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終わりゆく世界に紡がれる魔導と剣の物語  作者: 夏目 空桜
第二部 第一章 天才少年とポンコツご当主さま
148/266

紡がれし絆

2022年06月22日 アルトリアの偽王~それぞれの想い~

を表現を中心に改稿しました


↓以前の前書き

謎回です

多くは語りません

「はは、ホントにアンタはたいしたもんだな」

「あ、その言葉は私が謝った時にも聞いた……」

「ああ、言ったな」

「どんな意味があるのか教えてくれますか?」

「たいしたことじゃ……いや、たいしたこと、だな。【王たる者衆目の前で頭を下げるべからず、されど個である時は誠実なる人あれ】って言ってたのを思いだしてな」

「それはどなたが……」

「さぁ、誰だったかな」


 どこか意地の悪さを感じる惚けたような声音。


「ただ、そんな謙虚な真似が出来る王ってヤツは、否、そんな謙虚な真似が出来る貴族すら今のこの世界にいったい何人居るのかと思ってな」


 アルフォンスくんは微笑むと立ち上がり私の手を握った。


「アンタは会話をしている間、手を一度も引かなかった。歳下のガキで立場もアンタより遙かに低いボクに対して最善の礼を尽くしてくれた」

「アルフォンスくん」


 私の呼びかけと同時であった、その握る手に確かな力が込められたのは。


「ほんと、やっかいだよな……昔のオレ(・・)だったら違ったのにな」

「え?」

「簡単に言えば躾ってやつでさ、胸襟を開き誠意を持って差し伸べられた手を振り払うような礼儀知らずに育てられた覚えがないんだよ……だから、アルトリア王国エルダリア・ファン・ラーダベルト大公閣下、非才の身ではありますがこのアルフォンス、誠心誠意お仕えさせて頂きます」

「アルフォンスくん、貴方の慈悲に感謝を」

「感謝なんて必要ないさ。ボクも少しその気にさせられただけだから」


 小憎らしいなんとも皮肉屋めいた言葉。

 だけど、実にこの少年らしい頼もしくも聞こえる不思議な声音。

 私はこぼれ出る笑みを噛み殺し少年に微笑んでいた。


「なんだ?」

「いえ、何も。ただ、美味しい食事も頂きましたしさっそく王都に向かえればと」

「そうだな。あ、悪い。その前に寄りたいところが出来た」

「寄りたいところ、ですか。失礼ながら時間はかかりますか?」

「あー、ぶっちゃけ来た道を戻るからな。近道を通っても片道五時間はかかるかな?」

「五時間……それならどんなに急いでも王都への帰還は早くて夕刻、下手をすれば深夜になりそうですね」

「それは今せんと、いかんのか?」

「出来ればね。ボクもまさかアルトリアに宮仕えするとは思わなかったから行ける時に行っておきたいんだ。いくら多民族国家といえど、大公の家に出入りする人間(・・)が信用築く前に国境付近まで単身で出かければいらぬ誤解を受けるだろ」


 アルフォンスくんの言はもっともだ。

 実力は人間離れしているが見た目だけなら間違い無く生粋の人間だろう。

 そして、人の身でありながら異常とも言える能力を持つ少年。

 ましてや私とバドハーの後ろ盾がある危険な存在が私事で動くとなれば、謀に血眼を上げる貴族達からいらぬ詮索や策謀の的になりかねない。


「小僧の言い分は理解したぞ。とは言え儂らもいささか国を空け過ぎた。そんな儂らが先に戻れば部下達に捕まりしばらく屋敷から出してはもらえまい。となれば人種の小僧を後日城に招き入れるのは」

「正直、困難になるかもしれませんね」

「とは言えアルトリアは城郭都市じゃ。城門が閉じる夕刻までに戻らなければ、いくら儂らでも下手すりゃ外で一夜を過ごすはめになる。帰還予定日より二日も遅れたとなれば、ご当主様に何かのっぴきならない事態が起こったとあらぬ噂が流れかねませぬ」


