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終わりゆく世界に紡がれる魔導と剣の物語  作者: 夏目 空桜
第二部 第四章 降り止まぬ雨
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最もスマートな開城方法

なんか全然進められませんでした。

進められませんでした!

「は、吐き気がします! 目眩もです!!」


 懲役刑(ちんもくけい)から釈放されたダリア殿がいままで喋られなかったことを取り戻す勢いで叫び散らかす。

 とは言え、それも仕方が無いことでしょうね。

 何せ眼下に広がるのは千年以上も昔に無人と化した古城。

 いや、アレはもはや古城と呼べるような可愛いものではない。

 すでに瘴気そのもの。

 古城の存在がぼやけるほどの濃霧のような瘴気に包まれている。


「ファフナ」

「はい」

「あそこに飛び込んだら何分持つ?」

「間違いなく数分も経たずにアンデッドの仲間入りです」

「なら風霊(ルシャ)で瘴気を吹き飛ばせると思うか?」

「答えはノンです。あの瘴気の根源は城の中、伝承の通りならば恐らくは邪竜レヴァンの死骸こそが瘴気の発生源です。(ルーラー)の力で瘴気を払ったとしても、根源を絶たない限りは二刻も保たずに瘴気が吹き荒れるでしょう」

「なるほど。ボクの予想と同じだな」

「光栄です」

「それじゃやるとするか。そんな極上な無茶をぶっ飛ばしての国救いを」

「アルフォンスさん、それでは私たちは指示通りに」

「ああ、頼む」


 アル君が頷くと、七人の黒エルフ(スヴァルトアールヴ)達がアル君を囲むように移動する。

 前もって指示されていた隊列だ。


「他人の力を借りて方陣を描かなきゃこの術が使えないとはな。ほんと、ボクは今以て兄さんの足元にも及んでないんだなって実感させられるよ」


 それが意味する言葉の意味は分からない。

 ただ、自嘲気味ながらもどこか誇らしげに呟くと、拾った枝で七人を囲むように地面に六芒を描く。

 そして、自身は六芒と七人の中央に立ち印を切り呪禁を紡ぎ出した。


「魔陣よ六芒描きて地を貫き天を穿て!」

「「「「「「ひぐっ!!」」」」」」 


 ゴウッ!


 と音を立てて膨大な魔素が吹き上がり、黒エルフ(スヴァルトアールヴ)達が艶めかしい呻きを上げる。

 吹き荒れるのは黒エルフ(スヴァルトアールヴ)と言えども、触れたことすら無いであろう膨大な魔素。

 戦場を走り回った経験がある者なら酔いしれずには居られない。

 それは極上のアルコールや媚薬、いや、おそらくは麻薬でさえも及ばぬ極上の高揚感のはずだ。

 この少年の強さに一端とは言え触れるということは、強さを信奉するアールヴにとって決して逃れられないだろう――それが古のイカレたカガクとやらがもたらしたモノであったとしても。

 ……あ、一応言っておきますが私は違いますよ。

 アルくんの強さにはもちろん惹かれてます。

 でも、それ以上にあの時折見せる儚さと優しさに惹かれてるんです。

 あんなポッと出のヤツらが熱視線をアルくんに向けるようなら、闇討ちして消し去る所存です。


 ふんすっ!


 ………………あ、冗談ですよ?

 ほんと、ですよ?

 真に受けないでくださいね。

 ただ、ほんの少しだけイラッとはしていますが。

 ええ、ほんの少しだけです。

 ほんの少しですとも。


「がるるるる……」

「おい、仲間を威嚇するな。あと漏れ出てる邪念ウザいぞ」

「あ、ごめんなさいdす。でも、邪念じゃ無いです! 純念です!」

「知らん造語を放つな」


 けんもほろろな冷たいツッコミ。

 相棒に対して冷たいと思います。

 冷たいと思います!


 ……ま、言ったところでですよね。


「……少し、ボクに時間をくれ」

「言ったところ……へ?」


 ポツリと、聞こえた予想外の呟き。

 刹那、顔が熱くなる。

 どうせ肩透かしと言うか、『ですよねぇ~』みたいな返しが帰って来ると思ったのにこんな人前で言うとか。


『あのですね、ポンコツ姫様』

『再生出来ないゴミは、スクラップ以下のただの産廃でしかないと思うのですよ』


 クッ……

 何故、ダリア殿の罵倒ばかりが脳裏をよぎるのだ!!

 別に私がそっち方面に疎いとかじゃないのです。

 ただ、この感情の起伏が上手く制御出来無いというか……

 で、でも仕方ないじゃ無いですか!

 女性になってからというものアールヴの本能的感情なんて制御の仕方は分かりませんよ!

 ま、まぁ確かにそのせいで何度もけんもほろろと言うか、道端に落ちてるずだ袋だってもう少しマシな扱いなんじゃ無いかって位の雑な扱いを受けたことも一度や二度じゃ無いですけど。

 無いですけど!

 だけど、たまには優しく甘い感じのヤツだってありました!

 あった……!

 あ、あった……はず!

 ……何でしょうか、この自分で言っててやるせなくなるのは。

 なんだか頬が冷たく感じるのは気のせいでしょうか?

 これじゃどうしようも無いDV男がたまに見せる優しさに騙されてるような……

 あ、別にアルくんがそんなDVゴミクズ男だって言ってるわけじゃないですよ!


「あ、あの、アルく――」

貪狼(どんろう)巨門(こもん)禄在(ろくそん)文曲(もんごく)廉貞(せんそく)武曲(むごく)破軍(はぐん)、極北に瞬きし七つの星々よ我が呼び声に応えその輝きを剣と成せ! 七死宝剣(グラン・シャリオ)!」 

「ほんぎゃーッ!!」


 刹那、竜の低い唸り声にも似た震動とともに頭上に夜の闇の帳が落ち、空から無数の熱を保つ破壊が降り注ぐ。

 ええ、無防備に近付いたせいで爆風に煽られました。

 煽られました!

 爆発オチ分かってましたもん!!


 ぐふッ……

次は早めに投稿出来る様に頑張ります!←いつも言ってる? 気のせいです……

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