アルフォンス、優しい家族
久しぶりにシャシャシャー! を書いた←なんのこっちゃ
「母さんが旅を続けてたのは父さんに会いたいからだろ」
「うん……」
「ボクだってそうだ。父さんに会いたい、会って、しこたま言ってやりたいことがある。あんたのせいで苦労したって、あんたのせいで大変だったって!」
「……うん」
「だけど、言ってやりたいことは文句ばかりだけど、それでも、会って、会って……クソッ! それで、それでもさ、あんたに会いたかったって言いたいのに、なんで母さんが諦めるなんて言うんだよ!」
「わかってるつもりだったんだ」
「わかってる?」
「うん、お父さんがこの世界で恨まれてるってこと」
「前に聞いたよ。父さんが発明した道具で帝国が出来たってこと」
「うん、でもね、ママ、わかっているつもりでしかなかった。世界が貴方のお父さん、あの人を恨む気持ちがどんなに根深かったのか」
「……それは」
兄さんの言葉はただ先細りそれ以上は続かなかった。
この優しい二人が探す男。
兄さんの父さんという人、その人の噂は一言で言えば恐ろしいほどに真逆のモノだった。
人間からは神のごとく謳われ、多種族からは悪として罵られる。
そして、世界は帝国が滅びて以降、ヒト種よりも多種族にあふれている。
結果、世界はアルフレッドという男を畏怖し憎んでいた。
その激情にさらされる度に、二人は、とりわけ母さんは傷付き唇を噛み締めるのを何度となく見てきた。
母さんだから、この人だからこそ、今まで笑顔で旦那さんを探し続けてこられたんだろう。
他の人間だったら、とっくに心が折れていたはずだ。
……これほど優しい人に愛された男。
兄さんのように優しい人の父親。
そんな人が本当に悪なのか?
そんな人がこれほどの恨みを買うような真似を本当にしたんだろうか?
わからない。
馬鹿な俺には母さんがアルフレッドという人をどれほど愛しているのかはわかっても、そんな憎しみの中にさらされる理由がわからなかった。
ただ、兄さんは母さんに寄り添い傷付き。
母さんは、恨みの連鎖の中で傷付いた。
それだけしか知らない……
二人に愛情を貰いながら、俺は、二人を何一つ支えることが出来ない……
「あ、でもね、別にママね、心が折れて旅を止めるわけじゃ無いよ」
「じゃあ、なんで止めるんだよ」
「パパアルくんはね、馬鹿強くて非常識が服着てるみたいな人だったけど」
「え? 母さんがそれ言うの?」
「どういう意味かな?」
「気にするなよ」
「むぅ、とにもね、パパアルくんは伝説の英雄カーズさんに後継者と認められる位にすごい強い人だったんだよ」
「初耳……」
「言ってなかったけ?」
「……まぁ、いいや。それで、そんな強い父さんだから探さなくてもどこかで生きてるって言いたいの?」
「違う! あのね、すごく強くて、わたしにもすごく優しい人だったけど、優しすぎて、生き方が下手で、自分が傷付くことばかりの人だった。だからね、きっと今のこの世界を見たら、すごく傷付くと思う」
「傷付く……」
「うん。まぁ恨まれるのは半分自業自得なところもなきにしもあらずというか、それでも同情すべきところもあるというか、ぶっちゃけ私会いたさに寂しくて暴走した結果というか」
「母親の惚気キツいッス」
「シャシャシャー! キツいとか言うな!」
「あんたは腹を空かせた猫か何かか? ほれ、それでどうしたって? 続きプリーズ」
「うぅ、息子ちゃんが塩だよー。どうしてこんなにもあいつに性格が似たかなぁ」
「早く言えよ。言わないなら、問答無用で旅を続けるぞ! ほら、5、4、3、2……」
「あ、あ、待って待って。カウントダウンストップだよ! あ、あのね、世界は戦争の爪痕があるんだよ」
「うん? ああ、そうだな、それで」
「えっと、だから、ね。あれ、何言いたかったんだっけ?」
「知らん」
「えっと、えっと……あ、そうそう、ママね、パパの帰ってくる場所を作りたいの」
「帰ってくる場所?」
「うん、きっとすぐには世界中の恨みなんて消えない。でもね、パパアルくんがこの世にもたらした物は破壊や恨みばかりじゃ無い。たくさんの子供達の未来を作ったんだって、少しでも心の支えになる場所を作ってあげたいな~って……えっと、なんで頭抱えてるの?」
「いや、孤児院でも作る気かなって」
「正解!」
「ああぁあぁぁぁぁ……」
俺は兄さんが変な声を上げて崩れ落ちるのを初めて見た。
かき氷がすんばらしく美味しい日が続いています。
体調管理にはどうかお気を付けくださいまし。(。>ω<。)ノ マタネ






