居る!

 居るに決まってるもん!!


 だけど、やっぱり気になるのはカーズさんの存在だ。

 べ、別にアル君を巡ってライバル視しているとかじゃ無く、純粋にカーズさんってどんな人なのか気になるのだ。


 オレが居た宇宙が一巡する前の世界を救った人。そして神と呼ばれるような存在らしくさらにこの世界で最強と呼ばれる存在で全ての魔導の頂点……


 形容詞が多すぎて、両手を使って数えても足りないぐらいに異次元な存在。


 ……実に今さらだけど、一体何者何だ?


「ねぇ、アル君」

「どうしたの?」

「あのね、カーズさんって何者なの?」

「えっと、この世界で神と呼ばれるような存在」

「あ、それは聞いたけどさ、もっと具体的に」

「具体的に、か。長くなるよ」

「うん、アル君のお父さんの事を知りたいんだ」


 俺の言葉に、アル君は照れたように後頭部を掻く。


「ボクも全部知ってる訳じゃ無いし、朝の練習に遅れたら困るからあまり長くは話せないよ」

「うん、話せる範囲で」

「わかったよ。じゃあ……」


 そう言ってアル君が語り出した物語は、長い永い、カーズという一人の男の物語だった……


 アル君が静かに語り出したカーズさんの過去。

 それは、かつて異端者として処刑されたこの世界【アルナミューズ】の歴史家【ウィリアム・B・ファン】という人物が記した史記に残された物語だった。


 カーズ――

 今は何人も足を踏み入れる事は出来ない、東のサイハテと呼ばれる滅びの地に生まれた男。

 永遠の宿敵【魔王ディーザ】に数多の仲間を奪われた男。

 失った仲間達との約束と絆を盟約と呼び、それを紡ぎ果たすために死ぬ事が出来なくなった彷徨い人。


 一万年以上を生きる、英雄の中の英雄。


 そして、かつて天空にあった城に君臨した亡国の皇帝。

 全ての化け物たちの頂点に君臨する【刻喰らい】を滅ぼした史上最も偉大なる英雄王。


「待って待ってアル君」

「どうしたの?」

「どうしたのって、だって思いのほか情報量が過多過ぎて、オレ処理しきれないよ」

「だよね。ボクもそう思う」

「そう思うって、簡単に言うけどさ……まぁ、アル君の先生って考えたら皇帝だったてのはあるかも知れないけど、一万年以上生きてるって……」

「本当、みたいだよ。ボクもね、直接先生から聞いた訳じゃ無いけどさ」

「カーズさんからは聞いてないんだ。あ、そう言えば歴史家のウィリアムだかって人の史記に書かれてたって言ったよね」

「そ、ボクがたまたま(・・・・)帝国の禁書が封印されている【禁鎖図書館】に入っちゃってね。残されていた史記に書かれていた」

「たまたまぁ?」

「うん、たまたま」


 絶対嘘だ。

 確信犯でやっただろ。


「何か言いたそうな顔をしてるね」

「気のせいです」

「そ? ま、時間も無いから続きを話すよ」

「うん、お願いします」

「史記にはね、この世界の神々の歴史を根底から覆すような内容が書かれていたんだ」

「覆す、内容?」

「この世界の最大派閥の宗教にして帝国の国教である大国生聖教が崇める大神ガードが、過去にあった帝国……あ、今の帝国とは別の帝国ね。それを建国した英雄ミリカの最大の敵である魔王カルハザードと同一人物であり、先生の息子だと記載されていた」


 ???


「アル君、大変だ! 情報過多の濁流で頭が軽くメダパニ状態だ!!」

「メダパニ?」

「混乱してるってこと!」

「ま、だよね。ボクも帝国の弱みを握れたらと思って忍び込んだのは良いけど、あまりに突拍子も無い情報で訳が分からなくなったもん」


 アル君がカラカラと乾いた笑いを浮かべる。

 ほら見ろ、やっぱり確信犯だった。

 でも、そっか。

 う~ん、とりあえず時系列で整理していくと……


「あのさ、今話してる帝国ってアル君がいた帝国とは無関係?」

「そうだね、無関係……とも言えるし、そうじゃないとも言える。一応現帝国は英雄ミリカが建国した帝国の流れを汲んでいるよ。先生が皇帝として君臨していた帝国は、その遙か昔。まぁ、その歴史書には詳しく書かれていたけど、あまりに長くなるから割愛するね」

