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TSヒロイン・本当は女の子になりたかった?

2018/08/18~20の三話、『ドS降臨に震える』・『押し倒されて』・『自分の本心』を改稿した物になります。

 沈黙が続くと自分がしでかした事案にキモが冷えていく。

 

 うぅ……

 うわっー!!

 わきゃきゃー!?

 うにゃあぁぁぁあぁぁ!?


 どうしようどうしようどうしよう!?

 慰めるどころか好きな子に思い切り頭突きするなんて。

 俺ヤンデレでもなければ、理不尽暴力系でもないのに……

 あ、あはは……泣きたい……


 うん……

 終わったな、この恋……

 こんな暴力的な元男を好きになるヤツなんてどこにも居ないよね……


 ふ……

 日野良はクールに去るぜ……


 いっ!!


「いたたたたたたたっ!! アル君! アル君!! また髪引っ張ってる、引っ張ってるってば!!」


 アル君は突然なにを思ったのか、また俺の髪の毛をガチ掴みしていた。


「痛い痛い!! アル君、痛いってばッ!!」

「離したら逃げる気だろ?」

「えっと……逃げないから、離して?」

「ボクの顔見て逃げないって誓える?」

「に、逃げ……ますん……」

「ますんって何さ? あと目を見てないよ」

「う~……逃げないから、逃げないから離して!!」


 半ば投げやりに叫んだ俺にアル君がにっこりと満面の笑みを浮かべた。

 何だろう、この場違いなほどに爽やかな笑みは。

 メチャクチャ嫌な予感しかしない。


「逃げないなら離さなくても良いよね?」

「え゛?」


 そう来たか、こんちきしょう!!


「えっと、だってだって髪引っ張られたら痛いもん」

「それもそうだね、絵面も良くないし。だったら……」


 そう言うと、アル君が聞き取れないほどの小声で何かを呟いた瞬間に俺の首とアル君の腕に巻き付いていく光。


「何これ、魔術?」

「これはリョウにはまだ教えていない魔術の鎖だよ。術者から離れれば離れるほど徐々に強くなる電流が全身を襲うから♪」


 明るい声音でとんでもないことを抜かしやがった!!


「それってそんな楽しそうに話すことじゃないよ!!」

「だって、こうでもしないと何時居なくなるか分からないでしょ」

「それは、そうかもしれないけど……」

「ほら、いままだ逃げる気があるのを匂わせた」

「あー、酷い誘導尋問じゃん!!」

「引っかかる方が悪いんだよ」


 そして、悪魔みたいな底冷えする笑顔でニヤリと笑う。

 やう゛ぇです……

 こんな邪悪な笑みを浮かべるアル君は初めて見たよ。

 俺に尻尾があったらくるんくるんに巻いて怯えちゃうほど凶悪な笑みだよ。

 だけど何故でだろう。

 この笑みにドキドキする俺が居る……

 こ、こりは恐怖によるもの!?


「アハハ、どうして怯えてるんだい? やだなぁ……頭突きに跳び蹴りと散々好き放題してくれたのに、このまま何事もなかったみたいに逃げられるなんて思ってないよね?」


 ああ、もしこの世にライオンに反抗したカピバラが居たなら、今の俺の気持ちを痛いほど共有出来たにちがいない。

 ふふ……

 俺はアル君とベッドに対座するという嬉し恥ずかしの状況にありながら、生きた心地もしないままこの年下ドSが放つ死刑宣告を待つしかなかった。

 怖いはずなのに、極上に怯えているはずなのに、何故かどんなお仕置きをされるのかもわからないままに高鳴り脈打つ心臓。

 これは恐怖かエロスへのときめきか……

 そんなアホなことを考えているうちに、アル君は一体なにを思ったか俺を引き寄せ背中から抱きしめたじゃあ~りませんか!!


「にゃにゃにゃ、あ、ありゅくん!?」


 ほわい?

 何事!?

 過去に俺に竿があった部分、今や穴になった部分の奥がキュンキュンする。


 エロフ! 俺、ただのハイエロフ!!


 師匠に暴行するという行為、ここが遙かな古のお江戸時代なら今頃切り捨てられててもおかしくはないだろう愚行。

 それなのにアル君に背中から抱きしめられるなんて……

 俺の……俺の、お~れ~の~雌になった雄子宮がパニックだよぉぉぉっ!!

