衛士ファフナ、失われた時の真実に触れる
シリアスとコメディの二刀流でメジャー目指します。
ところで道内では二頭流と書かれた某政党のポスターを見ますが、運転中チラ見した瞬間に高〇名人がヅラかぶっちょる!(๑•̀д•́๑)キリッ
と思ったのは秘密中の秘密です。
「それでは今度こそ真面目な話にしましょう」
「それはこっちの台詞だ」
「す、すいませんでした……」
うぅぅ、色欲に負けて暴走してしまいました……
幸い――
幸いと言って良いのか分かりませんが、すぐに私が正気に戻ってアル君を渋々離した訳ですが……
「なんか自分の手柄みたいな感じで事が収まったみたいな顔をしているが、」
「わーわー、全部貴方のおかげでぅ! 目を覚ましてくれてありがとうございました!!」
ええ、アル君の冷水魔術をぶつけられたことで正気を戻した訳です。
「冷たかったです」
「誰のせいだ?」
「冷水魔術だけなら、貴方のせいかと」
「経緯を飛ばすな」
「はい、私のせいです」
何とも尋問みたいな会話。
つい先ほどまでの甘々な時間が嘘みたいです。
「何だかさっきよりも極低温な冷水魔術を乱射したくなってきたなぁ」
「わーわー冗談です、無差別テロ反対! 甘々な時間とか思っても無いです。私が一方的にアル君に発情しただけです!!」
「アル君ねぇ……」
「あうぅぅ……馴れ馴れしく呼んで申し訳ございません」
「良いさ、少なくとも時を遡行する前はそう呼ばれるくらいの仲ではあったんだろ?」
「……はいっ!」
「何だ、今の間は?」
「気のせいです!」
「……そうか」
「はい!」
力一杯嘘を吐いてしまった。
……ま、失われた時間軸の出来事ですから、ある意味時効ですよね!
「何だその開き直った笑顔は」
「気のせいです!」
「……そうだな、これ以上はさっきと同じ繰り返しになりそうだし話を戻そう。取り敢えず時の遡行前に起きた流れを時系列で教えてくれ。あ、内容は掻い摘まんで大まかな出来事だけで良い」
「そんな説明で良いのですか?」
「ああ、大きな出来事があれば説明はしてもらうがな」
「ではざっと起きた流れを説明します。ただ、正直に言ってしまえば殆どが大きな出来事でしたから、掻い摘まみようもないのですが」
「ほとんど?」
「はい、列車旅を始めた初日からずっと襲われ続けました」
私の言葉に、アル君が小さな唸り声を上げ思案顔になった。
「えっと……」
「ああ、続けてくれ」
「は、はい。まず初日に大渓谷で列車強盗に襲われました」
「初日? 時間は?」
「初日です。時刻は日没を迎えて間もなくです。確か渓谷で強風が吹き荒れていると言うことで、停車している最中に事が起こりました」
「渓谷で停車ねぇ……あの【乞食の山猿】が居る渓谷で一夜とは。到底まともな判断とは――」
「あっ!」
「おお、なんだ? 何か思い出したのか?」
「重要なことを忘れていました!」
「それは?」
「はい! アルトリアを離れ変わりゆく景色を車窓から眺める貴方の姿が男だったときからとってもとっても可愛いなと思っていました! 思っていました!! 思ってたんです!! トリャーッ!!」
「マッ〇ルスパークッ!!」
「ぐぼっ!!」
「お前は本当に話す気があるのか!?」
「す、すいませんでした……でも、一言良いですか?」
「なんだ?」
「発情したって良いじゃ無いか、だって、そこにアル君いるんだもの!!」
「何とも情緒の無い辞世の句だったな」
「あ、トドメは勘弁して下さい!! ちゃんとマジメに話しますから!!」
私の必死の懇願に、ゆっくりとため息を吐き出す。
「そうだな、この技は身体に負担も大きいし、ここまでにしておくか」
「そうです、それが良いです!」
「疲れた身体で、血溜まりと肉片の処理も面倒だしな」
「ヒュッ……そうですね」
返答する瞬間、変な息が漏れました!
だって、真顔でとんでもないことサラッと言ってくれやがるんですもの!!
