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終わりゆく世界に紡がれる魔導と剣の物語  作者: 夏目 空桜
第二部 第四章 降り止まぬ雨
223/266

衛士ファフナ、消滅……

「コイツやりやがったな」って声が聞こえて来そうです((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル

あと、決して水増しではござらぬとだけは天地神明とゴンザレスに誓わせていただきマッスル。



……ゴンザレスって誰ぞ??

 腕の中で生暖かく、そして静かに冷たくなっていく命。


「嫌です、こんな結末……望んでなんか……いない、です……」

「ぉ……ごふっ……」


 光が失われ黒ずんでいく瞳。

 ダメだ……このままでは、本当にこの人を失ってしまう。

 ……このままこの人を失えば、アルトリアは未来を失う。

 アルトリアの未来は永遠に闇に閉ざ……

 違うだろっ!

 アルトリア(・・・・・)が、じゃない。

 私がこの人を失うことに絶えらわけがないんだっ!


「…………い、命の精霊よ」


 ゆっくりと体温を失っていく手を握りしめながら、応えることなき精霊(・・・・・・・・・)に祈りを捧げる


「や……」


 ピクリと動き私の手を掴む、まるでセルロイド製の人形の手でも握っているかのような冷たく無機質な感触。

 焦点も合わず、何処を見ているのかも分からない。

 だが、だからこそわかる。

 この人が燃え尽きそうな命の中で、その全てを私に伝えようとしているのが。


「あ……あれ……は、違う……あ……」


 最早何も映さない瞳。

 必死に伝えようとする想いさえも言葉にはならない。

 言葉にはならない、けど……


「もう、良いですから……何も言わないでくだ、さい。いま、貴方を治しますから……」

「よ()…ほ、ほん……の……に、にぃ……返せば、おれは…………」


 土気色になりかすかに震える唇が伝えた想い。

 音が無くても分かる。

 それは強がり続けた、実に彼らしい想いだった。

兄から借りた力を返せば自分には何も無くなる、と。

 ……何も無くなれば、私の変わり果てた人生(・・・・・・・・)を守ることは出来ない、と。

 何処までも強がりすぎます。

 誰よりも強いくせに、どうしようもなく不器用で下手くそな生き方。

 生きたいって、そう願ったからお兄さんの手を取ったんですよね?

 親に捨てられ世間に蔑まれ憎しみに捕らわれたはずなのに、伸ばされた手を裏切れなかったから貴方は傷付く道を選ばなければならなかった優しい人。

 冷酷に見せながら悲しいほどに不器用な人情家…… 

 死なせるものか。

 この不器用で孤独な英雄を、絶対に死なせてなるものか。


 ――命の精霊よ、この身を贄と捧げます。生みし命の力、紡ぎし命の絆、古より現在(いま)を紡ぎ、現在(いま)より未来へと紡がれる命の唄を我に教え給え。命を紡ぐ奇跡の扉を我が前に開き給え――


 身体の中に満ちていく未知なる精霊の力。

 今まで一度たりとも私には触れることの出来なかった力。

 恐怖はある。むしろ恐怖しかない。

 それでも、この人を失う絶望に比べれば遙かにマシだ。


命の精霊(リヴルーラー)、その加護を!」


 優しくも力強い光が握りしめた手の中に生まれる。


「戻って来て下さい、貴方を待つ人がアルトリアには居ます。居るんです……」


 お願いです、お願い、だから……


 だけど……


 そんな願いもむなしく、私の手の中で力無く滑り落ちていく手のひら。

 生まれた淡い光が無情にも消え去る。


「うそ、だ……」


 慌てて握りなおした手は悲しいほどに何一つ反応を示そうともしない。


「アル、くん……アル、フォンス、様、い、嫌だ……違う、こんなのは間違いだ……あ、貴方が死ぬなんて、そんな……お、お願いですから、目を……」


 呼びかけに何も応えないままに、ガクリと力無く首がたれた。


「あ、あ……」


 視界が瞬く間に滲んだ。

 頭の奥底、どこだかも分からない場所が冷たく冷えて真っ白になる。

 いま、この方の(リーヴ)が、完全に消滅した……

 ああ、何て皮肉だろう……

 命の精霊王(リヴルーラー)の加護を得たことで、逆に貴方が本当に亡くなったことを()るなんて……


「死んだ者が生き返ることはない、それがこの世の理だ。仲間の為に慣れた(・・・)その身を贄に捧げたのは見事(こっけい)であったが、所詮悪あがき」

「きさ、ま……」

「さて、この世界で死んだ者は真なる世界へと旅立つらしいが……」

「何を訳の分からないことを口走っている!」

「意味など知る必要は無い。俺が与えた力も扱えぬ誤った血統種(アールヴ)も、或いは……」


 アルフレッド二世から異様な魔素が立ち上る。

 破壊されガレキまみれの城。

 天蓋から差し込む青い地球(つき)明かりが急激に影を帯びていく。


「つ、地球(つき)が……いったい、何を……」

「或いは……」


 地球(つき)明かりが消え深淵と化した夜空。

 そこに浮かぶ無数の星々に名状しがたい異様な輝きが生まれた。


「或いは……万に一つも無い可能性に過ぎないが、俺の脅威になり得る恐れがあるそのガキも。二度とだ、転生などで二度と復活出来ぬよう、ここでその魂ごと完全に破壊してやろう」


