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終わりゆく世界に紡がれる魔導と剣の物語  作者: 夏目 空桜
第二部 第四章 降り止まぬ雨
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ファフナが見た世界・4

流石に展開がやり過ぎだとご近所に迷い込んだ人語を解するヌーに叱られたので真面目に書きました。


 と、言うことはですよ……

 私のこの落ち着かない感情は、本能に由来するモノ。

 天上の賢き者(スノトラ)などと大仰な種族名を僭称した私たち王系一族が、その実本能にさえ抗うことの出来ない蒙昧な血統だったなんて……

 いや、思い起こせば何もおかしな話じゃ無い。

 オルガン家のことを思い出してみろ。

 武門の出だからと言えば聞こえは良いが、血統と武力にのみ重きを置き力無き者を虐げる……

 それは貴族として本当に正しいあり方だったのか?

 同族すら虐げる姿は獣そのもの、いや、以下だったじゃないか。


「なぁ――」


 オルガン家の(あの)中に居たときは気が付きもしなかったが、今思えば高位貴族も元老院も浮世離れ何て言葉では済まされない異質さがあった。

 年老いた男の天上の賢き者(スノトラ)に特に見られる凶暴性を憂いて、王位継承権を女性のみに限定した古の英雄女王フィーダ様の判断は間違い無く英断だったわけだ……


「聞けっ!」

「ふぁっ!?」

「その……あれだ、キツい言い方に聞こえたなら先に謝る」

「へ? あ、いえ、暴走した私の責任でもありますから、はい」

「いや、事実としてボクの言い方が悪かった。別にお前たちスノトラのことを揶揄したかった訳じゃ無い。お前だって望まぬ形で本来保っていた性と異なる肉体になったんだ。感情と肉体の齟齬が生まれるのは仕方が無いことだ」


 今までの声音とは違う、どこか気遣ったような音色含んだ声音。

 ……そうでしたね。

 貴方は何時だってそう(・・)だった。時折こっちが引くレベルで傍若無人だったくせに、誰か()が傷付きそうなときは何時だって優しかった……

 ほんと、不器用な優し――

 って、これじゃDV男に依存する女性みたいじゃないですか!

 お、落ち着け……冷静になれ、こう言う時は確か素数を数えろとどこかの誰かが言っていたはず……

 それとアル君、やっぱり良い匂いします。

 

「いま、お前は慣れない性別の狭間で揺れ動いているんだろうが、それは本来持ち合わせた感受性とは違うもののはず」


 2,4,6,8,10,12,14,16,18……

 ほがーっ!

 これは素数じゃ無くて偶数です!!

 あ、あれ?

 あれれれ?

 そ、素数って何でしたっけ?

 ほわー!?

 い、いけません、考えがまとまらなくなってきました!!


「知識だけは基のままにあるが、本来は成長とともに培ってきた本能や理性で抑えられていた感性というものが、異性になることで未成熟になり衝動や欲求に流されやすくなるのは仕方が無いことだ」


 ふぁッ!?

 な、なんと言うことでしょうか!

 人間関係築くのクッソ不器用なくせに、私の為に(・・・・)一生懸命フォローしてくれている!!

 これは、これはもう……


 愛!?

 