「うん」

「先生の人生ってのは、この世界を守り死んでいった仲間達との絆を紡ぐために捧げ続けた一生だった。だけど、強すぎたから……人類の歴史から抹殺された生涯でもあるんだ」

「人のために生きた……なのに、守った人達に裏切られた、ってこと?」

「そうだね、そう言う事だよ」

「……それでも、ずっと人を守り続けたの?」

「うん……」

「友達も仲間も失って、助けた人たちに裏切られて、それでも、守り続けたの?」

「そうだよ。あ、泣いちゃダメだよ。ボクなんかの話で泣いて良いほど先生が歩んできた人生は軽くないから」

「……うん」


 一万年――

 文字にすればたったの三文字。

 だけど、俺が居た世界の人類史は、せいぜいが五千年かそこらだ。

 その倍以上を人類に捧げ、仲間との絆のために闘争に明け暮れる人生……


「リョウ、泣かない」

「うん……ごめんね、考えれば考えるほど、ドツボにはまりそうになってた」

「先生は多くを語らないし、何より自分を悲劇だと思ってはいないよ。だから、少なくとも真実を知らないボクたちは泣いちゃダメだと思うんだ」


 それはアル君が親のように慕う人に、少しでも追い付きたいと願う心根が言わせた言葉のような気がした。


「そうだよ、ね。うん、安易な涙はカーズさんの人生を穢す事になるもんね」

「そう言うこと。ボクたちはあの人に教えを請う事が出来る。それを誇り、胸を張ってついて行けば良いんだよ」


 アル君が優しく微笑む。

 うん、そうだな。

 きっと、それで良いんだと思う。

 あの人は、きっと世界を救ったとか、そんな事実を誇る事も無ければ、泣かれる事を望むような人とも違う。

 なら、その気高い精神を俺たちは心の底から誇ればいいんだ。


「アル君」

「何?」

「強くなろうね、俺たち」

「ああ、もちろんだよ」

「そしてさ、魔王とか何とか面倒臭い事ちゃちゃっと全部解決してさ、世界が平和になった姿をカーズさんに見て貰おうよ!」

「うん、そうだね」

「うんじゃない! はい!」

「は、はい!」

「よし! 決まってた覚悟がさらに決まった感じだ! やるぞー! オーッ!!」

「お、おーっ」

「声が小さい! やるぞっ! オーッ!!」

「オ、オーッ!!」


 オレの気合いに無理矢理引っ張られる感じで、アル君も気合いの絶叫をしたのであった。

 

 

 ただ、この後……

 オレ達は両親に女として生きるとちゃんと伝えてなかった事で、阿鼻叫喚するのであった……


 まぁアル君と婚約した事を家族に伝えた話をすると、お許し頂けたんですけどね。


 あ、ちなみに二人とも、今地面に埋まってます、ハイ。


 ……や、帰って報告しなかった事に対するお仕置きではないのです。

 カーズさんに訓練を付けて貰おうとお願いしたところ……


 瞬殺でした。


 あ、あれぇ? おかしぃなぁ。

 カーズさんが次元の違う強さなのは知っていたけど、多少なりとも強くなったはずのオレ達が手も足も出ないとか……

 ってかてか、アル君が地面に上半身が半分埋まってるんですけど、貴方この世界じゃ相当上位に入る戦闘力の持ち主ですよね?


 ばけもにょめ……


「アルフレッド、ずいぶんと怠惰に過ごしていたようだな。まるで成長が見受けられんぞ」

「…………」


 地面に埋まってるアル君に反応は無し。

 いや、聞こえてても何も言い返せないよね、うん。


「それと、リョウ」

「ハ、ハイ!」


 やば、矛先がこっちに向かう予感。

 俺は埋まった右半身を無理矢理に引き起こし、居住まいを正して正座する。


「お前の拳は軽い。弱すぎる」


 ぐはっ! バッサリだった。


「それは俺の拳に信念が宿ってないと、そう言う事でしょうか?」

「何だ、それは?」

「え、違う?」


 あれ、そう言う方面のお叱りじゃ無いのですか?

