衛士ファフナ、気付きのしこり
この一週間、身辺で色々あって更新がまた滞りそうな感じです。
決して法に触れてタイ━━━||Φ|(|´|゜|ω|゜|`)|Φ||━━━ホ!!!とかの犯罪関係では無いのご安心下さいませ。
単純に私の気持ちが上がるか上がらないか……というか上がることは無いだろうけど、落ち着けばって感じです。
只でさえ緩い更新がさらに緩くなる宣言かよと言われそうですが、今しばし何卒お時間を下さいまし。
「おうふ……永久に封印したい記憶が一つ増えました」
もちろん一つ目は幼い頃の記憶、ですが。
「で、何をしたんですか?」
東の空はすでに白み始めている。
私達は風霊王の加護を受けて長距離マラソンをするという荒技で一時間ほど走り続けた。
「さすがは風霊王だよな。一時間で百キロは移動したんじゃないか?」
「誰も短時間でこの距離を走れた秘訣は聞いてません」
地面にへたり込みながら荒い息を整える。
借りていた使役権を半分返して二人で召喚を続けたとは言え、風霊王の召喚は短時間でとんでもない疲労を生んだ。
一人だったら、とっくに魔素は枯渇し下手をすれば命を失っていただろう。
なのに……
「あー、何を聞きたかったんだっけ?」
惚けた顔ですっとぼけたことを言う腹黒。
疲労ってなに? そんな単語の意味なんか知らないとでも言いたげな雰囲気。
本当は等分で使役したんじゃ無く、大部分を私が担ったと疑いたくなるレベルの端然さだ。
「私が聞きたいのは先ほど起きた大惨事の件ですよ」
「あ、ああ、あれか。あれは……間違えた」
「間違えたって、何をどうすればあんな大惨事になるんですか」
「紫網茸ってのをベースに調合すると、擬似的にだが闘争本能を煽って混乱させることが出来るんだ。ただ、赤網茸ってのを使うとヤツらの雌が発情期に出す体臭と似ているみたいなんだよな」
「発情期の体臭って……何でそんな物を作ったんですか」
「オーソンの著作で【大陸魔物紀行】ってやつ読んだことあるか?」
「たしかオーソンが生涯をかけて魔物の生態を追いかけて書き上げた手記ですよね。写本ですが読みました」
「なら中に書いていただろう。ヤツらは同種で交尾した場合、最初に交尾した相手と番いになり一生を共にして生涯他の伴侶を持つことは無いって」
「そう言えば、そんな記載があったような……」
「ボクが昔住んでいたところは魔猿がちょっとばかり繁殖しすぎてなぁ。正直食えもしない怪物どもを毎度毎度相手にするのは鬱陶しかったから、雄同士で番わせて奴らの集落を世代交代が出来ないようにしてやった」
「おうぅ……た、確かにその方法なら子は生まれませんから、その世代で魔猿の集落は一つ壊滅するでしょうが……」
それにしてもなんと気が長く恐ろしい全滅計画を思い付くのだろうか。
魔猿は植え付けられた幸せ(?)の中でひっそりと全滅していく。
恐らくこの方の手でその魔猿の村はひっそりと全滅するのだろう。
そして、先ほど私達に襲いかかってきた魔猿の村もやがては……
思わず身震いする。
その結末は、私達アールヴが性別に重きを置かないのと意味が大きく違いすぎている。
「一応、言い訳だが一言わせてくれ」
「結果的には助かった訳ですから攻める気はないですよ。ただ、言いたいことがあるならどうぞ」
話すことで救われる気持ちもある。
いつも飄々としている彼でも、思うことはあるのだろう。
「もしもの為に戦闘で使える薬品を幾つか持ってきてたんだが、まさか古くなった赤網茸の泥団子が熟成すると紫網茸の泥団子と見た目が変わらない色になるとは思わなくてなぁ」
「聞いても重大過失決定のギルティ判決しか出せなさそうですが……」
「だよな、ボクもそう思っている」
そう言うと、緩慢な動作で頭を抱えて唸り出す。
え、何ですか、その行動?
普段の腹黒な言動とのギャップからちょっとカワイイとか思ってしまったんですが。
「ヤバいな、バレたら兄さんにヤキくらう」
「は?]
え? いまこの人なんて言いました?
ニイサンニヤキクラウ?
古代精霊語?
いや、まさか古代文明語ですか?
「あんときはしこたまハードな稽古を付けられた挙げ句、八時間正座させらたもんなぁ。初めてのやらかしであんな怒られ方したってことは、二度目だったらボクは生きて明日の朝日を拝めるのか?」
あぁ兄さんにヤキくらう、現代語ですか。
……え、正気です?
