アルトリアの王、若き天才の覚悟を知る
抱腹絶倒のギャグ回です (´・ω・`)
「ふう……」
思わず声に出ていたため息。
そりゃため息も出ますよ。
まさかファフナが女になるとは。
まぁ、逆を言えば王族の正統な血統の証明。もし私の身に何かあればファフナが女王になれば良いとも言えますが……
それにしてもあのアホの子全開な娘がファフナ?
……いくら性転換した直後だからとしても、アレはどうなんでしょうか。
「入るぞ」
「は?」
問答無用で扉を開けて入ってきたのは、ほんの数分前に部屋を出たアルフォンス君だった。
「入るなとは言いませんが、せめて入室の許可を出してから入って下さい」
「どうせ頭を抱えてて声なんか聞こえないと思ったから礼儀は省かせてもらった」
「礼儀を省く許可を出すのは私です。まぁこの部屋に私しか居ないことを知ったうえでやってるんでしょうけど」
「そう言うことだ」
「それで、何かありましたか? もうすでにお腹一杯になるお話を聞かされた後ですが」
「エルダリア・ファン・ラーダベルト改め、エルダリア・ファン・ラーダベルト・アルトリア陛下」
空気が静かに冷えていく。
私をフルネームで呼んだ言う事は、これから始まるのはそう言う話だという事だ。
「我がアルトリア国影の軍師にして将軍たるアルフォンスよ。許可します、話を続けなさい」
「は……衛士アルフォンスとして与えられた獣王国民の護送任務を解任して頂きたく意見具申いたします」
「その任務は貴方からの希望だったはず。それを翻すとは何か特変がありましたか?」
「その前に一つ報告があります」
「許可します。続けなさい」
「衛士ファフナですが、恐らく【超越せし支配者】となった、或いはそれに準ずる力を手に入れたと思われます」
「【超越せし支配者】……」
それはどこかで聞いた言葉だ。
……どこだったか。
あれは、たし――
「ッ! オ、【超越せし支配者】!? 本当ですかそれは! 冗談では許されませんよ!!」
思い、出した……
確かその名は戦史の中に僅かに出てくる記実。
数多の英雄がその強大な力の前に散っていった、らしい……
「冗談で口にするような事で無い事は百も承知です。その上で確信を抱き報告させて頂きました」
「なるほど……ではアルフォンス、仮にそれが事実としたなら貴方はどうしますか?」
「事実は事実として伝えた、それだけです」
「それだけ?」
「アレは私の大切な部下です。誰かが害するというのなら、全身全霊を以て守ります」
「それが誰か、であっても?」
「誰かであってもです。全身全霊、全てをかけて守ります」
それは揺るぎない決意の言葉。
どこか冷めたような、一線を引いていた貴方にそこまで言わせるとは。
ファフナのおかげなのか、この子自身が変わろうとしているのか……
いや、両方なのでしょうね。
とは言え、です。
「貴方の思いは分かりました。ですが私は為政者でこの国のトップに立つ者です。貴方の感情だけで善し悪しを決めることは出来ません」
「もちろんです。それを理解した上で上申しているのです」
「では、その理由を述べなさい」
「我が部下ファフナがその身に宿した力は【超越せし支配者】クラスの可能性はあれど、何より特筆すべきはその属性です」
「特筆すべき属性? それはこの国や民にとって有益ないし必要となる、そう判断するに値する答えがあるのですね」
一瞬、それは一瞬だった。
アルフォンス君は目を閉じ天を仰ぐと、ギチリと鈍い音が聞こえてくるほど拳を握りしめ、そして私を見つめてきた。
「ここからは過分に私の憶測が入ります」
「憶測の話ですか?」
「ですが、それは限りなく真実に近い憶測だと確信しております」
「憶測なのに確信、ですか。まるで言葉遊びにしか聞こえませんよ」
「そう足るに至る事実が多すぎるのです。そして、ここから先は恐れながらエルダリア・ファン・ラーダベルト・アルトリア陛下、陛下自身への覚悟に繋がる話にもなります」
その双眸に宿すはまるで悠久の時を生きてきた老竜のごとき知性。
「私の覚悟ですか」
「ファフナが身に宿した力、それは時干渉能力です」
「時干渉!? ま、まさか禁忌とされる能力を宿したというのですか!!」
それは、起きたはずの事象を消し去り、これから起きるだろうことを歪める力……
「もしそれが事実、いや、万に一つの可能性でもあるのなら――」
「エルダリア・ファン・ラーダベルト・アルトリア陛下、私はすでに申し上げました。誰かがアレを害するつもりであれば、誰が相手であろうと全身全霊で守ると。私は喩え全てを敵に回すとしても、アレの味方であることを貫きます」
刹那、部屋の温度が三度は低下した、気がした。
読者様、お読み頂きありがとうございます!
それでは次回、近いうちにお会い致しましょう!!(´∀`*)ノシ マタネ






