表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終わりゆく世界に紡がれる魔導と剣の物語  作者: 夏目 空桜
第二部 第四章 降り止まぬ雨
215/266

アルフォンス、刻んだ記憶

難産な回でした

そして、あと3話ほどアルフォンス視点(こう予告すると、数話延びるのが何時ものパターン)続きます。


 たぶん、うまれたときになまえをもらったきがする。

 でも、だれもなまえでよんでくれたことはない。

 いらないこだって、

 うまれてきちゃだめなこだって、

 ずっとそうやっていわれてきた。


 ことばもしゃべれないクズだって……

 なにひとつまともにできないごみだって……


 それが、あたりまえだった。


 ゆりかごからみえるそらがあおくてもはいいろでも、どうでもよかった。

 ゆびさきひとつうごかせず、ただよこになるだけ。

 どうせ、さいごはほんとうのゴミのみたいにすてられる……


 しばらくして、どこかでちいさななきごえがきこえた。


「生まれたぞ! 我がルゼルヴァリア大公家待望の第一子(・・・)だ!!」


 そんな――(よろこび)にみちたこえ。

 そして、おぼえているのは、そのひのばんにひっそりとすてられたこと。

 なにも、なにひとつとしておもいだしたくないまいにちだった。


「何がやりたい?」

「なひも……」

「本当か? 遠慮するな、無理なモノは無理って言うから、言うだけ言ってみろ」

「いひの?」

「言っただろ、遠慮するなって。アルフォンス、ボクはお前の兄ちゃんだ、弟のやりたいことくらい叶えてやる」

「あ、あのね、ひっぱい、ひっはい、そとをみたひ」

「外?」

「うん、そらとか、そやとか、うみとか……うひと……か、あと、やはみたい……だめ?」

「何言ってるんだ、お安い御用さ。空に海に山、どうせ父さんを探して世界中旅してるんだ。アルフォンス、お前の願いは全部叶えてやる」


 そういって、わらってくれた兄さん。

 だれよりもやさしいひとだった。

そして、約束してくれたとおり、世界中をたびしてくれた。

 海をみた。

 生まれた国の海はきらいだったけど、兄さんと母さんが見せてくれた海はだいすきだった。


「なひ、かいてるの?」

「ん? ああ、せっかく来たことの無い国に来たんだ。記憶にだけじゃ無く、地図として残しておくんだ」

「ちふ?」

「ああ、地図ってのは何にも勝る宝だからな」

「たかあ?」

「ああ、そこに生きる人達の生活を知れる。歴史も学べる。何より、万が一の時には下手な武器よりも強い武器になるんだ」

「ちふがぶき?」

「ああ、戦いってのは武力だけ決まるもんじゃないんだ。個でも多でも、地形を生かして戦えば力の差をいくらでも埋めることが出来る」

「ふぉんあにすごひの?」

「ああ、だからアルフォンス、せっかく見て回るならお前も一緒に覚えるんだ」

「おぼへ、れるふぁな?」

「覚えれるさ。だってお前はボクの自慢の弟なんだからな」


 何一つ、まともに出来なかったおれに、兄さんはすごくやさしかった。

 母さんも物おぼえの悪い俺にあきれること無く、毎日毎日優しく言葉を教えてくれた。 陽が昇れば、兄さんは俺を抱き上げ目新しい世界を一杯見せてくれた。

 陽が落ちると、母さんが物語を読み聞かせてくれた。

 俺は、兄さんと母さんの元で、やっと人間になれた気がした。


 そんな穏やかに日々が流れていたある日、兄さんと母さんが珍しく喧嘩している声が聞こえた。


息子ちゃん(アルくん)、ママね、そろそろ旅を止めようと思うの」

「何でさ。まだ、探してないところはいくらでもあるじゃん!」

「そうなんだけどね……そう、なんだけど……さ」


 母さんが、行方不明になっている旦那さんに会いたがってるのは知っている。


『再会したら? そんなの……うふふ、そんなの決まってるじゃ無い。子供の出産前に行方不明なったような無責任男には、三十分耐久頭突きの刑とマッスルスパークをぶちかます。倒れたらマウントポジションから高速で顔面に拳を叩き込む!』


 妖艶な笑みで殺意バリバリの物騒なことを言っていたけど、母さんが旦那さんに会いたがってたのは本当だった。

 思い出話をしてくれたときも、いつだって幸せそうに笑っていた。


 ……だから、母さんが旅を止めると切り出したことに、兄さんは納得出来ずに声を荒げた。

北も南も灼熱地獄

雨やら台風やらで大変な八月ですが、お身体に気を付けてお過ごし頂ければと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