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終わりゆく世界に紡がれる魔導と剣の物語  作者: 夏目 空桜
第四章 TSヒロイン帰郷する
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TSヒロイン・未来の向こう側

2018/12/10~12に投稿の『未来の向こうに』『ねじ切れハッピー』『何気ない一言』の3話を結合改稿し、表現等を中心に改稿しました

 結局、バレました。

 ええ、そりゃもうあっさりと。

 カーズさんは何も言いませんでしたよ。

 だけど何も言わないってのは、逆を言えば(イコール)バレてるって事だよね。


 何となく分かるんだよ!

 ああ、雰囲気でさッ!

 だって、すっげぇ優しい目でオレたちを見てんだもん!!

 しかもアル君ってばさ、カーズさんの前でメッチャキョドッてるし!

 何で普段あんなに冷静なのに、カーズさんの前だとこうも落ち着かなくなるんだろ?

 まぁそのギャップも可愛いんだけどさ。


 で、現在なにをやってるかと言えば、

 メッチャ修行してます。

 ついさっきまでイチャコラしていたはずなのに、どうよこの振り幅。

 

 まぁ、詮索されるのを恐れたアル君とオレが、勢いに任せてカーズさんに手合わせ願ったってのが事の経緯だ。

 本当なら今頃向こうの世界(・・・・・・)に行って両親に会っているはずなんだけど、やっぱり首筋とか見えるところにアル君マークが付いているとどうにも落ち着かない。


 そんな理由も含めて結局ガチの修行となった訳でもあります。


 カーズさん曰く

『いきなり手合わせは順序が違うのだが、アルフレッドの実力は知ってるがリョウ(おまえ)の実力と連携時の実力を知っておきたい』

 と言う話の流れから、オレまで一緒にこの激甚災害みたいな人と戦う羽目になったのだが……


 うん、自然の猛威の前だと、人間って如何に無力かってのがよく分かる。

 ……相手も人型だけどね。

 こっちの世界に来て、それなりに強くなった自負はあるけど、まるで話にならん。


 アル君、よくこんな人相手に今まで手合わせしてもらってたよな。

 オレなら、秒で逃げるぞ。


「アルフレッド、連携の一番の基本は何だ?」

「な、仲間と息を合わせ戦う事です」

「阿呆!」


 GOSYHAAAAA!!


「ぐはああぁぁぁっ!」

「あぁ!? ア、アル君が車田ぶっ飛びをっ!!」

「……ぎゃぴい」

「ああ、そして落ち方が雑魚っぽくなって」

「リョウ、雑魚っぽいは余計……」

「ご、ごめん」


「はぁ、連携の基本は仲間の実力を完全に把握する事だ。そして、何が得意で何が不得意か、それを確実に把握して足りない点を補う事だ。今のお前はリョウを気にするあまりに全てが散漫になり一人の時の実力を半分も出せていない」


 ど、どうやらアル君はオレへの愛を爆発させすぎて弱々になってるらしい。

 うへへ、そんなこと言われたら恋人冥利に尽きますなぁ。

 って、浮かれてる場合じゃない。

 それって、オレがアル君の足を引っ張ってると指摘されてるようなもんじゃん。


 オレだって戦える。

 アル君にもカーズさんにも認めてもらえるようオレも頑張らないと。


 オレが唯一得意とする、魔素肉体強化術【通称・界王拳】でカーズさんに殴りかかる。


「でぇやああぁぁぁぁあぁぁっ!」


 ピタ。


「はぁ!?」


 メッチャ全力全体重全気合いを乗せたオレの拳は、まるで真綿に拳を突き刺したみたいにカーズさんに指一本であっさりと止められる。


「おろかものっ!!」


 BAGOOOON!!