「で?」
「はい、真面目に話します!」
「ボクは最初からそれを求めてたはずだが?」
「あー、もちろん分かっています、理解してます!! ただ、真面目に話しいたつもりが貴方の匂いを嗅いでいると、なんか変なスイッチが」
「鼻でも摘まんでろ」
「……うぅ」
何という塩対応。
けんもほろろとはこのことか。
まぁ、話の腰を折りまくったのは私なんですけどね。
「取り敢えず初日から襲われた、それで間違い無いんだな」
「はい」
「敵は【乞食の山猿】か?」
「あ、いえそれは分かりません」
「分からない?」
「襲ってきた敵は途中で自爆しました」
「ゼネシオンの子飼いとはいえ山賊風情が自害とは考えられんがな」
「あ、違います。自害の意味での自爆では無く、正確に言うなら自滅です」
「自滅?」
「自分の能力を扱いきれてなかったんです」
「扱いきれて……いや、そもそも能力だと? 魔術や剣術の類いではないんだな?」
「パッと見た感じは魔術の類いのようでしたが、それとは違う感じです」
「多様性のある魔術とは違う特殊性に特化した能力、それであってるか?」
「その通りです。風に属する力だとは思うのですが、音を消すだけの者や、属性不明な鏡を操りそれを視力と直接結びつけたような力を操る者もいました」
「なるほど……ボクはお前達アールヴ誕生の経緯を話したと聞いたが、【移植者】の話はしたか?」
「【移植者】という単語は聞いてませんが、能力を複製して与える技術があるとは聞きました」
ふむ、と小さく唸り、腰掛けていた椅子の背もたれに深くもたれかかる。
気怠げに座り前髪をボリボリとかく姿は、心底疲れ切った表情にも見える。
「お前にそこまで話していると言うことは、その時間軸でのボクは敵の正体に対して確信を持っていたってことだろうな」
「そんな雰囲気でした」
「襲撃犯は【移植者】をとなった者。なぁ、列車の襲撃はそれ以降もあったのか?」
「列車での襲撃はそれ一回だけです」
「そうか、なら町に着いてから襲撃があったのか?」
「いえ、列車自体がその襲撃ですでにブレーキを破壊されていまして、私たちは切り離した列車から降りた後は徒歩……まぁ徒歩とは言っても風霊王様の力をお借りしたの旅でしたが」
「じゃあ、道中でも襲われたんだな」
「そうですね」
「……襲撃した連中はボク達の行動を読んでいたってことだな」
「ッ! ま、まさか……あ、いや、でも」
「どうした?」
「行く先々で常に先回りされているかのように遭遇しました」
「そうか……」
それだけを呟くと深いため息をついた。
その双眸には刹那深い憂いが宿り、そして全て気が付いたと言いたげに揺れていた。
「ファフナ」
「は、はい!」
「最後の質問だ。答えられないなら答えなくても良い」
「どうしたんですか、そんな似合わない気遣いなんて」
「……言うね、お前も」
「少しは言わせてください」
「まぁ良いさ。それぐらいが相棒としてちょうど良い。あ、相棒だからな、伴侶じゃ無いぞ。あ・い・ぼ・う、だぞ」
「わかってますそんな念を押さなくても! ようは、将来は分からないと言うことですよね!」
「違う! いや、やめよう。このままだとさっきの二の舞になるのは目に見えている」
「ちっ」
「舌打ちすんなや」
「は~い……」
「不服そうだがとりあえず話は戻す。答えられなければ答えなくても良い。ただ、一応の確認だ。お前が突然使えるようになった時干渉能力についてだ」
ドクンと、その言葉に心臓が跳ねた。
「もしかしてお前自身も【移植者】か?」
「あ、あ……」
その質問に血の気が引いていくのが分かる。
「そうか……経緯は聞かない。ただ、ボクごときが言うことじゃないが、もう少し強くなれ。簡単に嘘もつけなくなるようじゃ、簡単に足をすくわれるぞ」
「努力します。あと、経緯は聞かないんですね」
「消え去った時間の出来事だ。触れない方が良いこともある。どうしても吐き出したくなったらその時に言え」
その声音はどこまでも優しくて泣きたくなった。
……自分の暴言で貴方を傷付けたのに。
「……【砕けた石のナイフ】です」
「お、おい、良いのか?」
僅かに頷いて同意を示す。
私は、私自身のつまらない好奇心で敵に捕まり――
「敵に捕まった私は【砕けた石のナイフ】で心臓を貫かれました」
助けに来てくれた貴方を――
「私は……」
「そんな泣きそうな顔で無理に話さなくても良い。って聞いたボクが言う台詞じゃ無いか」
「そんなこと、ありません……」
「ただ、【砕けた石のナイフ】か……良いか一度しか言わないから肝に銘じておけ」
「……はい」
「ファフナ、おそらくお前が手に入れた能力は根源の君主たる精霊皇の力だ」
「精霊皇、さま」
「どんな経緯があって奴らが精霊皇の力を奪ったかは分からないが、少なくとも時干渉能力である以上精霊皇の力で間違いないはずだ」
「で、ですが最も偉大なる精霊の長たる力を私なんかが使えるなんて思えません」
「……ファフナ、ボクの中に竜の力があるのは話したな」
「あ、先ほど少しお聞きしました」
「竜と言ってもそこらの亜竜や下位竜じゃない。ボクのは、いや、兄さんがその身に宿していた竜は、かつてこの世界に三頭しか存在しない竜種の一頭にして英雄王カーズの友だ」
「三頭……英雄王カーズ様……ッ! ま、まさか神喰らいの竜帝ブルーソウルだと言うのですか!?」
「たいそうな二つ名だが……ま、そうだな。ダ・ヴィンチが次元の穴を突き破り、この世にもたらした破滅の厄災。それが今ボクの中で眠っている力だ」
……信じられない。
あ、あり得るのか?
