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終わりゆく世界に紡がれる魔導と剣の物語  作者: 夏目 空桜
第二部 第三章 アルトリアの未来
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衛士ファフナ、腹黒ショタに翻弄される

前枠後枠で思い付いた面白いことを書こうとしましたが、寝て起きたら忘れました。

トイレに入る前と寝る前に思い付いたことはちゃんとメモしとかないとダメだと思う今日この頃です。

 キリキリキリキリ……

 あ、痛い。

 ポンポン痛い。


 ……いけない。ポンポンとか、これから聞かされるだろう事態に思わず幼児退行してしまった。


「それで、嫌な予感しかしないその【手】ってのは何ですか?」

「まぁ、そう焦るな。幾つかボクが想定している仮定を共有したい。もし不明なことや異論があったら忌憚なく言ってくれ」

「わかりました」

「まず、今回の襲撃は【乞食の山猿】が絡んでいる可能性は極めて低い」

「日報の鉄道員がゼネシオン王国出身の職員だったからですね」

「ああ、鉄道事故が起きればその責任の所在は鉄道員が所属する自国に及ぶ。そうなればいかな私掠許可を得た山賊といえども自国を敵に回しかねない」

「例えば、ゼネシオンにも派閥があって自国を罠にかける裏切り者がいて鉄道員が最初から裏切っていた、とかはありませんか?」

「その可能性もゼロじゃ無い。が、可能性としては低いと思う。国外線の鉄道は各国を跨いで運行する安全上、各国の承認を得る必要がある」

「そう言えば今の話で思い出しました。以前、本で読んだか誰かから聞いたのかは思い出せませんが、確か国際線の鉄道員、特に車掌はその思想や人格を重要視して選ばれるとか」

「ああ、詳しくは知らないが身内の犯罪歴も調べられるとか、徹底した調査をされるとボクも聞いた」

「なるほど、鉄道員が特定の思想や理想主義を持っている可能性は極めて低いと言うことですね」

「ついでに言うとあの日報自体もそうだが、日報に使われていた名前と出自を示す為に押されていた判子は偽造の難しい高度な装飾を施されている」

「そう言えば、国際線だけは特急も鈍行も日報には特殊な用紙が使われていると聞いたことがあります。確か、故意や過失にかかわらず破壊や不正を行おうとすれば、記載されている内容が宗教国家ガードレリュジョンの大神殿の奉納されている真実の鏡に映し出されるとか何とか」

「ま、そこまで大仰にやってるか真実は知らんが、事故ったときにどこの国が賠償するのかそれを明確にする為の抑止力として噂されているな」

「今までそれを試した者もそんな大事故も起きてはいませんから真実は知りようもなし、ですね。とは言え、事実確認の為にわざわざそんな虎の尾を踏むようなマネをするはずもありませんか」

「伝説のダ・ヴィンチみたいなよっぽどクレイジーなヤツでも無い限り、な」

「ダ・ヴィンチ? どなたですか」

「……とにも、だ。現状考えられる容疑者はルゼルヴァリア公国が一番濃厚だろうな」


 ダ・ヴィンチ……

 どこかで聞いた記憶があるような……無いような……

 ただ、彼の反応からして意図的にはぐらかされたのは間違い無い。

 何者か聞きたい衝動はある。

 だが、今は話の腰を折るときでは無いだろう。


「貴方がルゼルヴァリアを疑う根拠は何でしょうか?」

「単純に獣王国家が犯人なら今回の襲撃犯の能力と辻褄が合わないってだけさ」

「能力?」

「獣王国家は実力至上主義なのは周知の事実だ、そのせいか元々肉体的に劣る人種を劣等種としてみている」

「そこにはアールヴも含まれますね。故に彼の国出身の者は獣人至上主義が多いのも事実です」

「そうだな。そしてそんな連中が見下していた人種に苦汁を舐めた先の帝国との敗戦絡みから、人種に対する当たりがさらに強くなった。仮に今回の襲撃犯に獣人族が認めるほどの実力者が揃っていた、もしくは実験が目的だったとしても人間に巨大な力を貸し出す訳がない」

「さっきほども言ってた借り物の力(・・・・・)ってヤツですね」

「それに飢饉の獣王国にとってアルトリアは大事な台所だ。何かの拍子で下手に踏み荒らし穀倉地帯を台無しには出来ない」

「そのための、食料の融通でしたものね」

「そうなると、だ。今回の同盟強化を最も快く思ってない国はルゼルヴァリア公国と言うことになる。ルゼルヴァリアと獣王国は隣国だ。アルトリアの前に自分たちが襲われる可能性を否定出来ない」


挿絵(By みてみん)


