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全マシ。チートを貰った俺の領地経営勇者伝 -いつかはもふもふの国-  作者: のみかん@遠野蜜柑
『領地経営』編

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第103話『オットナリー・ネイバーフッド伯爵』

間違えて104話を先に投稿していることに気が付いて103話を挿入しました。

八月二十九日より前に最新話を読まれた方はご確認下さい。


申し訳ありませんでした。





 ニコルコに続く街道を走る1台の馬車があった。


 護衛の騎士に囲まれ、それなりに装飾がされているその馬車に乗るのはニコルコの隣領を治めているオットナリー・ネイバーフッド伯爵だった。


 彼は王城からの密命を受けてニコルコに向かっていた。


「まったく、伝統あるネイバーフッド家の当主たる私が名目上の理由とはいえ成り上がり者の機嫌を窺いに行くハメになるとは……」


 密命を受けているネイバーフッド伯爵だが、表向きの理由は隣領の伯爵としてヒョロイカに挨拶をしに行くというもの。


 この建前にネイバーフッド伯爵は激しい屈辱を感じていた。


 ネイバーフッド家はさほど領地も栄えていない地方貴族だが、何代も続いているハルン公国で古参に類する貴族家のひとつである。


 逆に言えば長く続いているだけとも言えるが……。

 ネイバーフッド家にとって、家の歴史が長いことは唯一の誇り。

 そして、ネイバーフッド伯爵にとって伝統こそが優劣の判断基準だった。


 要するに――


 彼にとって、貴族になりたてのヒョロイカは爵位が上でも下の下と見做す対象なのだ。


 そんな相手に形だけとはいえ自分から擦り寄って行く真似をしなければならない――



 古参ということにプライドを持つネイバーフッド伯爵には耐え難いことだった。



「しかし、陛下もどういうわけか魔王を倒した英雄を好いてはおらんようだがな」



 ネイバーフッド伯爵に与えられた指示はヒョロイカの領地を訪問して、そこで反逆の疑いになる要素を見つけて必ず報告せよというもの。


 疑いになる要素を見つけて『必ず』報告せよ――


 即ち、中央がヒョロイカに干渉するための取っ掛かりを適当に作れというのが本題だった。


「ヒョロイカは騎士団の装備を新調していた、王都侵攻の用意を進めている可能性がある――などと言わねばならんのか……」


 ネイバーフッド伯爵は大きく溜息を吐く。


 自分に発言をさせ、それをきっかけに調査に入って冤罪に陥れる腹積もりなのだろう。


 正直に言えば、ネイバーフッド伯爵はこのような話に関わりたくはなかった。

 確かに成り上がって地位を得たヒョロイカに思うところはある。

 だが、それでも危ない橋を渡ってまで何かしてやろうとは思わない。


 ヒョロイカが勇者召喚に失敗した公国を救ったのは事実だし。

 そもそも、そんなことをしている暇はないというべきか。

 ネイバーフッド家は貴族としての品格を辛うじて保てる程度にしか余裕がない。


 だから、気に入らない相手とはいえ他者の足を引っ張ることを考えているくらいなら目先の領地収入について頭を悩ませなくてはならないのだ。


 しかし、そうであってもネイバーフッド伯爵は断るという選択肢を選べなかった。

 拒否して中央に睨まれれば長く続いているだけの伯爵家など容易く消されてしまうからだ。

 万が一のときは都合よく責任を押し付けられるだけの駒に選ばれたとわかっていても。


 公国で生きていくためには従う他ないのである。



「一体、陛下は何を考えておられるのだろうな……」



 魔王を倒した英雄を貶めて公国に一体何の利益があるのか?

 筆頭魔導士のドランスフィールドを召喚失敗の咎で処刑したこともそうだが。

 短絡的に力のある人間を潰していけば国力が低下するだけだというのに。


「まあ、私が考えても仕方のないことだな」


 諦めたネイバーフッド伯爵は、これから行く田舎領地ではどのように質素で粗末な歓待があるのだろうかということに意識を向け始めた。



 ネイバーフッド伯爵を乗せた馬車はニコルコを目指して行く。




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