そんな超常を身に宿すなんてことが。
だ、だけど今思えば、あの失われた旅の最中も竜という単語にやけに反応していた。
最初は憧れかとも思ったが、どちらかと言えば竜という単語で同列に扱われることへの嫌悪のようなものを感じた。
まさか……本当に?
あり得ない。
だけど、くだらない虚言を言ったり虚勢を張ったりするような方では無いことは、私自身が一番分かっていることだ。
「信じられないよな」
「にわかには信じがたいです。ですが、私は貴方と旅をしました。濃密でしたが、今思えば数日に過ぎない旅です。それでも私が見た貴方はつまらない冗談を言うような方ではありませんでしたし、虚勢を張るような方でもありませんでした。だから、」
ゆっくりと息を吸い彼を見据える。
「私は、貴方の言葉を信じます。二度と、貴方を失わないように」
「あ、あぁ……うん、そうか……まぁ、あれだ」
「あれ?」
「さんきゅ」
何とも不器用な言葉が愛おしい。
そんな彼が少し照れたように頬を掻くと咳払いを一つして私を見据えた。
「ただ、これだけは言わせてくれ」
「は、はい」
「お前にとって思い出したくもないだろうが、この力を持つボクを殺したヤツがいる。ボクには不相応な力でまったく使いこなせちゃいないが、それでもこの地上でこの力に対抗しうるのは四大魔王だけだと思っていた」
「……で、では貴方を傷付けた敵は、魔王の一人」
「いや、違うな」
「違う?」
「おそらくだが、【移植者】の完成体」
「【移植者】の完成体?」
「かつて歴史の闇に葬られた英雄がいた。人の世で名を上げながらも時の権力に疎まれたそいつは偽英雄と呼ばれた」
「偽英雄」
「この国の南側の一部は、今は滅びたがかつて【常闇と白の王国】と呼ばれたフリーズリング王国が存在した。その国の王子の名がカルス……と言うことになっているが、その正体は英雄王カーズの細胞を基に生み出された偽英雄だった」
「あぁあぁぁぁ……」
「どうした?」
「いえ、貴方はどうしてそうやってすぐに爆弾発言を放り込んでくるんですか!」
「まぁ怒るな。本題はここからだ」
「まだ、本題じゃないんですね」
呻くように漏れた私の言葉に、ああとだけ応える。
「それまでの【移植者】は、常識レベルの者達にとっては脅威とはなり得ても、超英雄と呼ばれる者達の脅威にはなり得なかった。だが、そこに現れたのが偽英雄カルスだった」
「超英雄と呼ばれる者達の脅威になり得る存在と言うことですか」
「その通りだ。唯一の完成体にして、ダ・ヴィンチの死とともに潰えたはずの存在」
「それが、偽英雄カルス」
「そんな【移植者】の中で唯一の完成体だった偽英雄カルスのみが手に入れた称号が【超越せし支配者】だった」
「オ、【超越せし支配者】……また、随分と仰々しい称号ですね」
「ボクを殺せる【移植者】、となれば存在しないはずの【超越せし支配者】意外に有り得ないだろうな」
「あ、あの」
「どうした、言い難そうにして」
「あ、貴方を殺した男は……アルフレッド二世を名乗っていました」
「そうか」
僅かな言葉に確かな怒りが滲んでいた。
久しぶりに五千文字近く書きました!
ほめてほめて!
甘やかして!!(ฅ`ω´ฅ )
ふぅ……そろそろ前枠後枠に困りだしてきました。
どこからかネタをパク……げふんげふん、小話(小ネタ)を探してこようと思う今日この頃です。






