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終わりゆく世界に紡がれる魔導と剣の物語  作者: 夏目 空桜
第二部 第四章 降り止まぬ雨
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ファフナの誓い

え?

もう6月だと?

馬鹿な……春は何処に消え去った???

「う、うきゅぅぅ……」


 余波に思いっきり巻き込まれたせいで、空も地面も分からない勢いで吹き飛ばされる。

 うぅぅ……何たる間抜け。

 ここが戦場と分かっていながら油断した私の落ち度だ。

 ……ええ分かってます。分かってますから、当たり前だろみたいな空気感だけは醸さないでください。

 ぐむむ……


「ぺっぺ……口の中は苦いしなんかジャリジャリします……」


 行儀は悪いですが口の中の砂を吐きながら、何とか視界を遮る土煙を払いのける。


「はぁ……はぁ……」


 もうもうと立ち上る土煙の中から微かに聞こえてくる微かな呻き。

 ぼやける視界の中で、アルくんが両膝に手をつき肩で息をしていた。

 あのアルくんがこれほどの疲労を?

 そう思い、ふと古城を覗き込ん――ッ!!


 背筋に冷たい汗が流れ落ちた。

 風霊王(ルシャルーラ)炎霊王(ゼタルーラ)……

 今までも幾度となく物語の中でしか語られないような、そんな非常識なほどの力を見せ付けられてきた。

 だから、理解して(わかって)いるつもりだった。

 この人が常識の外に居る存在だと。

 だけど、それはつもり(・・・)でしか無かった。


 魔術の完成と同時に目の前で光の濁流が降り注ぎ生まれた刹那の大破壊。

 膨大なエネルギーによる破壊。

 それはどのような言葉でも表現が出来ぬほどの破壊。

 ありきたりな言葉でしか言い表すことが出来ないほどに、ただただ圧倒的な大破壊が巻き起こっていた。


「ハァ……はぁ……ペッ…………くそ、全力疾走した後みたいに口の中が気持ち悪いな」


 軽口の一つでも叩くのかと思った。

 だが、私の想像を絶する破壊は、当然ながらその反動とも言える想像を絶する疲労を生んだのだろう。

 そしてアルくんばかりに気を取られていたが、法陣を組んでいた黒エルフ(スヴァルトアールヴ)達も当然のように地面に跪いていた。


「アルフォンスさん、立てますか?」

「ボクのことは良い。それよりもファフナ」

「はいっ!」

「風穴は空けた。一気に畳み掛けるぞ」

「了解です!」


 アルくんの呼びかけに小さく頷き魔剣ハウゼルを地面に突き立てる。


 魔剣ハウゼル――

 伝説の終着点、全界の時(しんじつ)を滅ぼすモノ【刻喰らい】を滅した伝説の聖剣の一つでありながら魔剣と呼ばれし剣。

 魔を断つ剣でありながら精霊達を強制的に従わせる忌むべき能力。

 まさかそんな強大な力を持つ剣を、私のような爪弾きモノ(スノトラ)が担い手になる日が来ようとは。


 いや、違う。

 そうじゃないだろ、自惚れるな。

 出来損ないと呼ばれ日陰者だった私が選ばれたんじゃ無い。

 たまたま、この剣を担うチャンスを得ただけだ。

 だからこそ、だ。

 これは、卑下でも何でも無い。

 持たざる者だった私だからこそ、いや、持っていることにすら気が付かなかった愚かな私だからこそ、この剣の力を正しく恐れて使ってみせろ!

 憎しみは勇気を曇らせる。

 怒りは正義を歪ませる。

 だけど――強さだけの勇気や正義だけでは弱きは踏みにじられる。

 憎しみや怒り……それとは真逆たる情愛を持つのがヒトであるように、

 清濁あわせて初めてヒトとなるように、

 いや、清濁合わせた存在こそがヒトであるように、この剣もまた同じはずなのだ。

 そう、担い手の心こそがこの剣の善悪を決める!


「ハウゼルよ、魔剣と呼ばれし偉大なる闘争の歴史(つるぎ)よ。古に封じられたその伝承をいま我らの前に示せ!」


 ゴウッ!! と音を立て、暴風を纏う刀身。

 その荒れ狂う力は、私が今まで使役してきた風霊(ルシャ)の力を遙かに超える強大なそれ。

 剣は唸りを上げながら辺りの魔素を暴力的に掻き集め私の中で膨れ上がる。

 それはまるで、私自身が強くなったと錯覚しかねない力の奔流。

 沸々と心の奥底から湧き上がる感情。

 アールヴの原種が人種と獣の掛け合わせであるからこそ、その本質はより獣的であり力という原始的な本能にこそ強く惹かれる。

 ……なるほど。

 何と恐ろしき力だろう。

 これが、これこそが英雄の目さえも曇らせその魔性に溺れさせる力か。

 担い手がアールヴであったなら尚の事だろう。

 ハウゼルよ、

 もし私を試しているのなら舐めるな!

 力への恐怖は幼き頃から嫌と言うほどに、

 そして――

 為す術も無く暴力に蹂躙されたあの時(・・・)、力というモノの恐ろしさは嫌と言うほどこの身に刻んできた。

 だからこそまやかしの力に溺れるものか!

 いつか私は、私の全霊を尽くしてあの人の隣に実力で並び立ってみせる!!


「ハウゼルよ! 未熟なる私に風霊王(ルシャルーラ)の加護を貸し与えたまえ!」

 

 全身が引きちぎれそうなほどの魔素を剣に乗せ振り抜いた。


「空が……」


 ダリア殿のかすれるような呟き。

 それは目に見えぬ空気の塊が剣に宿る力に引き寄せられながら、


「空が……降ってくる」


 巨大な不可視の塊が風穴の空いた古城に落下した。

北海道の気温が二十℃越える日がほとんどありません。

さむさむです。

暖かいうどんが食べたいなぁと思う今日この頃です。


前置きが長くなりました

相変わらず投降が遅くてすいませんでした!!

以上であります!

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