 アルフレッド二世の宣告。

 程なくして天空に瞬くそれらは死を纏った星へとなり果て、大地は憤怒の唸りとともに降り注いだ星々に蹂躙された。

 目の前で砕かれ離れていくあの人の手……


 ………………

 …………

 ……


『貴方のことを知っていたなら、こんなにも、信頼することは……私達が受け入れることは、無かったはずなのに……』


 それは、謝罪することも出来なかった後悔の言葉――


『聞きたくも無い真実に触れれば、それは不快な結果しか残らんってことさ』


 これは、いつの……? ああ、そうだ、ここから始まり、そして彼と喧嘩することになったんだ――


『そうだ……今に分かるさ。どんなに優れた身体能力であろうと、そんな優れたなどという常識の範囲程度の力じゃ覆すことなど出来ない、力の高みに居る我らが主ア――――』

『化け物? ボクが化け物だと? はは、ボクごときが化け物か。それは随分となまっちょろい(しあわせな)環境で生きてきたみたいだな』

風霊王よ(ルシャルーラ)この荒野で我に傅け(ヴァラスルオラン)

『獣人族は自分よりも強き者を認めより強き者に従う習性がある。獣が群れを作るときにボスを決めるそれと同じだ。まぁ、ヒト族にもそれに近い感性はあるがな。長いものに巻かれ……は、違うか? だが、この感覚はお前達アールヴ族もわかるはずだ。いや、アールヴ族こそその特性が多種族よりも顕著だと言える』

『だけど不思議に思ったことは無いか? 人間と獣人は見た目がまるで違うのに子を成すことが出来る』

『何もかもが常人の全て上を行く天才。誰もが生涯をかけて到達する境地に消しゴムで文字を消すような感覚で到達出来る天才。【災厄の天才】ダ・ヴィンチにとって地球という星は、全てが思い通りになる箱庭の中のような世界だった。そして、そんな地上で生きる人間達はヤツにとっては肥だめの中を這いずり回るウジ虫と代わらなかった』

『猫のしぶとさや執念深さから出来た諺らしいが、そんな猫すら殺すのが好奇心らしいぜ』

『そりゃそうさ。相手にするのが山賊だけなら何も悩む必要は無い。真に厄介なのはアルトリアとゼネシオンを戦わせて得する連中の存在だ』


 これは……

 ああ、これはこの旅での会話。

 これが、走馬灯というやつですか……


『ここは国内線の他に国際線も集合する駅ですからね。とは言っても、アルトリアは元々多種族国家ですが、以前はこんなふうに他の言語を生活には織り交ぜてなかったそうです』

『首都の駅ってのはずいぶんと賑やかだな。しかも共通語だけじゃなく、アールヴ語にドヴェルガー語か。ボクも知らない複数の言語でもアナウンスしているんだな』


 ………………

 …………

 ……























































































































「……おはよう」

「ん、ふぁあぁ……」


 それは、どこか甘ったるい音色を含んだ声とあの人の声――


「さて、気のせいですかね? ボクの視界の中に何故かリーヴァ様がいらっしゃるように見えるのですが」

「ふふ、これは幻覚……アルフォンスは今、私を求めるあまり夢の中で出会っている」

「なるほど。って、そんな分けないでしょう。こんな朝早くからどうしたんですか?」

「むぅ……アルフォンスの塩対応……おねぇちゃんは寂しい……」


 私は何を見せられているんだろうか?

 何故かアルフォンス隊長のベッドに忍び込み添い寝をしている魔導技師のリーヴァ――


「ア、アルフォンス……様」

「様はいらんと詰所で言ったぐぇ!」


 珍妙な呻き声を上げる。


「こら、アルフォンスの首が絞まってる。おねぇちゃん、腐のかほりがしないハグは推奨外……だれ?」

「ゲハ、ゴホ……まったく殺……」

「アルフォンス、女の子連れ込むの、おねぇちゃんまだ早いと思うの……」

「ボクがそんな真似するか……ん、ファフナか?」

「もちろんです、一体何があったんですか?」

「それはボクの台詞だ。お前こそ……」


 二人の視線が私の胸元へとうつる。


「お前、」

「ファフナ、」

「女だったっけ?」

「豊胸した?」


 二人から明後日の方を向いた質問が飛んできたのであった。


次回……

夢落ち!!■━⊂(ꐦ°᷄д°᷅)ノ彡 ガッ☆`Д´)ノグェ……


嘘です。

謎展開の謎解きです(なんのこっちゃ)←数話続きます。

そして、豊胸とはいったい!←最大みすてりぃ

謎解きです。


もう一度言います。

謎解きです。

……


そんなたいした謎でも無いな、うん。

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