 俺はてっきり漫画でよく見る頑固な師匠よろしく、『貴様の拳には信念が無い!』的なお叱りを受けるのかと思っていたですが……


「人間生きていれば大なり小なり信念は持っているだろ。それを他人が小鼻を膨らませ偉そうに説教するのは筋が違うと言う物だ。ましてや自分の故郷を遠く離れ、惚れた者のためにこの世界に残った。強大なる敵が居るというのにな。それを否定するような悪意を私は持ち合わせて居ないつもりだ」

「カーズさん……」

「愛は何よりも重く、そして、紡ぐべき感情だ。お前がそのために生きようとしているのは事実であろう。なら、その信念を疑う理由はどこにもない。私が言いたいのは、お前は自分の適性を見誤った戦い方をしていると言う事だ」

「適性?」

「そうだ、体重も軽く華奢な肉体。軽戦士という選択も無くもないが、素手では自ずと限界がある。将来子を成したいと考えるなら、無闇に敵に近付くより、槍や細剣、弓を主軸とし火力としての魔術を身に付けるべきだ」

「えっと、言い訳に聞こえるかも知れませんが、そういった武器に触れた事が無く、アル君から格闘家を薦められたのですが……」

「お前の生まれた時代は二千年代、日本だと平成か令和だな。なるほど、その時代なら武具に触れてる者はせいぜいが武道に関わった者や自衛官、ヤクザ者ぐらいで大多数の者が喧嘩すら経験が無い時代だったな」


 やっぱりだ、カーズさんは日本の事を知っている。

 って言うか、平成や令和を知っていると言う事は、その時代に生きた人間だったのか?

 メッチャ気になる!!


「カーズさんはオレが宇宙の一巡した世界から来たと言いましたけど、この世界はやっぱり宇宙が一巡する前の地球って事ですか? でも、空にも地球は浮いているし……カーズさんも地球に居た……えっと、その世界は俺が居た世界と同じなんでしょうか?」


 俺の矢継ぎ早な問いかけに、カーズさんは小さく唸った。


「気になるか。自分が嫁いだ先の世界だ当然か」

「と、嫁いだ」


 嫁ぐとか改めて言われると照れるものがあるな。

 うん、何度も自分で言い聞かせてきたくせに、他人から言われると改めて自分が女になったんだと自覚すると言えば良いのか……

 むず痒いものがあるな。


「よかろう、もし私に触れる事が出来たなら疑問に答えてやろう」

「え、今教えてくれるわけじゃ無いんですか? って言うか、カーズさんに触れるって全く出来る気がしないんですが……」

「甘えるな。この世界でアルフレッドと共に生きたいのだろう? お前が戦いに慣れていないのは事実だろうが、それに甘えていられる時はこの世界で生きる事を決めた時点ですでに終わったのだ」

「う、その通りです……」

「お前達を殺そうとする者がいる以上、苦手などと言ってられんぞ。全てに得意になれとは言わないが、生き残りたければ誰にも負けない技術を一つは身に付けておけ」

「もし、オレがカーズさんに触れる事が出来るようになれば?」


 俺の問いかけにカーズさんがニヤリと笑った。


「少なくとも、この地上に敵と呼べるような存在はほぼ居なくなるだろうな」


 それは自惚れでも何でも無い、己の能力に対して圧倒的な自負があるからこそ出来る笑い。


「悠長にしている時間は無いぞ。お前達が取り逃がしたあの男は、放っておけば五番目の魔王として覚醒するやもしれん」

「第五の魔王……そういや、オレとアル君の中にあるのも魔王の血なんですよね?」

「そうだな。だが、お前達は人として戦え」

「人……」

「そうだ。何時だって強大な魔を討ち果たすのは、前に進もうとする意志ある人間だ。人であれ、日野良。アルフレッドとともにな」


 人であれ――


 それは、何て重たい言葉だろう。

 俺はもうエルフだし、アル君は俺を助けるために魔王の力を一度覚醒させている。

 それでも『人であれ』というカーズさんの言葉は、きっと種族を意味する言葉何かじゃ無い。

 人としての心を忘れるなという事だろう。

 カーズさんは一万年以上生きている。

 英雄達の王とか神様と呼ぶ人達も居る


 だけど、この人の心はきっとどこまでも人間な気がした。


 オレ何かじゃ想像もつかない、気が遠くなるほど果てしなく続いたその人生でもカーズさんは人として仲間のために戦い続けたんだろう。

 

 だから、厳しいけどどこまでも優しくオレ達に手を差し伸べてくれる、


 頑張ろう。

 この人の前では強がりも虚勢も意味をなさない。

 うん、アル君と一緒に強くなるんだ。

 それが、今のオレに、オレ達に出来る精一杯だから。


「ね、アル君。オレ達……って、アル君埋まったままだ!」


 目を回したアル君の意識が戻ったのは、地平の彼方(何度も言うが塔の中だ)に太陽が沈んだ頃だった。

お読みいただいている読者様、本当にありがとうございます!


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