ファフナの才
あれ?
五千文字位書いたつもりが二千文字も無いぞ??
どこに消えただ?
全身に満ちていた精霊力と魔素がゴッソリと抜け落ち、全身には鉛がのしかかったみたいな疲労が宿る。
立っているだけで目眩を起こしそうだ。
ああ、これは何て酷い副作用だろうか。
恐らく、アルくんが感じていた疲労もこれと酷似したモノだったはず。
膝を突いて寝転がりたい。
今すぐ意識を失った方がどれほど楽か。
だけど――
「すごいな」
「ア、ル……いえ、凄くなんか無いです。ハウゼルの力を借りたからこそ出来た大技です。私だけだったらとてもとても」
「なぁ、その剣が何故アールヴに魔剣と呼ばれてるかは知っているよな」
「精霊を強制的に使役するからですよね」
「それだと三十点だな」
「三十点?」
「ああ、その剣は確かに精霊を使役する力はある。だけど、その剣が真に魔剣と呼ばれた由来は単純だ。剣の担い手に精霊と心を通わせる資質が無ければ魂ごと喰い滅ぼされたからだ」
「…………ほへ?」
「ハウゼルってのは、失われた言語で確か【捧げ物】とかって意味があったはずだ。ま、その名前の由来通り資質も無いクセにその剣を振るい、魂を喰われて精霊の供物になったアールヴは両手じゃ数え切れないはずだ」
「そんなに……って、それじゃ本物の魔剣じゃないですか!」
「まぁそうとも言えるな。ただ、ボクから言わせれば自身の能力すら分からず喰われたバカ共と切って捨てたいところだ」
「辛辣ですね」
「身に余る強大な力を自分のモノにしようとすれば代償は伴うのは当然だろ。とは言え、他者から見たらその剣に喰われたのも事実だ。悲劇を生む以上、野放しには出来ぬ故に剣の力は彼奴に封印された」
「あやつ?」
「カーズだ」
ぶぼっ!!
変な咳が出ました!
変な咳が出ました!!
「え、英雄王様を彼奴とか呼び捨てにするのは勘弁してください! ここに大国生聖教の神官がいたらとんでもないことになりますよ!!」
「アイツらは西国の北に引きこもってるから東国なら悪態吐き放題だ」
あ、なんか久しぶりに胃がきりきりしてきた。
「まぁ、取り敢えず英雄王様が封印していて……ふういん? そう言えば、東国に来たときに思ったんですが、私が知るハウゼルよりもハウゼルの方がエグい力を放ってる気がするんですが……」」
「あ、封印ボクが解いた」
「ですよねー! ばぁあぁぁぁぁぁっ!!」
「はしゃぐな。本番はこれからだぞ」
「分かってます、分かってますけどッ! それとはしゃいでるんじゃありません! 衝撃を受けてるんです!!」
こんな物騒な剣を良くも預けやがりましたね。
「言いたいことは分かるよ」
「本当ですかぁ?」
そんなこと言ってますが、絶対すっとぼけた明後日の方を向いた発言するに決まってます。
「実際のところ、お前がハウゼルを使いこなせて当然だとボクは思っていたぞ」
「へ、え?」
「何だよ、その反応」
「あ、いえ……えっと……」
「持って生まれた才能……それはファフナ、お前の出自が天上の賢き者ってだけじゃない。お前自身が幾度となく否定されながらも絶えること無くひたむきに続けてきた努力の成果だ」
「努力、ですか?」
「ああ、努力だ。求められる才能が違うと言うだけで否定され続けても折れなかった不断の努力。お前自身が生まれながらに持っていた才能と努力の結果と考えれば何も不思議じゃ無い。むしろ遅すぎたぐらいだ」
う、きゅぅぅぅぅぅ……
この人は、この人は!
いっつもつっけんどんなクセに言われて嬉しい言葉を的確に言うとか……
本当にずるい人ですね、貴方は。
「チョロ……」
「何か言いましたかダリア殿」
「いえなにも。ただ、ファフナ様」
「なんですか?」
「与しやすいとか言われた事はありませんか?」
「どういう意味ですか!!」
「やー、ガラス玉かってくらい手のひらの上でコロッコロコロッコロ転がされてるなぁ~って」
「うるせーです」
まったくこの雑音製造機はヒトを何だと思ってるんですか。
……ま、まぁ確かに自分でも少しチョロいかなとは思うけど。
仕方ないじゃ無いですか! 仕方ないじゃ無いですか!!
だってこんなこと言われて喜ばないはずありませんもの!
「おい、そこのお笑いコンビ。本番はこっからだぞ、はしゃぐのもそこまでにしておけ」
く、くーっ!
くーッ!
ダメだ、コイツ。
コイツがいると私とアルくんが良い感じにならないことを再認識しました!
ラブでコメにはさせんぞという、神の意志を感じる……






