衛士ファフナ、緩急って大事だよねって話
タイトルのまんまです
バカ回です
流し読みでもよかですたい
ただ、しばらく流し読みが続く予感(こう書くと大概そうじゃなくなるオイラクオリティ)
「あの、えっと……」
二人の視線に晒されながら、自分の胸元を見る。
無い、とは言いません。
まぁ憚り無く言うならささやか、と言うよりは若干ある方でしょうか?
リーヴァ様やラーダベルト陛下よりは確実にありますね、フンス!
……フンス?
「……? おねぇちゃん、何だか胸の辺りがムズムズするような気配を感じたけど、アルフォンス揉みたいの? 良いよ、気が済むまで甘えても」
「なんでボクがその飛躍した理論で辱めを受けねばならんのか」
わちゃわちゃとした空気感。
……そうか、そうだったんですね。
あはは、気が付いてませんでしたが、ここはこんな空気感だったんですよね。
「ん、どうした?」
「……なにかあった?」
「え?」
突然向けられた二人の視線。
その視線に促され、気が付けば溢れていた涙。
「あ、あの……ご、ごめんな、さい……」
「なぁ、自称おねぇちゃんよ」
「むぅ、自称じゃ無い……」
「二択をやる」
「……二択?」
「今すぐ部屋を出て行くのと窓からゴミのように捨てられるの、どっちが良いか選んでくれないか?」
「……おねぇちゃん痛いのは痛いから嫌なので、速やかにアルフォンスの部屋から出ます」
「ああ、悪いがそうしてくれ」
「……あ、でも」
「なんだ?」
「……もしラブラブして二人のおにんにんがコツンコツンする大変な事態になったら、おねぇちゃんは決して決して邪魔はしないので、部屋の隅でジックリねっとりと観察する許可を頂きたいのであります」
カラカラカラ……
無言で開け放たれた窓。
「さらば、おねぇちゃんはクールに去りやがります!」
ガチャ!
バタンッ!!
「凄い勢いで出て行きましたね……」
本能のおもむくままに暴走していたお腐れ様。
取り敢えず、あの人のことを気にするのは止めましょう。
色々とこんがらかっては居ますが、話さないといけないことがあるのだから。
「あの、それでお話が――」
話を切り出す私に、スッと指を一本立てて制する。
「ちょっと待て」
と彼は小声で囁くと、忍び足で扉に近づき
「風霊よ、我が呼び声に応え音を消せ」
何故風霊様を?
そんな疑問がよぎるそばで、無音で扉が開け放たれる。
「……わふわふ♪ わふわふ♪」
えっと、今私の目の前で起きていることをありのまま話します。
アルフォンス様が風霊様の力を借りて音を消し去り扉を開けると、開けた扉の向こうには廊下でお行儀良く正座した自称おねぇちゃんのリーヴァ様がコップの底を耳に当てて聞き耳を立てていた。
貴女アールヴですよね? コップを集音器に使ってまで何を聞きたいのですか?
と言うか、わふわふって何ですか?
あと、異常に興奮しすぎじゃありませんかね?
ええ、もうそれは最上級レベルの異常です。
何を言っているのか分からないと思いますが、私も何が起きているのか理性が理解を拒絶しています。
ただ、このお腐れ様が何に興奮しているのか……
恐らく私の頭がどうにかなりそうなことを妄想している、それだけは理解出来ました。
「なぁ、自称おねぇちゃん」
「むぅ、だから自称じゃ無くて、おねぇちゃんだと……ハッ! むむむ、何時の間に」
「何がむむむだ、何時の間にかでもねぇ」
「ぐぬぬ……」
心底悔しそうな歯ぎしり。
何が彼女をここまで駆り立てるのか……
知りたくも無い深い闇を見た瞬間だった。
そんな感じで私が頭痛の痛みに呻いていると、アルフォンス様は実にクールな笑みを浮かべる。
「あのさぁ、今すぐそこの窓から投げっぱなしジャーマン喰らうのと、破壊術式で目も当てられない惨状になるのとどっちがお好みかな?」
「おねぇちゃんは、第三の選択肢である【速やかなる逃亡】を選びます!」
……凄い勢いで走って言った。
あの人、普段はボーッとしているのに、腐り度がマシマシになると有り得ないほどぶっちぎりな身体能力を手に入れられるのですね。
そんな頭痛が痛い状況の中で、アルフォンス様の瞳が私を捕らえて放さない。
……え、あれ?
何ですかその目は?
たぶん、それって世間一般的には熱視線ってヤツですよね?
…………………………ハッ!
「あ、あの! あのッ!!」
「わっ! な、何だよ突然デカい声出して? って言うか、お前そんな大きな声出せ……おい、お前もしかして」
「あぁあぁぁ、そんな熱い視線を向けられましても、そ、その!」
「いや、だからな」
「私はイヤじゃなありません! ただ、そのですね!!」
「その意味でのイヤじゃないんだが……」
「で、ですからイヤじゃありませんってば! 私は男だった頃からアルフォンス様をお慕いしていました!」
「何か強烈なカミングアウトを聞いた気がするのだが」
「あ、勘違いしないで下さい。男の頃は男として憧れてたというか、お慕いしていま――」
「当て身ッ!!」
ビシッ!
と首の後ろから聞こえて来た音。
意識が遠のいて……
「呼ばれた気がして!」
「呼んでねぇ!」
「げぅっ!」
ドゴッ!
と、薄れゆく意識の中で聞こえた、鈍い打撃音と小動物を絞め殺したような呻き声。
「黙って喋らせとけばやべぇ方向に行きそうだと思った途端に湧いて出て来やがって……とりあえずこの不燃物はダスト・シュートから投げて、と。あとは取り敢えず、ファフナはベッドに寝かせて」
「ね、寝るんですか!? で、出来れば! 初めてはこんな雑な流れじゃ無くて、ですね」
「復活早ぇなぁちくしょう! もうちょっと気絶してろよッ!!」
「で、出来れば私としては最初は清い交際からを!」
「うるせぇよっ!!」
「え、清い方向じゃ無く、いっそ激しくですか!? そ、それはその、えっとですね! せ、責任を取って頂けるなら、がが、頑張ります!!」
「あ、あぁあぁぁ……可能性はあると思ったが、まさかこれほどとは……」
何故か深いため息をされたのでした。
展開の謎解きもせずに緩急の【緩】を優先しました。
ある意味で急でもありますが、まぁ、こんなもんですよ。
ええ、はい。
なんか、その……
ごめんなさい(¯ω¯;) ヌムム






