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終わりゆく世界に紡がれる魔導と剣の物語  作者: 夏目 空桜
第二部 第三章 アルトリアの未来
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衛士ファフナ、早くも疲弊する

あちぃですね

更新が遅いのは、夏が連れてきたこの熱気が原因です

決して、毎晩浴びるように酒を飲んで推敲出来なくなっている訳ではありません。

ほんとうだよ?

 正直言って、居心地が悪いです。

 ええ、襲撃者騒動(あれ)から必要最低限の会話以外殆どが沈黙なんですよ。

 別に、気にしてないと言えばウソになります。

 ただ、彼女、いえ彼が悪党であったのは事実で。

 相手の顔半分が物理的に消し飛ぶような攻撃はやり過ぎだとは思いますが、約束通り殺さないではくれました。

 重罪を犯した犯罪者を引き渡すことも出来ない状況で、殺すなというのは甘ったるい考え方だというのは分かっています。

 ただ、やり方に納得がいかない。

 そう思っている私が何処かに居て、感情論で彼の行いを拒絶、否定している。

 ……甘ったるいどころじゃ無いですね。

 これではまるで聞き分けの無いガキそのものだ。


「……い、お……おい、無視か難聴かどっちだ?」

「……あ、すいません。ちょっと考え事をしていました」

「そうか、耳医者は探さなくて良さそうだな」

「難聴じゃ無いです」

「そうか、ならこれを着ろ」

「わっ!」


 そして相変わらずの投げ渡し。


「だから、物を投げて渡す癖を直して下さい」

「良い訓練になるだろ?」

「なんの訓練ですか、まったく……それはそうと、この白いヒラヒラした布、服? これは何ですか?」

「服だ」

「服は分かってますよ」

「ルゼルヴァリアは自国の貴族と許可証を持った商人、あとは神職の人間だけがわりと簡単に首都に入れるんだが、それ以外はえげつなく時間がかかる」

「戦時下でもないのに通行を規制しているんですか?」


 大陸鉄道の開業以来、五王国同盟の国民には基本的に越境の自由を与えられている。

 もちろん犯罪者の侵入や逃亡を防ぐ為に犯罪歴の確認や抜き打ち的な身分確認はされますが。


「首都ですから多少時間はかかるだろうと思ってはいましたが」

「下手したら数日コースで野宿決定だぞ」

「商業都国家と聞いていましたが、物流規制に繋がる人的移動の規制をするなんて随分厳重なんですね」

「厳重と言うか、自業自得共の狂騒とでも言うのか」

「狂、騒?」

「ルゼルヴァリは貴族(うえ)から商人(した)まで煌星(きらぼし)のクズ揃いだ」

「き、煌星のクズ……凄い表現ですね」

「高台の良いところに住んでる連中はあくどく稼いでる連中ばかりで、金さえ在れば貴族どころか商人さえも殺人を平然ともみ消すような連中ばかりだ。ま、あの世に逝けば間違い無く冥府送りが確定した連中ばかりだよ」

「……え、本当にそんな町なんですか?」

「表向きは……いや、基本的には外洋に出て一攫千金を狙う、そんな夢見る青い連中ばかりさ。ただ、それを食い物にするクズが国を牛耳っている」


 話し方はいつも通りの皮肉交じり。

 それなのに声音にはどこかヒリつくような憎悪が滲む。

 あの襲撃者の一件以来、私自身の態度が悪かったのも確かだがやはりここ最近のこの方は様子がおかしい。


「自分たちがふてぶてしく啜っている甘い汁が、誰かの血と汗と涙だってのは足りない頭でも良く理解しているのさ。そして好き好んでやらかしているくせに報復を恐れている」

「報復、ですか」

「ああ、生き様も汚ければ生への執着も小汚い連中でな。自分の息のかかった都合の良い連中だけに特権を与えている」

「それじゃあ、神職の入国が甘いのはさしずめ懺悔、いえ神の慈悲にすがりたいという所でしょうか」

「正解。死臭とは遠い存在である神職に比較的甘いのは反抗される恐れが低いことと、お布施をすれば神の国に行けるって本気で思ってるんだろうさ」


 言葉の端端に滲む刺々しさ。

 なるほど、よくわかりました。

 私はとりあえずこの女司祭というか聖女っぽい衣装を着ればいい訳ですね。


「って、思わず流れで納得しかけましたが何ですかこの衣装?」

「それ出発した朝にリーヴァ様が届けてくれただろ」

お腐れ(リーヴァ)様が? ああ、そう言えば何か頼まれた物を届けに来たとか言ってましたね。え、このコスプレ衣装を作らせたんですか? しかもバドハー様まで寝ずに手伝わせて」

「コスプレって……ま、コスプレっちゃコスプレだが、さっきも言ったが町に入る為の意味あるコスプレだぞ。ついでに言えば、じじぃにその衣装作らせる為だけに夜なべさせた訳じゃ無い」

「じじぃって、だからバドハー様をそんな雑に呼ばないで下さい。それで、他にも何か作っていただいたんですか?」

「ああ、これだ」


 袋から取り出したのは、大国生正教の見習い修道士()の衣装。


「結局コスプレ衣装じゃないですか! それとなんで私は女物の衣装なんですか!?」

「流石に自由行動もそんな許されていない見習い神官二人だと、根掘り葉掘り聞かれる可能性があるだろ。ところで葉掘りってどう言う意味なんだろうな?」

「知りませんよ。それと変装するなら、普通に男性の衣装で良いじゃ無いですか」

「残念ながらボクもお前も男物の司祭服を着るには色々と不足しているだろ」

「身長ですか?」

「うるせぇ、耳毟って枯れ枝ぶっ刺すぞ」

「お、恐ろしい脅し文句を言いますね」

「ふんっ、いいかボク達に今絶望的に足りないのは貫禄だ」

「かんろく?」

「分かりきったことだがボクのこの歳で司祭服なんて着ていたらあからさまにおかしいだろ。仮にお前が司祭服を着ても、着せられてるのが誰から見てもありありだ。適材適所、それぞれ持ち合わせた身体的特徴を使うのが潜入の基本だ」

「そりゃ、そうですが。何で私がこんなヒラヒラした衣装を」

「あーそれはじじぃの、いや、たぶん恐らく絶対にあの自称姉上(・・)様の趣味だな」

「ああ……」


 私はため息と共に項垂れるしか無かった。

北の大地も燃えるような高気温を叩き出しています。

読者の皆様も決して熱中症になどならないよう、健康管理にはお気を付け下さい。

~夏目オススメの過ごし方~

決して外を出歩かず元気いっぱいに家に引きこもり、キンキンに冷えサイダーでも片手に私の作品など読んで頂ければ幸いでございます(直球な番宣)

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