 私は刹那に思案を巡らせ、唸るバドハーに視線を送る。


「バドハー」

「なんですかな?」

「貴方にはルーディフがいます」

「確かに。しかし、いかなオーガンクルス馬でもこの山道を三人乗るには些か無理があると思いますが」

「いいえ、貴方だけ先に戻ってください。ルーディフの健脚なら昼前には王城に着くでしょうし」

「ぬ、それではご当主様が小僧と共に行かれるのですか? 確かにご当主様一人だけで王都に戻らせるのはおかしな話ですが、黒騎士共の脅威が完全に去ったかはわかりませぬ」

「確かにそうかも知れません。でも、ここには貴方を救ったアルフォンスくんがいます」

「確かに小僧の奇策には救われましたが……いや、わかりました。それでは急いで儂は王都に戻ります。戻りましたらすぐに迎えを出しますゆえ屋敷……あ、いや……」


 バドハーが躊躇うように言葉を詰まらせた。

 まったく、この老英雄は……

 時折こんな優しい顔を見せるから困るんですよね。


「大丈夫ですよ。迎えを待っている間にライアンにちゃんとお別れを伝えてきますから。屋敷に迎えをよこしてください」

「わかりました。では小僧、いや、アルフォンスよ。ご当主様のこと、くれぐれも頼むぞ」

「ああ、厄介な敵に出会ったら全力で連れて逃げると約束するよ」

「そこは全力で敵を打ち倒す、ではないんじゃな」

「言っただろ、ボクは弱いんだ」

「やれやれ、アルトリアに仕えることが決まってもそなたのスタンスは変わらんのう」

「変わるほど時間は経っちゃいないさ」

「それもそうじゃの。さてと、したらば儂は一足先に王都に戻らせて頂きます。ご当主様もくれぐれも無理をなさらぬように」

「はい、貴方も気を付けて」

「あ、じぃさんちょっと待ってくれ」

「なんじゃ? ここは儂が颯爽と踵を返し出て行くシーンじゃないのか?」

「アンタの脳内歌劇は取り敢えず保留だ。ちょっとこっちに来てくれ……」


 手招きされたバドハーが、アルフォンスくんと何やら耳打ちした後、


「ほっほっー! それは面白いのぅ、しかし上手くいくかの?」

「成功するかどうかはアンタ次第だよ」

「そこは丸投げか……じゃが、やる価値は十分すぎるほどにありそうじゃ」


 何を話しているのかは分かりませんが、バドハーのあの嬉しそうな顔に多少なりとも不安を覚えるのは私だけでしょうか?


「さて、それではご当主様、改めて行ってくるぞい!」


 バドハーはにやりと笑うとそのまま家を後にした。

 家の外から聞こえるルーディフの嘶き。

 愛馬の嘶きを聞ける。それが、とても羨ましいと思ってしまう。


「待たせましたね」


 口調を変えたアルフォンスくんが柔和な笑みを浮かべ話しかけてくる。

 

