そして、星に願い事をするために彼と彼女は旅立った
2019/05/20現在、ストーリー修正中。
2019/06/30現在、ストーリー再編。
ーーヒョウドウを倒してから、1週間が経った。
「・・・うん!これでよしっと。」
オレ達はタクミの家に戻ってきている。オレはユキナに左手の包帯を巻き直してもらう。ありがとうと言おうと思った矢先に、ユキナはオレのおでこを弾く。
「いてっ!なにすんだ!ユキナ!」
「んー?何か言うことは?」
「くっ・・・。ありがとよ。」
「ふふっ、それは言わない約束でしょ?あ・な・た・?」
「うるせぇ!」
言おうと思っていたのに、と喉まで出ていた言葉を飲み込む。けれど、本当に心配をかけたようで、ユキナはとても嬉しそうにこちらを見ている。
ーーあの後、ヒョウドウを倒したあと、ユキナのところに戻ると、大粒の涙を流して泣いていたので、イリヤに目を向けた。
イリヤは落ち着いた顔色で寝息を立てていて、嬉しさで泣いているようだった。タクミも、ユキナに対して、そしてオレに対して、泣きながらただ頷いていた。
「本当にありがとう。僕は、結局何も出来なかった・・・。」
「そんなことは無いさ。オレ達は出来ることをやった。そうだろう?」
「・・・うん。」
そこから、少し移動した場所で、鎖に繋がれたタクミの妹も発見した。繋がれてはいたが、本当に大事にされていたようだった。
ヒョウドウについてはどうすればいいか分からなかったので、ひとまずタクミの妹であるミキが繋がれていた場所に閉じ込めた。どうやら、龍族の力を無効化する力が、その鎖にはあるようだった。
あとは、タクミの家にイリヤとミキを連れてみんなで帰ってきたのだが、着いた瞬間オレは倒れたらしく、3日間目を覚まさなかったらしい。ふと目が覚めて「腹減った。」と言ったのは4日目の朝だったと聞いて驚いた。
町の人間の生気は戻らない。ヒョウドウが力を使えない以上、この町の噂も、時期に消えるだろう。
タクミの妹、ミキも、元々の性格なのか、死の首輪から解放されたせいか、とにかくよく動く。
死の首輪は、イリヤとその部下がオレが寝ている間に解読して外したという。イリヤの部下も、どうやらイリヤの細工で星喰いから難を逃れていたようで、五人の美女軍団だった。日頃姿を見せないし、名前を聞こうとするとユキナがジト目でこちらを睨むのでよく分からない。
ミキはピョンと跳ねてから、ユキナの後ろに回り込んでから抱きしめ、顔をくっつけてそしてにっこりと笑う。
「ねえねえーユキナー。次はどこに星探しに行くの?」
「わからないけれど、カズマが見つけた唯一の手がかりがこの星見ケ丘だったから。」
そう言うと、ミキはもっとニコニコしながら笑う。
「・・・何か言いたそうね?」
ユキナはため息をついて、少し痛くなった頭を誤魔化すように、こめかみを右手の人差し指で押さえている。そんな姿を気にすることもなく、ミキはニコニコしたままユキナを更にぎゅーっとしている。
「ミキね!星のある場所知ってるよ!パパに昔聞いたのー。」
「本当?」
「うん!」
ーーミキは、ここ最近の記憶が無い。
封印したい思い出だったからか、辛すぎた現実から身を守る為に記憶を自ら消したのか、それは分からないけれど。ミキの言葉にタクミも聞き返す。
「どこなの?ミキ。」
その言葉を聞いて、ミキはタクミをジト目で見つめる。
「お兄ちゃんも聞いていたはずなんですけどー・・・。」
あはは・・・と、困ったような笑顔を浮かべながらタクミはごめんのジェスチャーをする。。
「ごめん、覚えてないよ。」
「えぇー!」
「まあ、目的地があるなら、そこに行ってみようぜ。ん?てか、その感じだとタクミやミキも行くような言い方だな。」