「ぷぎゃぁあぁぁぁぁぁぁ……」


 ぼっちゃあぁぁぁぁん……


 車田ぶっ飛びPart2。

 近くの川まで吹き飛ばされたオレ。

 あ、あんたは黄金聖闘士か……


「やれやれ、お前達は自分たちの持つ特性を何一つ理解していないな。それだけの資質がありながら59階層程度で足踏みする理由がよく分かった」


 痛烈な駄目出しに、アル君は悔しそうに拳で地面を叩く。


「アルフレッド、恋人と共に生きたいのであろう。ならば地上で何が起きようと焦らずに己の腕を磨き、己の見識の甘さを見つめ直せ」

「はい……お願いします」

「そしてリョウ」

「は、はい!」

「お前の支えがこの阿呆の生死を握っている。欠けること無く共に未来を歩みたいのなら、愛にうつつを抜かさずしっかりと己を磨け」

「イエッサッ!!」

 

 結局、その日のオレ達は、カーズさんを一歩も動かす事が出来ずに惨敗した。


 オレ達が弱いのか、これが神とさえ言われる男の実力なのか。 

 ふ、ふひひ……


「あーっはっはっはっ!」

「どうしたの、家に戻るなり高笑いして? もしかして打ち所が悪かった?」

「失礼な! オレは今メラメラと燃えてるんだよ!」

「燃えてる?」

「だって、このままだったらただ守られるだけのポンコツヒロイン枠がせいぜいだったじゃん。だけどカーズさんに鍛えてもらえれば、アル君を守れる赤髪炎系ヒロイン枠ぐらいには昇格出来そうじゃん! あ、赤髪でも理不尽暴力系にはならないから安心してね」

「時折キミが何を言っているのか、全く分からない事があるんだけど……」

「とにかく! オレも強くなって、老いが二人を別つ時が来るまで一緒に歩みたいってこと! おっけー?」

「了解。あはは……」


 アル君がなんでか分からないけど笑みを噛み殺していた。


「どしたの?」

「だってさ、まさかリョウから先にプロポーズされるなんて思わなかったから」

「みゃっ!?」


 い、言われてみれば……

 勢いに任せて言っちゃったけど、そう受け取れる言葉だよな。

 顔から炎をが吹き出しそうである。

 や、良いんだよ?

 オレだって勿論アル君と、一緒になりたいですから。


 ただ、思わず口走っちゃった台詞があまりにも恥ずかしい事ってあるじゃん?

 そ、そんな状態と言いますか……


「リョウ」

「あ……」


 抱き寄せられ、しかもアル君の胸の中でメッチャ頭を撫でられる。

 ヤバい、凄く落ち着くし、幸せだ。


「ボクは何度だって言うよ。キミを手放す気は無い」

「うん、聞いたよ。聞かせてくれた。でもね、その先の言葉……聞かせて欲しいな」

「二人の子供を作ろう。必ず幸せにする。何時か来る最後の時、どっちが先に逝くかは分からないけど、必ずキミにボクを選んで幸せだったって言わせてみせる」


 ズッキュゥウゥゥゥゥゥン!


 ヤバい、今、オレ完全に乙女だ。

 この年下イケメンが好きすぎてパニック起こしそう……

 そして……


 気が付いたら今夜もメッチャ夜戦した。



 お早うございます。

 おはようございます。

 お早うござりまする。

 お早うございマッスル!

 地球に戻ると決意したのに、何やかんやでハッピーゆえに戻れずに二日目の朝です。

 そういや話は変わりますが、キスマークは一週間は消えないと言う事をネットの海で知って興奮した中三の春を夢の中で思い出しました。

 そんなご機嫌で爽やかな朝、皆さんどうお過ごしでしょうか?


 オレはハイテンション元気です。

 アル君との二日続けての深夜のハッピー・トークで頭の中がレロレロハッピーなんですYO~。

 寝てないんですYO~。

 徹夜なんてテスト前の一夜漬け以外じゃした事ないんですYO~。


 でも、脳内に幸せホルモン出まくってたのもあって、二日続けての徹夜でもオレ元気!



 うん、我ながらちょっとウザいな。

 控えよう、だってアル君にウザいとか言われたら、オレ心が病んじゃうモン♪


 ……あかん、今自分のことウザいと思ったばかりなのに、思考の矛先がウザいままだ。

 気と付けね、


「あふぇ~ふにゃふふ……」


 ダメだ、反省よりも先にあくびが出る。

 昨日、カーズさんに愛にうつつを抜かすなって言われたばかりなのに、こりゃ今日もお仕置きコースだな。


 うーん……

 カーズさんの昨日稽古は怖かったけど、本気で怒られたらあんなんじゃすまないんだろうなぁ。


 ガクガクガクガク……


 あ、あれ?

