ハウゼル
戦闘回です。
え?
ほかに言う事?
……ちょ、ちょっと更新が遅れたかもです(ポソッ)
どうもさーせんした!
底の見えぬ暗闇から聞こえてくるそれは、まるでザラついた金属が擦れ合うような不快な音。
私たちはこのおぞましい足音を聞いたことがある。
そう、昆虫とは到底思えぬ巨大な体躯をした鈍色の怪物。
「来ます!」
黒エルフの一人が叫ぶ。
と同時に炎霊の炎の祝福を受けた黒曜石の矢が放たれ赤い軌跡が暗闇に吸い込まれ蟻を一体たたき伏せる。
炎が爆ぜる一瞬見えた、獰猛な蟻たちのシルエット。
「二人一組で! 最大注意は顎と蟻酸!」
スピラさんが檄を飛ばしながら、近づく殺戮蟻の一体をショートソードで牽制して炎霊の炎を連続で叩き込む。
味方が恐怖に飲まれるよりも早く指示し、なおかつ自分の戦いで士気を鼓舞する。
なるほど戦い方が手慣れている。
圧倒的脅威を前にここまで冷静な指示を出せる者などそうはいない。
そうはいないですが、冷静に考えれば彼女ならそれが出来るのも納得かもしれない。
西国では未知とも言える巨大生物たちが犇めく【トゥバリー大森林】。
そもそもが戦い慣れしていなければ生きて行く事など到底不可能な国なのだ。
ミニマムタイラントの凶悪すぎる迫力に脅されて弱々しい姿を見て勘違いをしてしまいましたが、戦士たる男手が無くなった村を守り続けたリーダーだけのことはある。
そして続く黒エルフ達のショートボウと魔術の援護からの矢継ぎ早な攻撃。
少数精鋭とは言え一人一人の個の戦力はアルトリアの上級騎士に匹敵、いやあるいは凌駕しているかも知れない。
国を壊滅させられ避難生活を余儀なくされているが、一つに纏まっていたならアルトリアにとっては間違い無く脅威の一つであったはずだ。
アルくんが彼女たちを脅かした脅威を排除出来る存在であり、そして同時に彼女たちにとってはある意味で脅威とも呼べる存在であったことが幸いした。
って、味方の戦力分析をしている場合じゃありませんね。
何としてでも彼女たちの脅威を排除し同盟を結ばねば。
北の獣王国、南の蛮族。
ヤツらの脅威に対抗する為にも、
「ハウゼルよ我に力を! 風霊王よ・荒野を切り裂く砂塵となれ!!」
ハウゼルを中心に発生した暴風が古代の遺跡を切り刻みながら殺戮蟻を押し止める。
仄暗い遺跡を怪物達の奇声が殴打する。
「射出せよ!!」
スピラさんの合図と共に武黒エルフ達が黒曜石の矢をさらに解き放つ。
吹き荒れる暴風の力で矢が唸りを上げて加速する。
「炎霊よ、荒野を薙ぎ払え」
ダリア殿も暴風の中に炎を解き放つ。
黒曜石の鏃と炎を纏った暴風が遺跡を舐め尽くす。
「攻撃せよ!!」
「了解!!」
スピラさんの号令一下、黒エルフ達が進撃を開始する。
「ダリア殿、炎霊の力はまだ維持出来ますか!」
「了解!!」
ダリア殿の同意と共に、暴風の中の炎がさらに渦を巻く。
ぐ、く……
自分で指示したとは言え、相反する精霊の使役に私自身の身体が悲鳴を上げる。
指先が震えだす。一瞬でも気を抜けば風霊王の力は暴走して私たちを切り裂く刃と化すだろう。
こ、の、じゃじゃ馬が!
「言う事を……聞けーっ!!」
ありったけの精霊力をハウゼルに込める。
全力疾走をしながら針に糸を通すような精密作業を同時にこなすという無謀。
だけど、ここをあの人に任されたんだ。
精鋭クラスには届かなくとも、混成部隊ぐらいはこの場で一掃してみせる!
「ハウゼルよ、偉大なる英雄と歩しその気高き英知を我に貸し与え賜え!」
全身から更に力が抜け落ちていく。
まったく、とんでもない魔素食いで暴食な剣ですね。
ですが、あの人が私に預けたんだ、使いこなせると信頼してくれた証し。
「使いこなせなければ、相棒失格です!!」
ハウゼルの柄に嵌められた緋色の宝石の中に赤い光が生まれた気がした。
……わかる。
そうか、これがこの剣の使い方。
振り下ろした剣とともに、炎を纏った暴風が殺戮蟻の動きを先読みして纏わり付く。
「炎と風が奇妙な動きを……ファフナ様、剣を完全に!」
「まだこの先があるのかは分かりませんが、剣は私たちに力を貸してくれています!」
剣を振る度に、炎が、風が軌道を変え殺戮蟻の進路に立ち塞がる。
そう、この剣は武器であると同時に一本のタクトだ。
刃が空を切り裂く音色で精霊を操るタクト。
魔剣などと呼ばれたくせに、その実態は随分と優雅な動きを要求してくれやがりますね。
「さあ今のうちです!」
「了解!!!」
迷宮を揺らすほどのかけ声が唱和した。
連日暑いですね。
北の大地も遠吠えしたくなる暑さです。
あ、パソコン火を噴きました。
電化製品も熱中症をおこしたみたいです。
散財!!><






