第99話『あたしの力を見てひれ伏しなさい!』
「そーゆーわけで、あたしを雇ってお給料ちょうだいよ」
元(?)聖女のスチルが図々しく催促してくる。
俺は何がそういうわけだ、という言葉を飲み込んで、
「雇えと言われてもな。お前は何ができる? メイドなら間に合ってるぜ?」
彼女が情報をどこまで隠匿するつもりなのか気になったのでカマをかけてみる。
すると、
「あたしは貴族なら是が非でも手元に置いておきたいはずの魔法が使えるわ! 聞いて驚きなさい! あたしが使えるのは『回復魔法』よ!」
「回復魔法か……」
ステータス見たから知ってたけど。その辺りはバラしていくんだな。
「あれ? あんまり驚かないのね?」
「いや、そんなことはないぞ」
「……まあいいわ。で、どう? あたしに仕官して欲しくなったんじゃない?」
正直、調子乗ってる感じでウザいからあまり気は進まないが……。
ただ、聖女という回復魔法の第一人者がいれば回復魔法を使う子供たちのお手本というか、指針みたいなものになるのではないか?
レベルこそ低かったけど神聖ってすごそうな前置きついてるし。
きっと普通の回復魔法より効力も高いはず。
能力的に考えれば引き入れて損な人材ではないと思う。
雇ったらダスクが騎士団の勧誘を辞退した意味がなくなる気もするけど。
そこらへんは彼女たちの事情なので俺は考慮しないでおこう。
俺が採用を告げると、
「じゃ、年棒10億ゴールド、週休三日でよろしくね!」
スチルは両手でダブルピースをしながらふざけた条件を提示してきた。
10億? 週休三日? ちょっと吹っ掛けてきすぎじゃないですかね……。
なんや、この銭闘民族は……。
新聞社や携帯電話会社のプロ野球チームでも出さない金額だぞ。
あえて高めなことを最初に言うハイボールなんちゃらって交渉術かもと思ったが。
見た感じ、これで行けると確信してそうな様子だ。
神聖回復魔法というのはそこまで価値のあるスキルなのか?
でも、ビッチJKのチートよりは劣ってるわけだろ?
「回復魔法の使い手はすでにそこそこ優秀なのが何人かいるからなぁ……。お前の能力が未知数な段階で要求通りにはできないな」
どんなに優れてても10億とか絶対無理だけど。
「はあ? こんな田舎に優秀なヒーラーが何人もいるっていうの?」
「まあ、な」
「んむぅ……」
スチルが頬を膨らませて不快そうに唸る。
どうやら俺が二つ返事で飛びつくと思っていたようだ。
辺境だからって舐めんなよ!
「あ、わかったわ! これがハッタリで駆け引きするってやつね! そうなんでしょ? 前に外交官……じゃなくて、知り合いが言ってたわ!」
ハッタリではないんだけどなぁ。
「いいの? あたしの回復魔法はね、そんじょそこらの連中とはレベルが違うすごいやつなんだから! ……あの女には敵わなかったけど」
ボソッと最後に付け加える。
聞こえてるぞ。
「じゃ、これから俺に力を見せてくれ。その能力次第で待遇を考えよう」
「ぶうううううううっ! だからなんでそんな余裕ぶってるのよ! 何としてでも逃がさないようにとか思ったりしないわけ? あたしはすごいのよ! こんな田舎の領主に仕官しに来ること自体が奇跡の――」
◇◇◇◇◇
冒険者ギルドにきた。
スチルがうるさかったので転移を使いましたよ。
「はえっ? うえっ!? なんで? ここどこ!? 一瞬で違うところに移動した!?」
ふふっ。
説明をせずに連れてきたから急に風景が変わって焦っとるな。
これでしばらくは彼女のビッグマウスも止まるだろう。
新築のギルド、綺麗でいいな、なんて周囲を見渡していると。
「りょうしゅさま。いらしていたのですか」
ギルドに治療役として出張してきていたアンナが挨拶に来た。
「お、アンナ。どうだヒーラーの仕事は。順調か?」
「はい、みなさんにありがとうって言われると、とてもうれしいです!」
「ねえ、まさかこんな小さな子が優秀な回復魔法の使い手なの?」
平常心に戻ったらしいスチルが疑わしそうに訊いてくる。
「ああ、そうだよ」
「ふぅん?」
あんま信じてないな。
まあ、聖女なお前ほどじゃないかもしれんが。
それでも伸び盛りだから将来的には抜かすかもしれんぞ、と心の中で言っておく。
「そろそろギルドに冒険者たちが戻ってくる頃だから、その治療をアンナと一緒にやってくれ。それが実力テストだ」
「いいわ! あたしの力を見てひれ伏しなさい!」
スチルは自信満々に返事をした。




