魔剣の由来
前書き後書き、何を書いたら良いか悩んでいるうちに一週間がすぎました
「陛下からパクってきたんですか?」
「誰が何だって?」
「ですから、貴方が、陛下から、おパクリあそばせになられたのかと」
「誰が丁寧に話せと言った」
「ですがそれじゃあ何故これがここにあるんですか!」
「陛下に借りてきた」
「それは世間一般的にはかすめ盗ったと言いませんか?」
「言わん!」
「じゃじゃじゃじゃじゃあ、強奪ですか!?」
「よーし、お前がボクのことをどう思っているのかよっくわかったぞー!!」
「あの、夫婦漫才中すいませんが、経緯だけ教えてください」
「夫婦漫才言うな!」
「夫婦……」
「何故赤くなる!?」
「だってだってですよ!」
「イチャイチャしないで経緯を話してプリーズ」
「いきなりフレンドリーすぎんだろ……まぁ良いか。んで、経緯かぁ?」
「そんな面倒臭そうにしないで下さい。陛下擁立の立役者といえどもこのままではただの容疑者なんですから、身の潔白が証明出来るならちゃんと話してください」
「そそ、そうですよ! 容疑が確定しましたら、減刑してくれるように私も片腕として一緒に頭を下げますから!」
「片腕の斜め上の信頼に涙が出そうだよ」
涙が出そうって言われましても、ねぇ?
仕方ないじゃ無いですか。
信頼はしてますよ?
ええ、そりゃもう。
貴方が思う以上に私は貴方のことを信頼していますとも。
ただですね、信頼はしていますけどそれに匹敵するレベルでとてつもない何かをやらかしそうな人なんですもの。
「まぁ良いさ。遅かれ早かれ説明は必要とは思っていたからな」
「そう思うなら早めにして下さい」
「へいへい」
「投げやりだなぁ」
「バドゥーの群れがギャアギャア五月蠅いのに、説明に時間割くのもどうかと思ってな」
「あ、それもそうですよね。じゃあサクッと倒して来て下さい」
「サクッとってお前……さすがに雑過ぎんだろ」
「ファフナさん、いかにアルフォンス殿でもあの群れは……」
ダリア殿が引き攣り止めに入る。
ですが私は言いたい。
そこで渋ってる私たちのボスは、バドゥーとの戦いが怖くて渋ってるんじゃないですよ。
ただ、本気で面倒くさがってるだけなんです。
その気になれば目の前のバドゥーの群れぐらいあっさりと全滅させられるような、一人で一国の軍隊に匹敵するような人なんですか。
ただですね、ついでに……
ついでにとか余談みたいに話すことじゃ無いですが、私いまとても嫌な予感がしています。
ええ、恐らくですがね、バドゥーを倒す前にハウゼルを先に渡そうとしたのには理由があるんですよ。
それもとびきりとんでもない理由が。
理由……想像するに、この剣に纏わる逸話絡みでしょうか?
これでも元とは言え公爵家の者です。
王家に纏わる伝承も、伝説という形ではなく真実としてある程度は知っています。
ハウゼル――
かつては邪竜を滅ぼしたほどの逸話を持ち、英雄王が聖戦で振るった剣が何故に魔剣などと呼ばれるようになったのか?
それはこの剣に宿る力が強制的に精霊達を支配し使役するモノだからだ。
使役という一点だけを見れば精霊魔術と酷似して力。
だが、精霊達と盟約を結び力を借りる精霊魔術とは違い、その気になれば剣の強制力で消滅するまで精霊達を酷使出来る呪われた剣。
まさに対極、そう言っても差し支えない力を持っているからだ。
聖戦でその大半の力が失われたと伝わっていますが、精霊と対成す我らアールヴにとってハウゼルは負の象徴そのものだ。
そんな忌むべき力を宿した魔剣が何故アールヴの王家に伝わり真逆とも言える至宝と呼ばれるに至ったのか。
それは王からの下賜。
そう、この世で最も偉大なる英雄王からの御下賜品だったからだ。
アールヴにとっては忌むべき剣だが逆を言えばこの剣の力を悪意を持って使わない、精霊に対して最も誠実に向き合える種族だからこそ与えられたのだ。
と、まずは知識武装で軽いジャブを打ちましたですが……
この魔剣、私の記憶違いでしょうか?
どえらい力を放っています。
あのサラシ、恐らく封印帯だったのでしょうね。
ええ、ハッキリと見えますよ。
封印帯から解き放たれたことで溢れ出している莫大な魔素の流れが。
……
…………
………………
さっきからバドゥーが変なざわつき方していますが、ハウゼルが放つ魔力のせいで恐慌状態に陥っていませんか?
……何でしょうか?
気のせいですが、バドゥーの視線が全て私に、というかハウゼルを持つ私に集まっている気がします。
テクテクテク……
右に一歩二歩三歩進んでバドゥーと熱視線。
……てくてくてく
左に一歩二歩三歩進んでバドゥーがピキリ顔。
「ば、ばあぁあぁぁぁ!! バドゥーが睨んでます! 殺る気満々です!!」
「チョロチョロ歩いてるからだろ」
「嘘です!」
「大人しくしてないから狙われるのよ」
「ダダダ、ダリア殿も分かってて言ってます!」
ダメだ、この二人。
混ぜたら危険を地で行く二人でした!
く……
長命ゆえの刺激に慣れて暇を持てあましたアールヴの熟成された性格の悪さと、闇深い腹黒ショタが合わさるとこんなに危険だったとは……
「お前、いま止めどなく失礼なこと考えてるだろ」
「至極まっとうな絶望だと思います!」
「あー……」
アルフォンス様が気怠そうに深いため息を吐きガシガシと頭を掻き毟る。
「そんな面倒臭そうな反応しないでください。私の訴えは至極まっとうだと思いますよ?」
「や、お前が臆病なのは知っている」
「改めて念押ししなくても、私は紛うこと無き臆病者です」
「自ら断言されるんですね」
「コイツはどんなときでも出来無い事は出来ない、苦手なモノは苦手と言えるヤツだよ」
「どんな時でも?」
「ああ、どんな時でもだ。意外と頑固だぞ」
「……なるほど、ですがそれは騎士だったら上司の命令に背く使えない騎士というレッテルを貼られませんか?」
辛辣な言葉だな……
だけど、それはまさに私がオルガン家に居たときに貼られたレッテルそのものだ。
使えない、無能、オルガン家の汚点……
「否定はしないよ」
…………ッ。
「戦場で個の意見を主張されたら、これ以上迷惑なモノは無い。だけどコイツは……だからこそ信頼出来る」
「へ?」
「何を惚けてる」
「だって、だからこそ信頼出来るって言うから」
「ふん、ただ上司の命令だけ聞いて戦うだけなら指揮権の無い下級騎士や下級軍人で十分だ。ただ上役の顔色伺って頷くだけの副官なら蹴り飛ばしてるよ」
「ん……えへへ」
「ふ~ん」
思わず頬が緩む私に、またもおもちゃを見つけた猫のような笑みを浮かべるダリア殿。
混ぜるな危険――
そんな言葉が脳裏をよぎった時だった。
「ま、そう言うわけで」
嫌な予感が爆発した。
「取り敢えずぶっつけ本番だ。大丈夫、その剣とお前ならあれぐらいサクッと倒せるから」
私がつい先ほど気軽に吐いた言葉を、
トン……
という軽い音色と衝撃と共に返されたのだった。
前枠と後枠のネタを考える暇があれば推敲と更新をせいよという話ですよね、テヘ(ฅωฅ`)
今年も成長の無さそうな作者ですが、何卒よろしくお願い致します。






