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終わりゆく世界に紡がれる魔導と剣の物語  作者: 夏目 空桜
第二部 第四章 降り止まぬ雨
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ファフナが見た世界・3

前回はもしかしたら遊びすぎたかも知れないので、今回はシリアスです!

「何てコトしてくれるんですか!」

「お帰り」

「只今です。じゃあ無くてですね! 私落ちました、焼却炉! あと半刻ほど脱出遅れたら火葬されてました!」

「そうは言っても今無事な訳だし、仮定の話は意味が無いと思うんだ」

「うぅうぅぅぅ……酷い目に遭わせた張本人が雑にあつかいますぅぅぅ」


 簀巻きだったので芋虫状態で何とか脱出した焼却炉。

 何とか出て来たときにたまたまゴミ捨てをしていたダリアさんが驚きのあまり珍妙な悲鳴を上げさせてしまったのは申し訳なかったですが、悪いのはこの無邪気な邪悪生命体なんですと声を大にして言いたいです!


「なんか言ったか?」

「いえなにも」

「そうか」

「はいです」


 ……ふ、身に染みた負け犬根性ってのは、どうにも払拭出来なくて嫌になりますね。


「ファフナ」

「は、はい!」

「聞きたいんだが」

「スリーサイズは不明です! ただ、胸はその……期待薄です! アールヴですから」

「や、あのな……」

「アールヴですから!! 最近覚えたときめきはクソ小憎らしくて首の二三回は絞めてやりたくなった腹黒ショタが、実は溜まらなく可愛いという事実に気が付いた瞬間です!!」

「……お、おぉうぅぅ」


 何故か頭を抱えたままうずくまってしまった。

 なんたる空きだらけな姿。

 襲うなら今ですか? 今でしょ!

 レッツくんかくんかタイ――


「ファフナ、今から少し真面目な話をするが良いか」

「私はここ近年ないくらいにマジメですが!」

「兄さんから教わった技に――」

「あ、ごめんなさいです! 今からファフナ、かつて覚えが無い位にマジメになりますです!!」


 フスーッ!

 と鼻から息を漏らして、マジメをアッピルします!

 だって、今のアル君、洒落にならない位にヒリついた空気纏ってるんですもの……


「ボクはお前達アールヴがどのように誕生したか……いや、もっと言うなら魔獣の誕生や、魔物達が人間やアールヴ達と交配出来る理由を話したことはあるか?」

「教えて頂きました。旧世界の人間が過酷な環境を生き残る為に動物実験を繰り返した結果が魔物であり、その先に誕生したのがアールヴだと」

「その通りだ。お前達は良く言えば人類が生き残る為の最適解で強制的に誕生した種族だ。当然だがそれは自然の摂理に反する進化な訳だが」


 一度聞かされてなければ叫び出したくなるような真実。

 どこか浮かれていた頭が静かに冷えていくのが分かる。

 

「別にお前達アールヴという種族を卑下しているつもりはない。誰もが生き残る為に選択をした末だからな。だが誤解を恐れずに言えば、それは時間をかけて進化してきた生命体の歪みといえる」


 実に耳の痛いことをハッキリと言ってくれる。

 そして、そのまま私に向かって指をさす。


「お前は元々は引っ込み思案だったな」

「その通りです。父や兄たちに怯えるように生きてきました」

「ボクも出会った頃のお前のキャラクターはそう言う印象だった。公爵家に居場所のなかったお前と大公家に居場所がなかったボク。かつての、いや本質的なボクとお前はよく似ていると思った」

「それって……私たちはお似合いってことですよね!」

「落ち着けいっ!」

「もげぅ」


 我知らず飛び付き、気が付いたら見えていた天井。

 ……どうやら、有無を言わさぬ早さでバックドロップを喰らいベッドの上に転がされたらしい。

 痛みの感じないバックドロップとか本当に器用ですね。

 それはそうと……

 ……ベッドの上ですか。

 …………ベッドの上ですよ。

 ええ、ベッドの上で二人寝転がっている訳です。

 

「おい、いまこのまま一足飛びに関係を進めてしまえとか思っていないよな?」

「おお、思ってません! 全然まったく、このままアル君の匂いを嗅ぎながら、ハァハァして、そのままいっそとか――」

「オーケーオーケーちょっと落ち」

「オーケーなんですね!?」

「そう言う意味じゃねぇ!!」

「ぬげぅ!?」


 あれれ?