ミキが、今度はオレの背中に回り込んでから、唐突に抱きついてくる。
「お、おいミキ、こういうのはユキナにしなさいって言ってるだろ!」
「じーっ。」
ユキナがジト目でこちらを睨んでいる。
「いや、オレは何もやってないだろう・・・。」
ユキナとオレのいざこざを気にすることなく、ミキは説教をするように人差し指を立てる。けれどくっついているままなので、背中の感触が柔らかくてヤバい。
「だって、私しか場所が分かんないなら、一緒に行くしかないでしょ!お兄ちゃんも行くよね?」
タクミが当然のように頷く。
「僕たちには、この町で暮らすにはちょっとツラいかな。よかったら、別の町でこれからのことを考えたいかな。それと・・・。」
そこで言葉を遮るようにユキナがタクミに手をかざしている。そしてユキナはオレの背後に回り込むと、オレにくっつくミキを引きはがす。
「むやみやたらにカズマに・・・というか男にくっつくもんじゃありません。」
「えー。なんでー。私、カズマのこと好きだよ?」
「!!?」
全員が電撃を食らったように白目になっている。真っ先に我に帰ったオレは、女の子に好きと言われてオドオドしている。
ーーいや、もうユキナから告白経験済(?)だけれど。
全員我に帰り、そしてユキナはまたムっとしている。そして、とても強い口調で言い放つ。
「・・・ちょっと・・・カズマくん?」
その言葉を聞いて、ドキッとしつつ、オドオドしながらユキナを見やる。
「お・・・おい、オレは何も言ってないだろ!」
「・・・ふん。」
ユキナがそっぽを向くと、ミキは言葉を続ける。。
「へへへー。安心して、私は、ユキナも好きだよー。もちろん、お兄ちゃんも。」
おそらく全員が胸を撫で下ろしたであろう、その台詞を聞いて、タクミは少し目が潤んでいた。
「そうか・・・ミキ・・・。お兄ちゃんも、ミキが大好きだよ!!」
ーーそういう言い方は、少し怖いけれど・・・。
「じゃあ、私のことはどう思ってらっしゃるのかしら、タクミ様?」
ご飯の支度をしていたイリヤが部屋に入ってきた。
「あ、イリヤ・・・。いや、今のはそういう好きじゃなくて、みんな大好きだよって意味で・・・!」
「それは、つまり私のことも愛してくださる、という意味でしょうか?」
「あ、愛・・・!?」
挙動不審になりまくっているタクミをクスクスと笑うと、イリヤはタクミを見てにっこりと微笑む。
「冗談ですよ。けれど、この前のお返事、いつかちゃんと聞かせてくださいね。」
「うん。この旅が終わったら必ず・・・!」
ーー何の返事かは、なんとなく想像がつくが、まぁ今は聞かないでおいてやろう。
ユキナが話しを戻すように、コホンと咳をしてからみんなを見渡す。
「それはともかく、まあ確かにそうね。何だか色々あって、昔からこの4人でいるような感覚に感じられるわ。」
ユキナの言葉にオレも笑いながら頷く。
「あぁ、確かに。今更、別れるのも、なんだか変な感じだな。んじゃあ、4人で行くか。イリヤはどうする?」
イリヤはまるでタクミのように、困ったような顔で笑う。
「私は、星見ケ丘の人たちを元に戻す方法を探してみます。ヒョウドウの今後についても検討する必要がありますので。」
「そっか、なんだか悪いな、めんどくさいこと全部押し付けてしまって。」
「いえ、これは私達にしかできないことですので。」
「わかった。よろしくたのむ。」
そして、各々、顔を見合わせてから共に頷く。
「じゃあ、ミキの知っているという新たな星を求めて、出発しますか。」
新たに加わったメンバと共に旅へ。
4人で見つける。いつか、必ず。
そう、私たちの星を探す旅は、これからも続く。
第一幕 完