 カーズさんに怒られるかもとか思ってたら、身体が急に震えだしたぞ。

 こ、これはアレか?

 生物が本能的に感じる恐怖ってヤツか?


「ヤ、ヤバ……震えが止まらん。怖いよ~、怖いから、アル君に慰めてもらおっと……」


 ※

 おわかりいただけただろうか……

 この時の彼女は、その思考回路がすでに間違っていると言う事にさえ気が付いていなかったのである。



「あ~る~くん♪ とあーっ!!」


 箱に滑り込む猫みたいな勢いでアル君の寝ている布団にダイブ!

 ふひひ、アル君の匂いだ♪


「あ、おはよ、リョウ……」

「おはよ♪ アル君。えへへ~、アル君アル君♪ って、アル君!?」


 思わず声を裏返してしまった。

 よく見るとアル君の目の下にはベアーが出来ていた。しかも若干頬が痩せこけてるような……

 そ、そりゃ、【ゆうべはおたのしみでしたね】な感じの夜戦をガチで連戦すると、こうなるよね。


「アル君、大丈夫?」

「ねむぃ……」


 珍しい反応と言うか、心底疲れ切ってる声音。

 だけど、


「ア、アル君?」

「フニュフガ……」


 疲れ切ってるはずなのに、男の本能がそうさせるのだろうか?

 オレにしがみついたまま胸の中に顔をうずくめる。

 そして……

 

 沈黙。


 アル君が元々独占欲強くて、ヤン気質なのは知ってたけど、まさかこんな甘えん坊になるとは。

 ふ、ふふ、この世紀の天才児を、いっそこのままオレ抜きじゃ何も出来ない駄目な子に調教……

 って、アホか……

 何、思考回路腐らせてんだよ。

 オレも寝不足だとダメ思考ばかりが強くなるな。


 日本に戻ったら、アル君の理性を蒸発させるレベルのえっちぃ系のファッション雑誌を手に入れようとか思ってたけど、このままだとアル君が腹上死しかねないから、やめといた方が良さそうだ……


 うん、日本に戻ったら、料理の本とか野菜の種とか……こっちの世界でも美味しい物食べさせてあげられるように……考えて……あ、げ……




 人間、血の気が引く瞬間ってのをリアルで自覚出来るんだと知った。

 気が付けば、窓の外は相変わらず塔の中とは思えない綺麗な夕空で、眩しいくらいの西日が差し込んでいた。


「ア、アル君、た、たた、大変だ……」

「ふぇ? あ、ごめん……途中で力尽きてた、続き……」

「うん、続き♪ って、そうじゃなくて! 寝ぼけてないで目を覚まして!」

「う~ん、リョウはボクのだ……」

「そうだよ! そうだし、そう言ってくれるのは嬉しいけど、今はそれどころじゃない!」

「リョウ……」

「あん♪ って、こらー! ヘソを舐めるな! 本気で目を覚ませ、オレ達カーズさんに殺される!」

「せ、先生ッ!?」


 シャキーンと目を覚ましたアル君がベッドの上に立ち上がる。

 全裸です。

 めっちゃ全裸です。


 きゃっ♪

 俺の目の前にアル君のアル君がいらっしゃる♥


 ……って。ちゃうちゃう。

 今はピンク脳で喜んでる場合とちゃうねん。


「えっと、今……何時? どう見ても朝焼けじゃないよね?」

「メッチャ夕方です。アレを人は西日と言います。あと数時間で青い地球が夜空に登ることでしょう」


 ああ、アル君の可愛い顔が、まるで死刑宣告を受けた被告人みたいに歪み青ざめていく。

 そして、頭を抱えたまま布団の上に頽れた。


「謝ろう」

「そこは逃げるんじゃないんだね」

「そんな選択肢あると思う?」

「で、ですよねぇ~」

「と、とと、とりあえず息つく間もなく謝り倒そう! 全力で謝ろう! 土下座、土下寝……ど、土下潜りくらいまでやって謝り倒せば、多少は怒られるかも知れないけど、許して……くれ、る……はず……」


