衛士ファフナ、怒り
短い……
え?
それは夏が連れてきた幻さ……
「アルフレッド……まさか、あ……はは、まさか、そんな……魔導王アルフレッド、ですか……?」
「ああ……それが兄さんの父親だ」
背筋に冷たいモノが流れ落ちて、ガクガクと膝が震えた。
魔導王、悪夢の王、厄災の王、そんな歪な二つ名を欲しいままにした地上の最悪。
アールヴの国を滅ぼし、世界の秩序を歪めた存在……
「……ほ、本当なんですか?」
「嘘でこんなこと言わないさ」
「……アルフレッドは、アルフレッドは! 私達アールヴの怨敵ですよ!」
「……知っている」
「五王国同盟が、かつては敵対しながらもその因縁を呑み込み同盟が成立したのは何故か! 貴方は知らないのですか!!」
「……知っているさ」
「だったら! だったら……」
「それでも俺は……俺は、兄さんのために全てをかける」
「……ッ、それは貴方が……貴方が、ヒト種だからですか?」
「関係ないよ。記憶が確かならこの身は生粋のヒト種じゃ無いが、そんなことはどうだって良い。俺に世界の広さを、人の温もりを、命を伝え紡ぐ意味を教えてくれたのが兄さんと母さんだったから。それ以上の理由は必要ない」
「……ッ!」
ガンッ!
鈍い音と、酷い痛みが拳槌に宿る。
気が付けば怒りにまかせて街路樹を殴っていた。
分かっていたはずだった。
この人が、どれほど兄と呼ぶ男を敬愛していたのかを。
この人にとっての世界が、閉じられていたはずの世界を開いたのが、その男に他ならいことぐらい話を聞いていれば分かるはずだった……
「はは、は……なんだよ、それ。卵を割って生まれた雛鳥が、始めて見たモノを親鳥と思うのと同じじゃないですか……」
「…………」
吐き捨てるように毒づいた言葉にも何も言い返しては来ない。
「同じじゃないかって言ってんだよ! 答えろよ、そうやってお前はお前を信用する私達を! アルフレッドに為す術無く蹂躙された惨めなアールヴ達を嘲笑っていたのかよ!」
「ッ! ………………ちがう…………そうじゃ、そうじゃ……な……」
「だったら、なんで! なんで……アールヴ達に手を貸したんだよ!! 何で未来を夢見させたんだよッ! なんでアルフレッドの味方がアールヴ達に生きる道を与えたんだよッ!! 貴方がアルフレッドに連なる一味だと知っていたなら、知っていたなら、こんな……こんな……」
やめろ、やめるんだ……ナッシュ・オルガン!!!
やめるんだ、やめて、くれ……
これ以上は、ただの、八つ当たりだ……
知っているだろ!
知っているはずなんだ!!
彼が、私達の為に命を張ってくれた……ことを……
だけど、私の口から溢れ出す言葉は、
まるで母を殺された子が悪を恨みたいに――
彼を、
アールヴを守ってくれた彼に――
私に、命を与えてくれた彼に――
「貴方のことを知っていたなら、こんなにも、信頼することは……私達が受け入れることは、無かったはずなのに……」
ただ、酷い呪いを放っていた……
前作の主人公を憎悪の対象にして落とす展開……
読者様に受け入れられるかぶっちゃけ不安で不安で、夜も眠れず仕事中に寝ております。
そんなチキンな作者を哀れむ人間らしい心が少しでもあるなら、ちょっぴりで良いから応援とかポイントとか入れてくれぃ、こんちきしょう!!←夏が暑さを連れてきたせいで錯乱気味






