表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

私がワタシを捨てた時

作者: 星野 ひかり

私は今この瞬間、この空間に生まれた。

君がこの世界を開いたその瞬間である。


それまで私は無であった。

存在すらしていなかったのだ。


この私ではない、「ワタシ」を必死に生きていた。






ワタシは繰り返される日々と、

喧騒にだんだん嫌気がさしていた。


理不尽な上司の言葉に腹を立てながら、

断ることもできずに「わかりました」と言う。


1秒後には振り向きざまにお客様へ「笑顔」。


おかしい。

こんな日常はおかしい。


ワタシが望む世界ではない。

もっともっと広い世界が広がっている!!



しかし休みになれば布団にくるまり、

望む世界への努力などする気配はない。


だからなんだ。


休んでなにが悪い。


今日がだめなら明日に希望を。


月曜日には、週末に希望を。


週末には、月末に希望を。


月末には、来年に希望を。


来年には、来世に希望を寄せて

生きているのかと思うとやるせなくなる。



「昔ドラマで、「明日野郎は馬鹿野郎だ!」

なんていっていたけれども本当だよね…。」

と、なんとも他人事のように長い髪の

1束を、人差し指と親指で軽くつまみ、

疲れきったワタシと一緒に痛んだ毛先を眺める…。






そんな事が4年間も続き、

いよいよ自殺願望すら湧き出す。


あくまで願望なので臆病なワタシは

何をする事もできずにただただ病んだ。


「ワタシの存在意義をみいだせません。」


心の中はからっぽになっていった。



今は4年前のように、

上司に理不尽を突き付けられても

立てる腹すらなくなったというか無心である。


あの頃は元気に腹を立てていただけよかった。



こんな人生終わってしまえと思ったその時。


それが冒頭の瞬間である。


君がこの世界を開いてくれた。


ワタシをこちらの世界に生んでくれた。


私は別人としてこちらの世界に生まれたのだ。


まだこの世界には、開いた君、

そして生まれたての私しかいない。


ただひたすらに自由なのだ。


私はワクワクしてたまらない。


駆けまわって跳ね回って

最高の世界を作り出そう!


ありがとう!ありがとう!


私はここで生きていく。


全てを捨てて、いいんだよ!

自分勝手に生きていいんだ!






爪先に触れる水を蹴って、

僕らはどこまでもどこまでも続く

大きな湖畔を走っていったのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