 どんどん尻すぼみになっていく声音

 やべぇ、アル君が心底怯えてる。

 なんか、丸まった尻尾の幻が見えるレベルで怯えてるんですけど。


 結局、何が起こったのか……

 結論だけを話そう。


 お前達は生きる気があるのかと、しこたま怒られた。

 アル君はギャラクシアンなんたら喰らった感じで、今日も車田ぶっ飛びしてました……

 チーン……合掌……(´・ω・`) 



 それから、何やかんやあって一週間が過ぎた。


 さすがに星が悲鳴を上げるほどの破壊力で焼きを入れられたオレ達は大いに反省した。

 一晩中お猿さんモードになる事を止めたのだ。

 まあ、見えない位置のキスマークは多少(・・)増えましたけど、服でバッチリ隠れます!


 やったねリョウちゃん、家族に会えるよ!


 とは言っても、だ。

 何だか改めて帰るとなるとちょっとだけ、いや、かなり不安だ。

 オネェの人とかが親にカミングアウトする瞬間ってこんな感じなんだろうか……


「リョウ……」


 アル君がオレの名前を呼ぶと、黙って手を握ってくれる。

 アル君の体温が心地良い。

 ただ手を握ってくれるだけなのに、すごく勇気が湧いてくる。


「えへへ~」


 ヤバい、思わず頬がにやける。

 アル君とキスしたいな。

 ……って、何時もこのパターンだからグデグデになるんだろ!

 学習すれよ、オレ。

 グッと、ここは我慢我慢……


「リョウ、愛してるよ」

「あ、ありゅくん……って、アル君、オレを困らせようとして遊んでない?」

「遊んでない遊んでない、本音本音」

「むぅ~、何か普段使わないその軽い口調とか、すっごくイタズラしようって感じが見えるんですけど?」

「アハハ、ごめん。でも、緊張はほぐれたでしょ?」

「え? あ、うん」


 言われてみれば、肩に入っていた力がスッと抜けたような……

 アル君はオレが緊張しているのを見越して言ってくれたんだ。

 うん、今オレに背中向けてるのは、そんな気遣いをした事が照れくさかったからだよね?

 (ライト)ばりに【計画通り】とか悪い顔してないですよね?


「ありがと、アル君。オレ頑張るよ」

「うん、ボクも一緒に行くからさ、二人で気合い入れて乗り越えよう。何、大丈夫だよ。最悪なにがあったってもボクはずっとキミの隣に居るから」

「ふきゅ~」


 オレの最大で最愛の味方が、凄くイケメンです。


「アル君、オレ、発情しそう」

「う、嬉しいけど、まずは当初決めた予定通りに動こうね。リョウの家族にあって、ちゃんと話そうよ」

「むぅ……でも、そうだよね。うん、了解した」

「うん、それでこそボクのリョウだ」

「えへへ~」


 アル君に勇気一杯貰った!

 背中も押して貰った!

 勇気ビンビンです!

 ビンビンになるモノ無くなったけどね……

 でも、これで母さん達に会う覚悟は決まった!


 パンッ!


 と頬を叩いて気合いを一つ。


「よっしゃ、カーズさんにお願いしてくるよ!」

「うん、行こう。と、その前にちょっと待った!」

「え、えー? オレもう行く気全開になってたんだけど」

「ああ、出鼻を挫く真似してごめん。ただ、キミの国に行くのにボクたちこの格好はマズい。着替えよう」

「え?」


 オレの格好、アル君が作ってくれた真っ赤なレザーコートと、カーズさんに貰ったミスリルが編み込まれたシャツ。

 アル君はいかにも魔術師と言った感じの衣装に、自分の身長ほどもある剣を背負っている。


 ……ん?


