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第10話『ウィンウィンだな』




 翌朝。目が覚めるとシーツがびっしょり濡れていた。

 ウッソだろお前、25歳にもなってそんな……。


「ふえぇん……ごめんなさい、ご主人様……」


 俺じゃなかった。ベルナデットが隣で泣きべそをかいていた。

 そんなに気にすんなよ、俺なんて小6まで漏らしてたんだから。

 これ、オフレコな。


「汚れただろ、シャワー浴びて来いよ」


 俺、こいつにこればっかり言ってる気がする。


「え、でも……」


「いいから行ってこいって!」


「は、はい!」


 バタバタと浴室に駆け込んでいくベルナデット。

 やれやれ……あ、浄化魔法で綺麗にしてあげればよかったんじゃん。

 昨日から学習してねえな、俺。


 まあ、魔法よりお湯で流したほうが心のリフレッシュになるから。

 精神的な浄化は魔法じゃできないからさ。

 ちょっと上手いこと言えたかも。


 濡れたシーツはどうしよう。これ、マットまで染みてるよ。

 浄化魔法で綺麗にしておけば大丈夫かな。

 でもビチャビチャになったのは戻せないよなぁ……。


 後で従業員の人に謝っておこう。

 ……とばっちりで湿ったズボンが煩わしい。

 ベルナデットが出てきたら俺も風呂に入ろう。





「うわ、本当に買ったんだ。しかもそんな小さな子を……サイテー」


 朝飯を食う店を探していたら店先を掃除していたバーテンダーの娘に出くわした。

 おお、怖い。ゴミを見る目ですわ。


「……こんな子供を手籠めにしたわけ?」


「手籠めって誤解を招く言い方すんなよ。そういう目的じゃないのに」


「……何もしてないの?」


「何もしてないよ。ちょっと尻尾触っただけ。それも泣かれたからすぐやめたし」


「尻尾は触ったのね……。でも、そっか、よかった……」


 奴隷を買えっつったのお前じゃん。今頃善人ぶるなよ。

 女は都合よく立場を二転三転させる生き物だ。


「で、どうすんの? 尻尾触るために買ったんでしょ?」


「そうなんだよ。もふれないなら奴隷として囲ってる必要ないんだよな。だから自立できるように教育してさっさと解放しようかなって」


「ふーん? 返品とかしないんだ。高かったんじゃないの?」


「うん、まあな。けど奴隷商に返すのも可哀想じゃん」


 せいぜい奴隷に優しくして解放までしちゃう俺カッケープレイでもさせてもらおうか。


 どうせこれから10億以上入ってくる予定なのだ。


 200万ゴールドなんて端金よ。


 けど、大物感を出すため黙っておく。


 俺を奴隷の子のために大金を投げ捨てられる聖人と勘違いして崇めろ、犬娘。


「あんた、思ったよりイイヤツなのね。ちょっと見直したよ」


「じゃ、尻尾もふらせてくれる?」


「調子に乗んじゃないよッ! ガウ――ッ!!」


「おおっ?」


 めっちゃ唸られた。バーテン看板少女の尻尾は激しく膨らんで逆立っていた。


 調子に乗って怒らせちゃった。


「ふえぇん……」


 なぜかベルナデットが泣いた。

 看板少女の威嚇がよっぽど怖かったのか。

 あーあ、やっちまったな。知らんぞ。


「ご、ごめんよぅ。君に怒鳴ったんじゃないんだよぉ」


 バーの看板娘はビービー泣く幼女にオタオタしながら謝っていた。

 今頃取り繕っても遅いぞ。


 子供を泣かした鬼畜め。


 ……俺も昨日泣かせたんだったわ。





「こ、これ本当に食べてもいいんですか!?」


「ああ……しっかり食え」


 看板娘に教えてもらったお勧めの飯屋で俺たちは朝食を摂っていた。

 目の前に置かれたお子様ランチを見てベルナデットの表情がぱぁっと明るくなる。


「……はむはむ」


「おかわりもいいぞ」


「……おいしい、おいしいよう」


「遠慮するな。今までの分も食え……」


 涙を流しながら食べる猫耳幼女。

 おいしいものを好きなだけ食べられて満足そうだ。

 これまでの食生活はよほど酷かったのだろう。


 俺も一度やってみたかったやり取りができて大満足。

 ウィンウィンだな。

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