 はぅっ……♡

 (しゅ)きッ♡♡♡


「マッス○スパークッ!!」

「グハッ!」

「安心せい、峰打ちじゃ」

「何故に時代舞台劇口調を……って、何するんですか!? こんなとんでも技、辻斬りみたいに放って良い技じゃありませんよ!」

「ハァハァ言いながら、いきなり飛びかかってくるからだ」

「え、私そんなことをしてましたか?」

「気が付いてなかったのかよ……」

「何だかいっぱい考え事をしていて、偶数まで数えたというのに、我を忘れるとは……」

「何故に偶数?」

「落ち着くために素数を数えようとしたら、テンパって偶数になっていました」

「ああ、そうか……頭脳の病気か。ならば仕方ない」

「ぐぬぬ……」


 ぐうの音も出ない罵倒をされた。


「とりあえずあれだな」

「あれ?」

「今回の旅にはお前も連れて行くつもりだったが、こんな状況になった以上お前はここに残れ」

「旅……あっ!」

「なんだよ、どうした?」

「この旅は……駄目です、絶対に行かせません!」

「行かせないって……ああ、そう言うことか。ボクが殺されたのは……」


 その言葉に、私は無言で頷く。

 それが、精一杯。

 あんな現実、口になんか出したくはない……


「自惚れるつもりは無いが、ボクの身に宿るのは兄さんから借り受けた竜の力だ」

「……竜の力?」

「これは言ってなかったか?」

「は、はい。今思えば、納得する話ですけど私は知らなかったです。その、たぶん教えてくれるつもりだったんだとは思います。思いますが、私が……」

「ああ、喧嘩したんだったな」


 優しい声音。

 そんな声音を聞いて、申し訳なさとやるせなさが込み上げてくる。

 この方が殺されたのは……

 私が原因だ。

 私があの時、あんな暴言を吐かなければ、興味本位で酒場を覗かなければ、私がむざむざとあの男に捕まらなければ、私が、私、が…………

 この方は殺されずに済んだんだ。

 時が巻き戻った?

 それが何だというのだ。

 この方が私の手の中で冷たくなっていたく……

 あの悪夢のような現実は決して消すことの出来ない私の罪だ。


「喧嘩、何て……あれは、私が、私が……ッ」


 口の中に鉄の味が広がる。

 いつの間にか噛み絞めていた唇。


「あー、そう言うことか。分かった分かった」


 自分の身に起こった結末を聞きながらも、憤るでも強張るでも無く実に気楽な口調。

 そして、


「あ……」


 私より少し小さな背の少年の手が私の頭を撫でた。


「まぁ、あれだ。どうせボクのことだ。お前のことを怒らせるだけの原因があったんだろ」

「そ、それは否定は、できないというか……」

「なら忘れるのも気にするのなってのも無理かも知れないがこれだけは言える」

「な、なん……ハァ……で、すか……」

オレ(・・)は自分の死も敗北も他人(ひと)のせいにはしない。ボクが敗れたならそれはオレ(・・)が弱かったからだ。誰のせいでもない。お前を傷付けたオレ(・・)も敗北したオレ(・・)も、結局は誰か(・・)に寄り添えなかったオレ(・・)自身の弱さが全ての原因だ。だから、あれだ」

「う……く……」

「ま、気にすんな」

「そんな優しい……言葉をかけられたら……しんぼうたまらん! とあーっ!!」

「ぬあっ!? し、しま……」

 

 理性?

 そんなモノ銀河の彼方にペイです!

 油断しているアル君をむんずと抱きしめる。


「くそ、油断した……」

「大丈夫です、性的なことはしませんから……たぶん」

「たぶんとか言ってんじゃねぇ、当たり前だろ! すでにこの時点で後から絶対に後悔するぞ!!」

「それがなんですか!!」

「はぁ?」

「後悔とは後から悔いるから後悔なんです。未来を見ることが出来ない今を生きる我々にはそれが後悔かどうか何て未来の自分に託せば良いのです!」

「アホかっ! それは未来を知るとかどうとかじゃ無く、ただ刹那的に生きているだけだ!! それとお前はキャラ変わりすぎだ!!」

「YES! アル君!! NO LIFE!!」

「この霊圧は、いったい……何故、母さんみたいな気配を感じ……あぁあぁぁぁ……」

「くんかくんかくんかくんか、アル君アル君、アル君にゃー!!」


 ……

 …………

 ………………


 このあといっぱい後悔しました。

 ごめんなさい。

鬼気迫るシリアス回でした

怖かったですねぇ、恐ろしかったですねぇ……

それでは次回をお楽しみ下さい、

さよなら さよなら さよなら(๑ÒωÓ๑)キリッ!!

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