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終わりゆく世界に紡がれる魔導と剣の物語  作者: 夏目 空桜
第二部 第三章 アルトリアの未来
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老騎士、真実に触れる・2

と言う訳で、有り得ないほど早く更新しました!

じじぃは話は進まないけど筆は進む(爆)

「この国は僕達の姉フィーダが百英傑に選ばれた後、アールヴの王は女性であることが法で定められた」

「アールヴ族は自らを気高き種族と言うが、プライドの高さからその歴史は権力争いや闘争で血塗られた歴史だった」

「そう、それに終止符を打ったのが、史上最も高潔なる王姫なんて呼ばれていた姉さんだった」

「高潔なる王姫、のぅ……高潔なる」

「そ、高潔なる王姫だ。ふ……」

「「あはははははっ!! あの傍若無人が服を着た悪鬼羅刹が高潔なる王姫とは!!」」


 兄弟同時にハモり爆笑した。

 儂ら二人はあの姉に散々振り回された。姉に捕まるのが嫌で、兄弟揃って城を逃げ出したこともあった。

 そんな姉が百英傑に選ばれたとき、姉が真っ先に行ったのは王家の改革だった。

 そして、権力闘争ばかりを行う男性継承に飽き飽きしていた民衆の賛同を得て女王制を確立した。

 まぁ豪腕が服着て歩いているあの姉だから出来たことじゃ。


「……すまんなぁイプシスよ。儂が居なければお前が出て行くことも無かったのに」

「済んだ話だよ。それに、外は以外と悪くなかったさ」


 女王制には儂ら兄弟は異論一つ無く賛成した。

 だが、英傑の末席に名を残した儂と内政で国を守ったイプシス。

 二人の男系王族が国に残れば、何時か儂らを担ぎ上げて内乱を起こす者が現れる。それを恐れてイプシスは王家を出奔した。

 本来なら儂が去るはずだったが、未だ魔族の脅威や魔獣蛮族の脅威が残るこの地を去る訳にはいかなかった。

 ……言い訳じゃな。

 王位継承権を捨てたくせに、王家を出て生きていく勇気が儂には無かったんじゃ。


「すまぬ」

「気にしすぎだよ。僕は僕で意外と気楽だった。逆に王家に残った兄さんの方が針のムシロだったんだろ。何時担ぎ出そうとするかも分からない権力バカどもの牽制は兄さんしか出来なかっ……よそう。思い出話はここまでだ。袂を分かち千年、話せば尽きぬ思い出ばかりだ」

「そうじゃな。話したきことは多くあれど、今聞くべきことはお主の罪とやらだ。教えてくれ、この世界に何が起きているのかを」

「ああ、全ては王杯戦争がことの始まりだった。戦自体はどこにでもある権力争い、姉フィーダが決めた女王制に反旗を翻した、オルガン家と王子の謀反だ」

「ああ、忌むべき戦じゃ。アールヴの至宝とも言える王姫の命を奪い国を分断し、つい先頃まで燻り続けアルトリアを二分した国難じゃ」

「正直に言うよ。それだけなら、僕はどっちが買っても良かったと思っている。千年以上も続く慣習、それを打破しようとするのもその時代に生きる者の特権だ」

「耳に痛い言葉じゃな」


 外に出た者と内に残った者。

 過去に同じ思いを抱いたとて、外に出た者は新たなる道を知り進化、あるいは迷走かを選ぶことが出来る。

 儂らはどうだ?

 進化したのか? 或いは迷走するほど悩んだか?

 分からぬ……

 変化を恐れ、ただ古の教えに執着し停滞していただけなのかもしれん。


「どれが正しくて、間違っているのかなんて誰にも分からないさ。それを決めるのは未来のアールヴだ。ただ、僕は大罪人として歴史に名を刻むだろうけどね」

「いったい、お主は何をしたのだ? いや、何に巻き込まれておる?」

「気遣いは無用だよ。僕はソフィーティアの魂を新世界に連れ出したんだ」

「……それ、だけか? いや、そもそもこの世界で命を終えた者は真なる世界へと旅立つ。それはお主自身が先ほど言ったことでは無いか? 王女は死んだ。王杯戦争で命を落としたのじゃ」