 だけど、そんなパニックになる俺をあざ笑う(?)みたいにアル君は俺の髪に顔を押しつけてきた。


「ア、ありゅくん!? い、息が、息が首にゅああぁぁぁあぁあぁぁぁぁぁぁぁ……」


 え?

 にゃ、にゃに?

 い、いま身体にはしったでんりゅ~みたいな感覚は?

 いま俺の首筋に暑い……じゃなくて、熱い吐息が……こ、これ、アル君の吐息……


 な、何が起きた?

 デ、デレた!? アル君デレた!?

 このまま一気にジュ~ハチキ~ンですかぁ!?


「って、だめだめ!! 俺高校生で、『学園』出身じゃないからっ!!」

「キミは一体何を言ってるの?」

「一年生って言っても、学園の一年生ならえっちぃことを許されるのが世の常識なの!!」

「よく分からないけど、よく分からないってだけは分かった」


 意味が分からないと言いたげにこてんと小首をかしげるアル君。

 なんぞその仕草!?

 クッソ可愛いじゃん……可愛いくせにもうすでにイケメンとか、これからどれだけ女泣かして生きて行く気だよ!!

 どうせなら俺を最初で最後の女にしてくれ!!

 ……じゃなくて!!

 うぅ……じゃないこともないけど、そうじゃなくて!!


「ア、アル君! まだ十八歳じゃないよね!? 十八歳未満は、BANがあったりとか都条例とか、アグ〇スとかが五月蠅いから、ダメなんだよ!! 有害図書指定待ったなしなんだよ!! 東京国際展示場で並べられる偉大な書籍群以外じゃ、許されないゾーンなんだよ!!」

「BANとか都条例とかア〇ネスとか東京なんとかってのはよく分からないけど、最初にその気になったのはリョウだよね?」

「そうだけど……そうだけどさ! そうじゃないねん……」

「あと、この国は十五歳で成人だから」

「十五歳……十五歳……十五歳!! 十五歳で成人だって!!」


 聞いた、見えない権力者の皆さん!! 十五歳で成人ですってよ!! こちらの国は!!!

 それなら、俺ももう十五歳超えてるから成人だよね……

 にゃらば、もうこの先に進んでもオッケーですよね!? 権力者の皆さん!!

 って、だから俺は誰にお伺いをたててんだよ!!

 ……ん?

 そういや……

 あれあれ? 十五歳……まさかアル君この可愛らしさですでに十五歳オーバーなのか!?


「あ、でもボクまだ十四だから、これ以上の行為は貴族の嗜みだね」

「え、え~……」


 何だろう、この人の身体と心を燃え上がらせながら突き落とす感じ。

 

「残念そうな声上げてるね」

「……っ!」


 ヤバい、なんだろ、このちょっと意地悪な音色を帯びたアル君の声。

 年下にいじめられる。

 ヤバい、ゾクゾクする……

 俺、もしかしたらドMなのかも? ドSのアル君とドMの俺……もしかして相性抜群なのかな?

 嬉しい……じゃなくて!!


