第21話『厳しい立場』
「ちょっと待ってほしい。失礼かもしれないが、ヒロオカ殿はなぜフィー……デルフィーヌと組もうと?」
エレンが訝しそうな目で俺を見据え、口を挟んできた。
なんだ? 面接か? 志望動機とか必要な感じか?
「ヒロオカ殿、フィーはその……言いづらいがハルン公国内では厳しい立場にある。下心を持った安請け合いならやめたほうがいい」
ほう、下心だと?
俺がそんな浅ましい男に見えるのか?
「ジロー様になんと失礼なことを……ッ!」
ベルナデットがそう呟いた。
…………。
なんか否定しづらくなったじゃねーか。
いや、別にもふもふは下心じゃないけどさ?
「厳しい立場ってなんだ? なんかやばいの?」
俺はエレンに訊いてみる。
さっきデルフィーヌ本人もなんか言ってたよな?
エレンはとつとつと語り出す。
「彼女の父、シリウス氏は勇者召喚に失敗して陛下の怒りを買ってしまったのだ。シリウス氏の娘であるデルフィーヌと親しくすれば同じように王族から敵視される可能性がある。国民は皆そう考え、誰も彼女と関わろうとしない。デルフィーヌと行動を共にするということは国全体から疎まれる存在になりかねないということだ」
「それマジ……?」
「ええ、王族や貴族の目を気にして誰もわたしとパーティを組んでくれなかったわ」
デルフィーヌは肩を竦めて言う。
なるほど、だから彼女は一人で森に挑んでいたのか。
思ったよりひでぇ感じだ。
公的に認められたいじめかよ。
けど……。
「それって、王のもとに魔王の首を持っていけば解決するんだろ?」
「「えっ?」」
デルフィーヌとエレンの声が重なった。
「違うのか?」
「違わないけど……。確かに魔王を倒せば家名の再興も許されて、陛下からお許しを頂けることになっているけど……?」
「なら何も問題ないじゃん」
すでに魔王は討ち取っているのだからな。
デルフィーヌに右から左へ流すだけの簡単なお仕事だ。
俺が単独で持って行けば褒賞を独り占めできるけど、すでに金は腐るほどある。
余裕をちょっと切り与えるだけで一人の少女の人生が救われるなら絶対にそっちを選んだほうがいいはず。
「「…………」」
そんな俺の思惑を知らないエレンとデルフィーヌは沈黙している。
何言ってんだコイツって思ってそうだな……。
面倒くせーやつらだ。
素直に信じればいいのに!
何はともあれ。話はまとまった。
まとまったのか? まあいい。
俺たちはパーティを組むことになった。
「じゃ、よろしくな、デルフィーヌ」
「え、ええ……」
どこか腑に落ちない様子のデルフィーヌと握手を交わす。
ベルナデットはムスっと不満そうに見つめていた。
変なところで我が強くなりおって……。
「ま、待ってくれ! ヒロオカ殿がそこまでの覚悟なら私にも手伝わせてくれ!」
「エ、エレン……あなた……」
エレンの言葉にデルフィーヌが涙ぐむ。
だったらお前、最初から一緒に森に行ってやれよ……とかは言わないほうがいいのだろう。
かつて女に正論を振りかざして総スカンされた友人を俺は見ている。




