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第52話『言われなくてもってやつだよ』


「ふむふむ」


 シリウス氏は俺に理由を語り出した。

 どうやら俺の思っていた通り、王たちは魔王軍と繋がっていたらしい。

 しかも魔王軍と一緒になって他国に侵略を目論んでたとか。


 やべえやつらだな。


 え、俺を略奪召喚させたのどころか、シリウス氏を処刑したのも連中との契約に従った結果?


 うわあ……。


 おまけに魔王へ魔法陣を提供したやつが今は王の庇護のもと城に滞在してる?



「あのバカデブ王、何考えてんだ?」


『きっと何も考えてないんだろうね。前も有能じゃなかったけど、無能ではなかったのに』


「割と言うね……」


 爽やかな口調なのにシビアに評価してるのが怖い。


『魔王が死んでいるのにハルンケア8世に接触を図るということは、そいつはまだ何かよからぬ企みをしているからだと思うんだ。やつが堂々と王城にやってきたのは僕が処刑され、勇者である君が辺境に飛ばされるとわかったからだろう。もし、僕が生きているとなればやつは警戒して姿をくらましてしまうかもしれない』


「だから姿を見せるわけにはいかないと?」


『そう、せっかくハルンケア8世の周辺にいる腐った連中を芋づる式に追い落とせるチャンスなんだ。ここを逃せば大義名分が失われてしまう』


「やけにこだわってるんだな……」


『これは王がどうとかじゃなく、公国全体の危機にもなりかねないことだからね? あと、僕を処刑して家族を泣かせた報いはちゃんと受けてもらわないと……。あいつら昔から僕の妻と娘をイヤらしい目で見たりするから気に入らなかったんだよ』


 恐らく後半部分が本音の理由だな。

 恨みパワーってすごいよなぁ!?


「……で、その魔法陣を提供したのはどういうやつかわかってるのか?」


『僕も召喚獣を使って嗅ぎ回ってるんだけど、やつは痕跡をほとんど残していなくてさ』


 困ったようにシリウス氏は言う。

 鳥が翼で頭を撫でてる姿はシュールだ。


『能力的に考えられるのは大聖国の聖女、共和国のエルフ、帝国の魔術師とかなんだけど……。彼らが国を留守にしてまでハルン公国に関わるとは思えない。そうなると人知れず力を備えていた第三者の可能性も十分あるんだが……』


 要するに手掛かりなしってことか。

 厄介だな。


『だから、デルフィーヌにも魔法陣の解析はするように言ってほしい。いざ糾弾するにも解析ができているか否かでは大きく印象が異なってくる』


「……ああ、わかったよ」


 けど、今は落ち込んでるからちゃんと元気になったらな。


『その辺の裁量は君に任せる』


「おう、任された」


 そんな感じで、わけを聞くと、まあまあ納得しなければないことだった。

 とはいっても、家族にくらいは――

 いや、だからこそか。


 秘密ってやつはどこから漏れるかわからんものだ。





『それとヒョロイカ君……。重ね重ねで済まないんだけど。僕が姿を見せられるようになるまで君が娘を守っていてはくれないだろうか?』


 申し訳なさそうにシリウス氏が言ってくる。

 一応、傍にいてやれない罪悪感みたいなのは持ってるのか。


「そんなもん、言われなくてもってやつだよ」


『そうか、ありがとう……。あ、なんならフィーを嫁にどうだい? 少し意識が高いところはあるけど、あの子は決めた相手には尽くすタイプだと思うんだ!』


「俺は当人の意思を無視した結婚には否定的な国からきたんで遠慮しておきます」


『ふうん? でも、フィーは多分嫌がらないと思うよ? 無理にとは言わないけどさ』


 本気で言ってるのか不明な口調である。

 この掴みどころのない性格は少し苦手だ……。



『おっと、そろそろだね……。僕はこの辺で失礼するよ。また近いうちに会おう!』


「ん? ああ……?」

 

 ガチャ。


 バサバサッ。鳥が去って行く。



「ジロー様。デルフィーヌが城から戻りましたよ」



 ドアが開き、ベルナデットが顔を出した。


「誰かいたんですか?」


「いいや……」


「そうですか。おかしいですね……」


 ベルナデットは勘が鋭いな。


 まあとにかく、ほんじゃ、行くとしますかね。

 俺の領地に。



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