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全マシ。チートを貰った俺の領地経営勇者伝 -いつかはもふもふの国-  作者: のみかん@遠野蜜柑
『領地経営』編

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第80話『人間とは複雑な生き物である。』



 悪酔いから覚めたゴルディオン氏はニコルコを訪れた経緯をポツポツと語り始めた。


「ワシは確かにミエルダ王国の勇者パーティに選ばれて旅に出ました。しかし、数週間ほど前に戦いの邪魔だと勇者殿に言われて追い出されてしまったのです……」


「な、なんですって!? ゴルディオン殿が邪魔!? ありえないだろう!」


「まあまあ、エレン、落ち着いて落ち着いて……」


 エレンを宥め、ゴルディオン爺さんから話の続きを聞く。


 ゴルディオン氏曰く、最初の頃は戦闘に慣れていない勇者を守りながら前衛で戦い、さらに剣の稽古をつけてやったりと頼りにされていたらしい。


「勇者殿は教えれば教えるだけ剣の腕が上がっていくもので。これは立派な武人になれるぞと思いまして。ワシは指導にかつてないほど熱を入れていたのです……」


 だが、勇者は剣の才能こそあったものの覇気に欠ける部分が多くあったのだという。


 ゴルディオン氏は精神面を鍛えるため生活態度から細かく言及し、剣の指導でもあえて厳しい言葉をかけて勇者の奮起を促してビシバシ鍛えた。


「勇者殿はメキメキと力を上げていき、やがてワシよりも強くなりました。すると、お前はもう用済みだから出て行けと……」


 嗚咽を漏らすゴルディオン氏。

 ゴルディオン氏に感情移入して目頭を押さえるエレン。

 いやぁ、なんだかなぁ……。


 思うところはあるけど最後まで聞くとしよう。


「勇者パーティをクビになったワシはおめおめと国に帰るわけにもいかず、かといって何をすればいいかもわからず。こうして誰も知り合いのいない辺境の地で飲んだくれていたというわけです……」


 なるほどね。

 ミエルダ王国ってウンコしてて選ばれたヤリチン大学生が行ったところか?

 あのヤリチンは見るからにウェーイな感じだったもんな。


 根性論とか間違いなく嫌いだろう。


「親身になって稽古をつけてくれたゴルディオン殿を邪魔者扱いするとは! ミエルダ王国の勇者には恩義を感じる心というものがないのか! ヒロオカ殿なら絶対そんな真似はしないのに!」


 プンスカと怒りを露わにするエレン。

 なんか俺の人格面が謎の高評価されてる。

 俺だって知らない世界に連れてこられて軍隊式のシゴキされたら普通に嫌だよ……。


 まあ、鍛えてもらった結果強くなって、弱いときは守ってもらったりで一応は世話になってたのにあっさり追い出すのはヤリチンも意地が悪いかな。


 俺はチートがいきなり無敵だったから問題なかったけど、この世界って子供が奴隷になっちゃうくらいにはシビアだし。


 現代の日本人がそのままの舐めた調子で生きてたら軽く死ねる。


 ヤリチンは最初から強いわけじゃなかったぽいし、まずは性根を叩き直そうと考えたゴルディオン氏の方針はあながち間違ってたとも言えないだろう。


 なんつーか、愛の鞭は相手に理解されないと難しいね。

 パワハラも受けた側が認識しなきゃパワハラにならないっていうし。

 人間とは複雑な生き物である。


「なあ、ヒロオカ殿……」


 エレンがコソコソ小さく耳打ちしてくる。


 なんだよ、吐息が耳に当たってくすぐったいぞ。


「ゴルディオン殿をニコルコの騎士団長することはできないか……? ちょうどゴードンがいなくなって空席だっただろう?」


 そういえば騎士団を引っ張っていける人材が欲しかったんだっけ。


 他国で団長やってたベテラン騎士って適役じゃん。


「俺は構わないけど……エレンはどうなんだ?」


「ん? 私が何か?」


「今まで騎士団をまとめてたのはエレンだろう。他のやつにやらせていいのか?」


「私は代理で引き受けていただけにすぎない。正直、私では力不足な面もあったし……。多くの騎士を育ててきたゴルディオン殿ならヒロオカ殿に相応しい格式高い騎士団に導いてくれるはずだ」


 エレンがそう言うなら……。

 てか、俺に相応しいってなんだろう?

 まあええか。


「えーと、ゴルディオンさん? よかったらウチで騎士団長やらない?」


「むむ……? お主は一体……?」


 俺がスカウトすると、ゴルディオン氏は訝しそうに首を捻った。

 そういや自己紹介してなかったね。

 ちぃーっす、広岡二郎です。


 この世界ではジロー・ヒョロイカです。


「ゴルディオン殿、ヒロオカ殿は公国の勇者でニコルコの領主なのですよ」


「なんと!? 公国の勇者殿でいらしたか! しかも領主とな!?」


 俺は魔王討伐の報酬で領地を貰ったこと。

 賠償金のことなどをゴルディオン氏に説明した。

 国王が魔王と繋がっていた可能性とかは話さなかったけど。


 それはまた、おいおいってことでね。


「私は魔王軍との戦いでウレアの街を救ってくれたヒロオカ殿をサポートするため、父の指示で領地経営を手伝っているのです」


「なるほど、そうだったのですか……。いやぁ、こんなところにいるのでワシはてっきりエレオノール嬢がこちらの領地に嫁いできたのかと思っておりましたぞ!」


 こ ん な と こ ろ 。


「と、とつ……っ!? そんなわけないでしょう! ゴルディオン殿、やめてください!」


「ガハハッ! 冗談ですぞい!」


 慌てふためくエレンと豪快に笑うゴルディオン爺さん。

 年配者によくある無神経ジョークが炸裂してらぁ……。

 こういうところもヤリチン大学生にウザがられてたんじゃないかな。


 それはそれとして。


「ウチはちゃんとした騎士団の空気を知ってる人がいないから、あんたみたいな人がいてくれると助かる」


「左様でございますか……。いいでしょう。このような厄介払いされた老いぼれを必要としてくださるなら是非とも力になりましょう」


 ゴルディオン氏は仰々しく頷いて俺の要請を了承した。


 ヤリチン大学生が戦力外にしてくれたおかげで他国の騎士団長だった人材をハンティングすることに成功したぜ。



「手を差し伸べてくださった御恩は全身全霊で返させて頂きまするッ!」



 ムキムキムキィッと筋肉を膨らませ、マッチョジジイことゴルディオン・トマホークはニコルコの騎士団長に就任した。






 翌日。


「これしきのことでへばってどうする! よいか、ワシの若い頃は――」


 騎士団長に就任したゴルディオンはニコルコの騎士たちを早速鍛え直していた。

 微妙に老害っぽい言い回しをしてるのがちょっと気になったが……。

 軍隊だし、あんなもんでいいのか?


 ちなみにゴルディオンの訓練にはなぜかエレンも参加していた。



「民を守るため、さらに強くなれるのだ! これほど喜ばしいことはない!」



 汗だくで泥まみれでヘトヘトになりながら、それでも彼女はとても幸せそうだった。


 俺には理解できない世界だ……。





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