「バドハーの楽しそうな顔を見ると何やら随分な悪巧みをしていたようですが」

「正直、上手くいくかは五分五分です。ですから今はまだ秘密ということでお願いします」

「分かりました。結果を楽しみに待たせて頂きます」


 敢えて多くは聞かない。彼の人格を信じその才に惚れ込んだからこそだ。

 アルフォンスくんも満足げに頷く。


「さて、ボク達も出るとしましょう。王都に急がなくてもよくなりましたが森の中で暗くなるのは避けたいですからね」

「そうですね。あ、それと! 二人で行動している時は敬語は結構ですよ」

「良いのか?」

「ふふ、もう早速敬語とはほど遠い感じじゃ無いですか。他者がいる時は上下関係には気を付けて頂きますが、貴方は恩人であり私が請うて国に仕えて頂いたのですから」

「アンタは変わってるな。貴族臭さがない」

「アハハ、褒め言葉として受け取っておきます。でも貴族臭くないと言えば、うちにはその筆頭にバドハーもいますし」

「それもそうだな……って言いたいが、あれは演技だろ」

「ッ!」

「あのじぃさん、何を隠しているのかは知らんが死にたがりだ。道化を演じて誤魔化しているだけなのはアンタも気が付いてるんだろ」

「……アハハ」


 ほんと、この少年は末恐ろしいですね。

 人前での道化がすっかり板に付きすぎて、道化の姿こそが真実になりかけてるバドハーの本質を見抜くとは。

 でも、だからこそ……

 この少年だからこそ、あの空虚に支配された老英雄さえも変えることが出来るのではないか?

 そんな淡い期待を私は心の何処かでせずにはいられなかった。


 そして、バドハーを見送り二時間ほどが過ぎた。


 木々の合間からこぼれ落ちる太陽の光も強くなる。

 アルフォンスくんが案内する近道は遊びの無い裏道で、獣が通った痕跡さえもわからないような場所だった。


「ハァ……ハァ……」


 それにしても道を知っているとは言え獣さえも嫌がる山道。

 森に祝福を受けたアールヴ族の私でさえも息切れをしているというのに、アルフォンスくんはとんでもない早さで駆け抜けていく。

 底知れない知恵の次には無尽蔵の体力ですか。つくづくこの少年には驚かされます。

 そんなアルフォンスくんの身体能力に驚かされていると、その足がピタリと止まった。

 目の前に現れたのは対岸まで数百メートルはありそうな巨大な川。

 巨大差が物語る、かなり急な流れ。

 ふぅ……ここが目的地ではなさそうですが、どうやら一息つかせてもらえそうですね。


 ……そう、思っていたときが私にもありました。


「よし、この川を渡ればあと二時間で付く」

「は、はひ? 川を渡る……あ、あのアルフォンスくん、流れやばい上にこの川幅ですよ?」

「ああ、冬が長引いたせいで時季外れの雪解け水で増水しているみたいだな。ま、大丈夫だろう……」

「おーまいがー……」


 岸と岸を分断するこの川。

 ああ、何ということでしょう。

 この少年は、増水して危険なこの川を泳いで渡ろうというのです。


「何か変なこと考えてないか?」

「いえ、現実に目眩を起こしかけているだけです。この水、冷たいですよね?」


 チャプッと手を入れたと同時に、氷水にでも指を突っ込んだような冷たさが手に伝わる。


「ひゃわ~! ア、アルフォンスくん、この水温は致死性の恐怖を禁じ得ません! 泳ぐ、駄目絶対! 人様に迷惑掛ける遊泳禁止ゾーン!! 川の中州でバーベキューぱーりーぴーぽーだめ絶対!!」

「や、泳がんけど。あと何だよ、バーベキューぱーりーぴーぽーって」

「へ? じゃあ、どこかに匠が作った橋でもあるんですか?」

「どこの誰だ匠って、良いから落ち着つけ。取り敢えずボクの歩くとおりに付いてきな」

「ええ、それは先ほどの山道からずっとやっています」

「いや、今度はもっと精度を上げてもらう」

「せいどをあげる?」

「ボクが踏んだ場所を寸分違わずに踏むんだ」


「寸分違わず、ですか? って、危な……え?」


 アルフォンスくんが突然川に飛び込んだと思うと、何故か水面に立っていた。

 魔術? 精霊術? いや、そんな力の行使は感じなかった。今も変わらずに普段通りの雰囲気を纏っている……


「ここ、増水時に水面ギリギリに隠れる岩があるんだ。昼間は陽光で乱反射していて見えにくいし、夜は暗くて見えない」

「えっと、まさかそうやって対岸まで渡れと?」

「ああ、子供の頃はよくこの辺りで魚取りしていたのを見ていたから覚えている。この水面ギリギリの岩は対岸まで点在している。そこを上手く渡れば、濡れるのは僅かですむ」

「わ、分かりました」

「じゃあ、ボクは次の岩に飛ぶからここに着地するんだ」

「はい!」


 ……

 …………

 ………………

 