「……それで、ことが済まなかったから僕はソフィーティアの魂を強奪したんだ」

「強、奪……じゃと?」

「事の起こりはソフィーティアが精霊皇召喚という、史類に名を刻む英雄でさえ為し得なかった奇跡を成功させたことだった」

「そうじゃ、あれが無ければ儂らは、現王エルダリア様も命を落としていたじゃろう」

「僕はそこら辺の詳しい経緯は分からない。ただ、あの娘の魂は優しい命の輝きに包まれていた。自分の為に力を行使しなかっただろうことは明白だ。そして、だからこそ精霊皇様はそれに応え、そして執着した」

「ん? 執着? 精霊皇様がソフィーティア様に執着したというのか?」

「伝承や逸話で聞いたことがあるだろ。光の精霊王セーラスーラが偽英雄(レプリカ)カルスに執着して暴走した話や闇の精霊王の愛憎がもたらした悲劇を。彼らは強大すぎるが故に孤独だ。それ故に彼らと触れ合える者に異常とも言える執着と愛情を示すことがある」

「そうか、それで召喚に成功したソフィーティア様に……」

「精霊皇様はソフィーティアの魂を精霊界に連れ去るつもりだった。だが、この世界に生まれた者は元来精霊とは存在を異にする存在。在るべき時の流れから外れれば、如何に精霊皇様の寵愛を受けようとやがては魂の崩壊を招く」

「なるどのぅ。それで、お主はソフィーティア様の魂を連れ去り真なる世界に逃がした、と」

「隔世の……とも言えるほど時代は離れてしまったが、ソフィーティアは僕の遠い姪だからね。いくら精霊皇様の願いとは言え、魂の崩壊を招く輪廻からの解放なんか認めることは出来なかった」


 何ともまぁアールヴらしくない、いや、外に出たからこそ知ったイプシスの考えたかなんじゃろう

 アールヴは得てして精霊の御許に行けるなら何もにも代えがたい幸せと思う傾向があるが、イプシスはそれを許さなかったんじゃな。

 いや、此奴の性格からして、魂の崩壊を招くと分かっていたならそれを受け入れることなど端から出来はしない、か。


「それで、ソフィーティア様はどうなったんじゃ?」

「精霊皇様を召喚出来るほどの魂だ、正直向こうの世界ではそんな魂を受け止めることが出来る器は限られていた。ただ、幸い……と言うべきか、少し言い方は悪いが向こうには僕の最高傑作とも言える最強の血筋があった」

「それはいったい……」

「魔王の一角、竜王ラースタイラントと【深淵の監視者】メルリカの末裔にして僕の子孫だ」

「なぬ!? 魔王じゃと、それにメルリカにお前の血!? …………まぁなんじゃのう、何というかあれじゃな」

「何だよ」

「【ボクの考えた最強の血統】とでも言えば良いのか随分と盛りに盛ったごった煮みたいな血統じゃな」

「うるせぇよっ! 正直に言えば僕だって予想外だったんだ。この世界に双子を残すのは危険だったから向こうに竜王の赤子の片割れを連れて行ったけど、そこで僕の子孫と血が交わるなんて思わなかった」

「そう、じゃったのか……ん? ちょっと待て! 双子じゃと!? じゃあ竜王の子がこの世界にいるというのか!? 最悪とも言える竜王自体が健在だというのに!」

「それにも全て繋がっている話だよ。順番で話すから少し待ってくれ」

「う、うむ、そうか、そうじゃな。すまんな話の腰を折った。それで、そのソフィーティア様の魂を受け入れた娘っ子はどうなった?」


 儂の問いかけにイプシスがそっぽを向く。


「なんじゃ、儂を不安にさせるその態度は? 無事なんじゃろ? 無事生まれたんじゃろ? ソフィーティア様はそっちの世界で幸せになったんじゃろ?」

「無事に生まれたよ。ただ、子孫の息子としてね」

「……ん?」

「だから、その時生まれたのは男の子だったんだ」

「……うわぉ」


 うぬぬぬぬ……

 そりゃ転生体じゃ、性別が同じとは限らんか。

 いや、男の子でもええんじゃ。無事に元気でさえ在ったなら。

 ただ幼き頃のあの愛らしき姿を思い出すと、違和感しか無いというか何というか……


「一応言っておくけど、脱線しすぎたがこれは前置きだからね。本題はここからだ」

「ええ~……儂、もうすでにお腹一杯なんじゃけど……」


 そんな心折れそうな儂にイプシスは無情にも首を横に振る。

 まだまだ終わらんと言いたげに……

閑話はあまり長くやらない方が良いと言う話を聞きますので、次話で収束させるつもりです。

次話は何となくバレてそうな気もしますが、正体を明かします(ダレの?)


更新頑張りますので引き続き応援のほどよろしくお願い致します!

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