 何故かほっぺたに布団がひっついて離れませぬ!?


「落ち着けと言っている」

「わ、わかりました、もう落ち着きますから、このアームロックを外して下さい!」

「もう話の腰を折らないと約束するか?」

「……極力頑張ります」

「極力かよ」

「理性では分かっているんです。本能がその理性を駆逐するんだからどうしようも無いんです!!」

「変なところで力説……いや、仕方が無くもあるか」

「何が仕方が無いかは分かりませんが、そう少しでも思って下さるならこのアームロック早く外して下さい!」

「痛みの無いようにかけたつもりだが?」

「痛みはまったくありません。ですがピクリとも動かないのに痛くないのが怖いんですよ。これちょっとでも力の方向性変えたらポッキリ逝くヤツですよね! それに何か少しでも自分で動こうとすると、足先まで電気が走ったみたいに痺れるんですが!」

「前に兄さんが魔猿にかけてたけど、あの魔猿ですらピクリとも動けなかったからな」

「魔猿をホールドする技って……」

「『このまま動けない状態を維持したら魔猿も改心するかなぁ』とか言って、五分後には魔猿がすすり泣いて十分位したら死んだ目で服従を訴えていたな」

「魔猿がそんな短時間で屈服するような技を私にかけないで下さい!」

「分かった分かった。反省したなら外してやる」


 やれやれとばかりに外されたアームロック。

 うぅ……黙ってれば痛くないんですよ。ええ、全然痛くないんですよ。でも、動いたら変な痺れが走るし、ちょっと力を入れられたらあっさり折れるのも分かるし……

 何て技を考えてくれやがるんですかね、アル君のお兄さんは!!


「で、反省はしてるんだよな」

「バッチリオーケー、パーフェクトに反省中です!」

「……何だかなぁ。言葉が軽いんだが、まぁそのくらいのノリの方が良いか。いいか、今のお前は動物で言うところの発情状態だ」

「む、動物扱いとは聞き捨てなりません。そんな良い匂いしている貴方が悪いんです!」

「見事な責任転換と言いたいところだが、お前の性転換はボクを助けた結果だと思えば強くも言えないところか」

「結果助けることは出来ずに、元の性別を無駄に捨てて時渡りをして帰ってきただけになってしまいましたが」

「それでもボクがお前の性転換の要因に違いは無いさ。だからこそあえて言うぞ。かつてアールヴという種を生み出す為に数千にも及ぶ様々な生命体の因子をお前達の始祖は取り込んだ。それがスノトラ、俗っぽく言えばハイエルフと呼ばれる種だがこの種の特徴は強力な強さを持つと同時にその特性に動物的特徴が表れることだ」

「動物的特徴と言うと獣の耳とか尻尾的な?」

「かつて――かつてと言っても数千年も昔の話だが、そういう特徴を持って生まれた者もいたらしい。長い時間の中でそういった特性はほとんど見なくなったが、それでもいくつか残った特性、あるいは習性とも言うべき特徴が残った」

「それはいったい?」

「今のお前だ」

「へ?」

「自分よりもより強い遺伝子を持つ者に強い性的興奮を覚えるらしい。それも血統血縁としてはより遠ければ遠いほどにその特性が顕著に表れると聞く」

「そ、そんな!」

「現代のスノトラはそういった本能の面は抑制的というか後退しているんだろうが、それでも今のお前のように何らかの特殊な事情で元の性から変質すれば本来の種としての本能を制御することは難しいはずだ」

「あ……」


 改めて言われてみれば、今の私のこの落ち着きの無さは……


「本能を無理に抑え込むのは難しいとは思うが、お前自身の感情がどこにあるのか冷静に受け止めることが出来てない状況だろ? ならば一度立ち止まるべきだとアドバイスはしておく」


 そんな言葉に、私は項垂れることしか出来なかった。

頭脳が焼け付くほどにシリアス回でした!!(ฅ`ω´ฅ)キリリ


……

…………

………………


シリアスでしたよね? ポソ……

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