京一・帰郷
2019/06/08に投稿した『帰郷』を表現を中心に改稿しました。
「ぬ……う、ぐぅ……いだい……」
筋肉は爆発寸前。
腰はハイパーギックリ腰を発病中だった。
「格好悪ぃ、散々調子こいてギックリ腰とは。ふ……認めたくないものだな、自分の身体の老いというものを……」
俺は芋虫のように這いずりながら、カーズ兄ぃに教えて貰った転移陣に座り込む。
はぁ、ここで俺が物語の主役だったら、ハプニングでどっか遠くに飛ぶとかあるんだろうな
「……なんて、な」
そんな漫画みたいなベタなお約束よりも、俺は早く子供達と綾さんに会いたいんだよ。
おっさんとしちゃ、おっさんが主人公として脚光を浴びるのも良いけど、お父さんは主人公じゃ無くて良い。
「そうだ、家族を陰で支える縁の下のヒーローで十分だ」
だって、きっとその方が綾さんいっぱい喜んでくれそうだし、子供達の成長や未来を楽しむことだって出来るだろうし。
……
…………
………………
「ここは……ああ、近所の丘か……」
三十数年、見慣れた世界の見慣れた町並みが眼下に広がっていた。
「思ってたよりも、時間かかっちまったな。いや、こんな程度で無事戻って来れたんだ。オレみたいなバカには上出来だ」
ほんのり秋の終わりを感じさせる肌寒い夕暮れが町を包み込んでいる。
「モンジロウ」
「ひゃん!」
いつもの犬の姿に戻っている我が家の三人目の子供。
リードを外してあげると、モンジロウが嬉しそうに尻尾を振る。
どうにも向こうの世界の姿を思い出すと背徳的に感じたのと、モンジロウが向こうで見せた頭の良さ。なによりもオレたち家族への愛情を知ったら必要が無いと確信した。
……保健所に怒られたら、そん時はそん時だ。
オレはモンジロウを抱き上げ、気が付けば走り出していた。
早く帰っていっぱい綾さんを喜ばせてあげよう。
おっさんが治ること、俺たちの娘の良ちゃんが凄く素敵で無敵な最強変身ヒロインやってることとか……
うん……向こうで幸せにしているって。
あ、それとそう遠くない時期に、俺たちがおじいちゃんとおばあちゃんになりそうだってことも。
あ、これは永遠の十七歳を希望する綾さんには御法度だったか?
「何て、な。子供大好きな綾さんが嫌がるはず……」
『そこの暴走ランナー止まれー!! ここは四十キロ制限! 五十キロオーバーだ!!』
「うるせー! オレの綾さんと愛ちゃんの再会を邪魔すんなクソポリ!! うぉー、唸れオレの両脚」
シュドドドドドドド……
『こ、こら! 爆音奏でてさらに加速するな!! 止まれ! 止まらんと撃つぞ!!』
その日、小さな田舎町の一角が、ほんの少しだけ賑やかだった。
読者の皆様、大変お待たせしました。
これにて六章の改稿終了となります。
年明けから新章(前回途中まで投稿した七章とは全然違う物になります)となる最終章を開始いたします。
引き続きお付き合いのほど、よろしくお願い致します。
本年の投稿はこれにて最後となります。
読者の皆様よいお年をお迎えください。
新年も何卒宜しくお願い申し上げます。