 アルフォンスくんの指示通りに飛びました。

 ええ、ホントこんなところに岩があると思わなければ、水面に立っていると勘違いするほどです。

 ですからね、あると思ったところに岩がなくても仕方が無いと思うんですよ、ええ。


「あ~、大丈夫か? あと半歩だったんだけどな、頑張ったと思うよ、うん」

「うぅ、優しくしないでください。泣きそうです……」


 濡れ鼠になった私を眺めながら、アルフォンスくんが困ったような表情をしていた。

 うぅ……自分の雇い主の体たらくに呆れているんでしょうね。


「待ってな、今家を出すから」


 家を出すというパワーワードよ……

 や、例の魔導ハウスだってことはわかっているのですよ?

 分かってはいるのです。それでも何とも言えない語彙力を感じてしまいます。


「アルフォンスくん、気持ちは嬉しいですが急がねば間に合わなくなります」

「……ならせめて着替えを取ってくるから待ってろ」

「いえ、着替えは結構です!」

「そうは言ってもずぶ濡れだが、良いのか?」

「お気遣い無く。はは……色々と足りないと言うか、何というか……いや、別に足りて無くても傷付くはずが無いのに何か負けた気がするというか……」

「???? すまん、何を言っているのかまるでわからない」

「私も何を言っているのかわからないので、おあいこということで……」

「意味がわからないことはわかったが、取り敢えずここで待ってな」


 そう言うと、呼び出した家へと消えていく。


「うぅ……良いんですよ、良いんです。ええ、良いんです。これは本当にどうでも良いことで何故か知らないけど勝手にダメージを受けただけですから。ええ、ホントに、ね……」

「何をブツブツ言ってるんだ?」

「ひゃわー!!」

「ボクだ、驚かせた覚えは無いんだが」

「すいません、ちょっと考え事をしていました。って言うか、戻ってくるの早いですね」

「バスタオルを取りに行っただけだからね」

「わざわざありがとうございます」


 借りたバスタオルで拭き取っていると、私の身体を包み込むように温かな風が吹く。

 これはバドハーが得意とする風霊(ルシャ)……

 おのれバドハー! まさか私の無様な姿を隠れ見てほくそ笑んでいるのですか!

 だが、辺りを見渡してもバドハーの姿は無し。気配もなし。

 え? まさか……

 視線をアルフォンスくんに向ければ。

 驚いた。

 人に懐くことなど滅多に無いあの気まぐれな風霊(ルシャ)が、アルフォンスくんの周りを楽しげに飛んでいたのだ。


「貴方、風霊(ルシャ)を呼び出せたのですか?」

「じぃさんが使っているのを見た」

「……え? それじゃあバドハーに会ってから使役出来るようになったのですか?」

「ああ、初めて呼びかけてみたが、意外と来てくれるもんだな」

「…………」


 言葉が出なかった。

 風霊(ルシャ)は気紛れだ。よほど力のある術者でも、まず使役することは出来無い。

 それを、この少年は意図も容易くやってのけたというのですか?

 つくづく麒麟児。

 だけど、だからこそ気になる……


『ボクは弱いんだ』


 その言葉の意味を。

 謙遜しているから出た言葉なのか?