「待って待ってアル君! 俺、んにゃあああぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁ……」


 うなじに押しつけられた唇の生温かさに思わず悲鳴を上げてしまう。


「あ、ありゅくん、俺、きみに言わないとだめにゃことがありゅのぉおおぉぉぉ……」

「あとから聞くよ……」

「あ、あるきゅん! あ、あとかりゃじゃらめぇぇ、あ、あのね、お、俺、俺……本当は男なの!!」


 俺が告白した瞬間、アル君の動きがピタリと止まった。


 はぁ……はぁ……


 脳みその奥が沸騰寸前。

 だけど、思わず勢いで真実を告白して心は冷えきる寸前だった……


「リョウ……」


 アル君のジト目。

 ゾクゾクします。

 ご馳走様です。その目、ご褒美です。

 って、それどころじゃないですよね、はい。


「リョウ、この先に進むのが怖いからって、嘘はイケナイと思う」


 どうやらアル君は俺がとっさについた嘘だと思っていらっしゃるようだ。

 そう思ってくれるならありがたいけど……

 でも、今の俺はもうアル君に隠し通すことは出来ない。

 嘘をついて真実を隠したままでアル君と結ばれたいとは思わない。


「あのね、本当はもっと早くに言わなければダメだったんだけど」


 あれ? 説明しようと思うと、途端に涙腺が……


「俺、元の世界では十五歳の男子高校生だったんだ。顔は母さん似だとよく言われたけど、間違いなく男でさ。こっちに来た時に何でか分からないけど女エルフになってたんだ」


 俺の説明に呆気にとられたのかポカンとするアル君。

 そりゃそうだよね、あんだけ熱烈に告白していたヤツが実は同性だったとか……

 俺だって今の感情にパニックだってのに、ましてマイノリティじゃないアル君には受け止められないよね。


「ごめん……本当にごめんなさい……」


 俺の独白にアル君が悩んだみたいに口を閉ざした。

 死刑宣告を待つみたいな時間。

 心臓が締め付けられたみたいに痛み出した。


「リョウ……」

「は、はい……」

「そう言う大事なことはもっと早く言え」

「きゅぅ……」

「ふむ……異世界からの扉を開いたら性別が変わっていたか、実に興味深いね」

「え?」


 さっきまでの雄の顔していたアル君はどこへやら、突然の学者モードな顔つきに変わった。

 ああ、そうか……

 きっとこんな感じで魔術にのめり込んだんだろうね。

 ふ、俺とのエロよりも知識欲優先ですか。

 その貪欲な知識欲があれば、そりゃ世界を危機に追いやるぐらいの魔術だって見つけ出すよね。


 なんだろう助かったはずなのにちょっとやさぐれちゃいそう……


「リョウ」

「な、なに?」

「ボクがあっちの世界に行った時の話はしたよね」

「う、うん。たぶん、俺の世界の中東辺りにアル君は出たんだと思う」

「中東……」

「たぶん、だけどね。俺もそこら辺の国のことはよく分からないんだけど、ニュース……えっと、アル君、テレビって知ってる?」

「ああ、ボクが居た町の避難所に一台あったよ。不思議な道具だったね」


 身振り手振りで表現するそれはでっかい箱。

 ミカン箱みたいな形状からすると、父さんが古いゲーム機用として使っているブラウンだろうか。


「うん、俺が居た国だとその形はちょっと古いんだけど、あれで世界中の情報が配信されてるんだよ。俺の国じゃあまり中東の情報は流れないから、ちょっとだけしかわからないけど」

「なるほど。とりあえず地名の件は一端保留にしておいて、ボクが向こうに行った時に起きたことなんだけど」

「アル君に起きたこと?」

「そう、ボクの身に起きた変化」

「え、それってもしかしてアル君も女の子になったとか? 見たかった!! アル君なら絶対可愛い系だと思う!!」

「残念ながらそうじゃないよ」

「なんだぁ……」

「えらく残念な声を上げてるね。まあ、ボクの身に起きた変化は単純だよ。成長していたんだ。たぶん、体格的に考えて年齢は二十代中半ぐらいだと思う」

「え、大人になったの? それだ……や、それだけってのもおかしな話だけど……」

「まあ、他の渡った人たちの話とか聞くと、異性になった人も居れば、若返った人とかも居たみたいなんだけど」

「それって……」

「症例が少ないし、結論づけるのは早計だと思うけど……おそらく異界への扉は純粋魔素の塊みたいな物だ。だから、そこを通過する過程で魔素の濁流が肉体に変化をもたらしていると考えた方が良いかもしれない」

「そうなの?」

「あくまで一つの推論だけどね。でさ、ここから重要なんだけど、転移者の話をまとめるとその姿は自分がなりたい姿だったみたいなんだよ」

「……は?」

「だから若返った人は自分の青春時代の姿に、ボクは早く大人になりたかったから、たぶん自分が理想とする年齢まで成長したんだろうね」


 そうか……

 アル君は幼い頃からの超天才児だった。

 それはきっと大人達からの嫉妬を否応なく買ったはずだ。

 でも、それはそうと大人のアル君見たかったなぁ……メッチャ格好良かっただろうなぁ。


「じゃなくて!!」

「何さ? 突然大声上げて? ……叫んでも逃がさないよ」

「逃がさないって……うれし、いや、そうじゃなくて! え? え? それじゃ俺が女になったのは……」


 そこまで言ったら、アル君が獲物を見つけたハンターみたいにニヤリと笑ってまた俺を押し倒した。


「ほわっ!?」

「そうだよ、リョウが本当は女の子になりたかったってことさ」

「!?」


 とんでもない発言がぶち込まれた瞬間だったけど、そう言って一瞬見せたアル君の表情は、凄まじく策士のような、だけど、どこか喜びを噛み殺したような、そんな何とも言えない表情だった。

お読みいただいている読者様、本当にありがとうございます!


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