「や、何を言ってんだコイツみたいな反応してるけど、キミの故郷に行くんだよ?」

「え? オレの故郷は……あ、そうか。考えてみたら、向こうじゃ酒場で無視したからっていきなり抜刀したり魔術を打つような輩はいないや」

「いやいや、こっちの世界にも酒場で無視したからって抜刀するようなクレイジーな輩は居ないからね。そもそも、そんなイカレた輩だったら日常生活は送れないからね?」

「あ、うん、そうだよね。いかんいかん、どうもオレの固定観念が明後日の方向に驀進してしまう」

「リョウは突拍子もない想像力をたまに爆発させるよね」

「ごめんね、厨二脳から卒業出来てなくて。あ、それはそうと服だよね? どうしようか」

「前にここに住んでいた時に先生から貰ったシルク生地やレザー生地が残ってたから、それで向こうでもそれなりに着れそうな感じの服は作ってはいたんだけど……」

「アル君って何気に器用だよね」

「山の中で世捨て人やってるさ、自給自足がある程度出来無いとどうにもならないんだよ」

「料理は壊滅的なのにね」

「う、うるさいな! ボクの得意料理は焼き肉なんだよ!」

「でしょうね……」


 アル君と出会ったあの山での最高のご馳走が、牛だかブタだか()なのかさえ分からない巨大生物だった。

 ソイツらに暴力的な火球をぶちかまして、良い感じに焼けた部分を貪り喰らうという残虐ファイトはなかなかに鮮烈な記憶だ。


「う、うるさいな!」

「オレ、何も言ってない!」

「顔見たら分かるよ。他人はアレを焼き肉とは言わないとか思ってるんだろ」

「いや、まぁ……でもでも、ほら! オレは裁縫とか全く出来無いけど、アル君は出来るし料理以外の家事とかはこなすじゃん?」

「まぁ、一人暮らししてたし、先生に生きる術として最低限は叩き込まれたからね」

「オレそっち方面はまったくダメだけど、でも料理は人並み以下、アル君以上には出来る」

「ちょっと余計な注釈入った気がするんだけど」

「まあまあ、聞いてよ。オレ今回の帰還でもう一つ目的があるんだ」

「目的?」

「料理」

「料理なら何時もやってくれてるよね?」

「うん。でもさ、食べるだけ(・・)ならそれでも良いけど、今のオレだとそれしか出来無いんだよね。でも、それじゃ駄目なんだよ」

「駄目?」

「オレさ、前は母さんが作ってくれたご飯、美味しくないと思ったら当たり前に残してたんだ。父さんに良く怒られたけど、正直気にした事も無かった。だけどさ、こっちの世界で実際に自分で料理や狩りとかやったらさ、怒られて当たり前の事してたんだなってつくづく思い知らされた」

「うん……」

「それにガイアやマッシュの傭兵料理を思い出せば、あり合わせの材料でもあんなに美味しい物を作ってくれた」

「確かに。まさか盾を鍋にするとは思わなかったから、あれは衝撃的だった」

「だよね。オレさ、この考え方は人間のエゴかも知れないけど、命を奪う以上は美味しく食べてあげたいんだ」

「そうだね、それが大切なんだと思う」

「オレ達の目的からすれば、近い将来あっちこっち旅に出なきゃ駄目だろうし、だけど旅先だから料理もこれで良い(・・・・・)で諦めたくない」

「うん」

「だからオレさ日本に戻ったら、向こうで売ってる料理の本とか野菜の種とかも買って、いっぱい勉強してアル君の食生活を絶対に潤わせてみせるよ。オレ達戦闘に関してはそこらの傭兵なんかには負けない位の強さだと思うけど、日常生活能力になるとどっちが欠けても貧弱じゃん?」

「確かにね」

「二人で支え合おうよ。オレとアル君が二人で居れば足りないところ全部補えるようになりたいんだ。それに、将来は子供達に命って大切なんだよって教えてあげる為にもちゃんとした料理を作れるようになりたいんだ」

「こど……」


 ニシシと笑うオレ。

 アル君がちょっと照れたみたいにうつむくと、帽子を目深にかぶる。


「まったく、キミは何時も……」

「いつも?」

「何でも無いよ。ほら、服を着替えて先生の所に行こう」

「うん、らじゃった! 40秒で支度するよ!」


 そんな感じで、オレ達は、遂に故郷への第一歩を踏み出したのであった。

お読みいただいている読者様、本当にありがとうございます!


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