「ルゼルヴァリアも獣王国と正面から戦争しては勝ち目が薄いですよね」

「とは言え南には都市とは名ばかりのゼルガリアがある」

「五王国同盟に参加して、疑似国家として承認された都市ですね」

「船団が遡上できるような巨大な川が多いのと町中が水路だらけだ」

「そんな都市を守るのが噂の私掠船団……海路や水路からも陸路を攻撃出来るんじゃ、ルゼルヴァリアも相当な血を流すことになりますね」

「ルゼルヴァリアは恐ろしい数の傭兵を集めちゃいるが、陸上特化の傭兵じゃ海軍どころか私掠船団相手も厳しいだろ」

「そうか、だからルゼルヴァリアにとって厄介なゼルガリア出身でゼネシオン王国の所属の鉄道員か。この二国は元は同じ国だったけど、ゼルガリアの独立で国境線は紛争状態……」

「ああ、通称【ゼ・ゼ国境紛争】ってヤツだな。さっきも言ったが日報を偽造出来ないようにそこまでやってるんだ。国際線に搭乗する職員は各国把握してるだろ」

「なるほど、今回の襲撃犯が本物の鉄道職員じゃ無くても日報に書かれている以上事故の責任はゼネシオンに帰属する」

「そうだ。そしてゼネシオンはゼルガリア出身の人間だと言える」

「お互いの罪を擦り付け合うことは出来るって訳ですね」

「ああ、本物の職員はすでに殺されてるだろうから、真実を聞くことは不可能。ま、もっとも死んだ襲撃犯も自分たちが太古の昔に(・・・・・)失われた技術で行動しているなんて思っても居なかっただろ」


 まただ。

 彼は確実に襲撃犯が使った能力の正体を知っている。

 妄想なんてことはあるまい。知っているからこそ、確信めいた発言をしているんだ。


「……或いは、この力を与えた連中さえもこの力の危険性を理解しちゃいなかったんだろうな」

「取り敢えず、私から一言良いですか」

「なんだ」

「今までの想定は十分に納得出来るものでした」

「ああ、言いたいことはわかる。想定は想定に過ぎない。それにこだわるのは危険だと言いたいんだろ」

「いいえ違います」

「え、違うの?」


 予想が外れたとばかりにポカンとする。

 ちょっとこんな顔をさせることが出来て嬉しいと思うのはお門違いでしょうか?

 ま、いままで散々な目にあったんですから許されますよね。


「じゃあ何が言いたいんだ?」

「まぁ、全部が違うとは言いません。ただ、私が一番に言いたいのは」

「言いたいのは?」

「貴方らしくもなく外堀を埋めるような懇切丁寧な解説をしたんです。これだけ周りが悪いんだからとばかりにとんでもないことをやらかす気じゃ無いですよね?」


 ……

 …………

 ………………


「なんですか、今の間!」

「いやー、察しが良いな。やっぱり地頭が良いヤツは説明の手間が省けて助かる。お前をツレに選んで正解だったよ」

「そんな褒めないで下さいよ、ってそんな言葉で騙される訳がないじゃ無いですか!」

「チッ……ま、そうだよなぁ、流石にこんなんじゃ騙されんか」


 うぉーっ!

 聞こえるように舌打ちしよったぞ、このクソショタ!

 確信しました、今完全に完璧に確信しました!

 絶対とんでもないこと考えて嫌がります!!


「ま、日報は車掌室に残してある。客室列車を切り離した後は後続列車が異常を確認した際に見付けるはずだ」

「そうですね……」

「あ、そうだちょっと行ってくる」

「どど、何処に行く気ですか、それと話はまだ終わってません!」

「護送車両に行って来る。 搬送中の二人は死んだが、牢屋の中で死体を放置しておくのはまずい」

「アルトリアから出発した鉄道で獣人が護送されているのを知られる訳にはいきませんものね」

「ついでだから死んだ獣人の手に武器でも持たせておこうか」

「……暴れたことにさせるんですね」

「ま、詳しく調べられたらそんな穴だらけの工作はすぐにバレるだろうが、こんな僻地じゃ詳しく調べようも無いだろう。それにバレたらバレたで疑心暗鬼を深めさせることが出来る」


 はい、確信しました!

 パーフェクトに確信しました!

 この腹黒ショタ、この計画に便乗しやがるつもりです!

 そして、そして……


「あ、あの、一応確認ですが」

「なんだ?」

「この列車をどうやって止めるんですか?」

「え、ぶつかりゃ止まるだろ?」


 ほはぁーっ!

 やっぱりだぁー!!

 サラッとあっさり言ってくれやがりました!

読者の皆様、自作を読んで頂きありがとうございます。

2023年(R5年)の1月3周目の週末はとてつもなく寒いという予報です。

急ぎのご予定が無いようでしたら身体など壊さぬよう、外出を控え部屋を暖かくしてお過ごし頂ければと思います。

部屋にこもりお暇なときは、よろしければ私の作品を読んでお過ごし頂ければ幸いでございます(番宣)

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