 それとも……

 それが何故だか……妙に気になった。


「どうした? 風霊(ルシャ)を使役出来るのが不思議なのか?」

「え? あ、はい。風霊(ルシャ)はそよぐ風であり瞬きした瞬間には荒れ狂う暴風のように精霊のなかでも特に気まぐれです。まず呼びかけに応えることはありません」

「バドハーのじぃさんだって使役してるだろ」

「そうですが、あの人はちょっと特殊と言いましょうか……」

「ま、変なじぃさんではあるな。ただ、思うに風霊(ルシャ)はそんなに難しい相手じゃ無い」

「え、ではどうやったら使役出来るのですか?」

「ん……多分凄く簡単なんだ。だけど、アンタには逆に難しいかも知れない。いや、多分大多数の人には難しいんだろうな」

「それは……」

「ま、機会があったら教えるよ。ここで何時までも無駄に時間を潰す暇は無いからね」

「む、む~……わかりました。何時か風霊(ルシャ)を使役する秘訣を教えてくださいね」

「ああ、何時かな」


 そして、私達は再び走り出した。

 時折魔獣達の泣き声や気配を感じたが、アルフォンスくんが異臭を放つ謎の薬品をばら撒くと嘘みたいに獣の気配が遠ざかった。

 バドハーから聞いてはいましたがどこで仕入れた知識なのやら。

 驚かさることばっかりですね。

 ですが、だからこそこの少年をアルトリアに招き入れることが出来た収穫は何よりも大きい。

 そんな驚かされるばかりの道中はやがて太陽が天頂に辿り着くころ――


「ここが目的地ですか?」


 そこは北を向けば帝国領が見渡せる山頂だった。


「ここに何があるんですか?」


 呼びかけるも反応の無いアルフォンスくんに振り返ると地面に片膝を突いて草むらに手をかざしていた。


「どうかしたんですか?」

「ここ」


 アルフォンスくんが指さす場所を見ると僅かにくぼんだ跡がある。


「その跡がどうかしたんですか?」

「蹄の跡だ。この山の下に広がる草原は毒草が生い茂る魔獣の生息域。野生種の馬は居ない……」

「旅人が来る場所でも無さそうですが」

「折れた草の感じからしても古くは無い。まさか……だけど、だとしたら何故ここに……」


 アルフォンスくんが何か思い当たったみたいに表情を変え、辺りに視線を彷徨わせた。

 私も警戒し身構える。


「何か居ますか?」

「いや、何もいない。踏みつけられた草の跡も、恐らくだが二日ほどは経っているみたいだ」

「そう、ですか。ですがどちらにせよここは帝国領に近い場所。長居しないに越したことはなさそうですね」

「ああ大丈夫だ。そんなに時間はかからないさ」


 アルフォンスくんはゆったりとした動作で更に小高くなった場所へと歩き出した。

 そして、そこには小さな石が積み上げられていた。


「久しぶりです……」


 今まで見たことのない穏やかで優しい顔。


「あ……」


 そう、なんですね……そこに大切な人が眠っているのですね。


「報告があるんです。まぁ報告と言っても、寂しいけど兄さんにはまだ会えずに居る。でも何時か必ずここに二人で来るからさ。それとアルトリアに就職……この場合、就職って言うのかな? ま、取り敢えずアルトリアで働くことになったんだ。だから、しばらくここには来れなくなると思います。でも、忘れることは絶対に無いから、少しの間だけどうか手を合わせに来られない不義理を許して下さい」


 そう呟き石の周りに小さな種を蒔く。


地霊(ヨルト)よ、汝の慈悲深き恵みを与えたまえ……」


 精霊術の発動と共に、ポツンポツンと小さな葉が芽吹いていく。


「貴女に贈れる想いは今はこれが精一杯だけど……何時か、貴女が心安らげる土産話が出来ることを約束します。だから、どうかそれまで向こうでも笑顔で居て下さい……」


 祈りが終わった頃だった。辺り一面を桃色のタンポポが包み込んでいた。


「待たせた。じゃ、行こうか」

「もう、よろしいのですか?」

「ああ、報告は済ませたから」


 アルフォンスくんは穏やかに微笑み、肩越しにお墓に振り返る。





「じゃあ、行ってくるよ母さん……」

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