言うに事欠いて反省する理由が、兄さんに怒られるのが怖くて震えるとか。
貴方、この旅に出てアルトリアから離れてから色々とおかしな言動が増えてませんか?
クールだったキャラが、どこか残念なキャラというかポンコツというか……
もしかして、これが本当のアルフォンスという少年の姿なのか?
であれば、別に幻滅という事は無いですが、予想外に過ぎるというか……
元々どこか突飛とでも言えば良いのか、不可思議な言動をすることは多々ありましたが……
まぁ単に私がこの方との付き合いが長くない為に知らなかった一面を今見ているだけとも言えますが。
「ま、いいか。バレたらバレたときだ。忘れよ」
「え、あんなに悩んでいたのにそんな簡単に結論が出るんですか?」
「世界はボクごときじゃ分からない謎に満ちている。どうなるかも分からない未来で一喜一憂していても仕方が無いって気が付いた」
「不可思議の塊そのものみたいな人がそれを言いますかね、まぁ貴方がそれで納得されているなら私がとかく言う事はありませんが」
やはり、どこかチグハグな気もするが……
追求したところで本音を語るようなタイプでも無いし、何よりそれが真実かどうか何て今の私には確かめようがない。
「取り敢えず攫ってきたこれどうするんだ?」
「だから言い方ぁ……」
チラリと見やりながら、問いかけてくる。
視線の先にあるのは地面に寝かしつけた女。
女――
パッと見はヒト族。年の頃なら二十代中かそれより少し上か。
とは言え、ヒト族のましてや女性の年齢など当たっているかどうかは分からないが。
「どう、しましょうか?」
「んなことは知らん。言っただろ、選択をしたのはお前自身だ。最終的にどうするのかその結果が何をもたらすのか、それはお前が選択した結果だ」
「そ、そうですね」
突然何時もの投げやりにも聞こえる口調で、相変わらずの死体蹴りみたいに的確な正論で指摘をする。
ちょっと子供っぽいところを見ることが出来てカワイイとか思ったのは気のせいだった。
て、今はそんなことを考えている場合ではない。
優先すべきを捻じ曲げて選択した以上、この先の行動は私が考えないといけない。
「とは言えボクは上司で許可も出した。さっきも言ったが何かあっても尻拭いはする」
「う、ぐぅ~」
さっきまでのポンコツを纏ったような雰囲気はどこへやら。
いつもの圧倒的強者だけが放つオーラを纏って語りかけてくる。
年下のクセに、なんて言葉はこの人を相手には何の意味も持たない。
「ホント、ずるい方ですね貴方は」
「今更か? ボクは弱虫だからずる賢く生きるしか無いんだよ」
「そう言うことにしておきます」
「ん、そうか」
それ以上の言葉は無い。
それで良いのだと、私も思う。
「まずはこの方とコミュニケーションを取ろうと思います」
「そうか、まかせた」
「丸投げですか」
「ボクに任せてもお前の望む未来は絶対に来ないと思うぞ」
「努力って言葉は知ってますか?」
「言葉は知ってるよ。そしてそれが如何に儚く尊い言葉なのかも」
「無理矢理難しい言葉を並べてコミュニケーション能力の低さを誤魔化そうとしてませんか?」
「まさか。ボクは自分が正しいと思う行動を優先するだけさ」
「その上で、私の望む結末には成らない、と」
「ならないな、きっと。あ、ボクにコミュニケーション能力を求めるのは無駄だという点については否定しないからな」
「そこまで言った覚えは無いですが、低いのはご自覚あったんですね」
「まぁな」
そう呟くと山道にまばらに生えた木に立ったままもたれかかる。
面倒くさがってはいたけど、寝る訳じゃ無い。
……彼の行動は確かに大ざっぱというか大味というか、常識の外を行くような言動だらけだ。
だからといって、傲慢に見えるような言動はあっても他者を踏みにじったり弱き者を虐げたりするような人間性ではない。
それは、彼に救われた私が誰よりも知っていることだ。
だけど、やはりどこか……
どうにも腑に落ちないというか、身体の中、指の届かないどこかがモヤモヤした。
立て続けに起きた異常事態に疲弊しているのか?
そんな疲弊なんて凡人みたいな感性とは無縁みたなこの少年が?
読者様、お読みいただきありがとうございます。
前書きにも書きましたが、ちょっとだけ自分のペースを整えさせてただけたらと思います。
申し訳ございません。






