デート
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「ねぇ、一昨日となんか変わったと思わない?」
「……そうか?」
無駄に間を取ったのに、「何も変わってない」ですって?!
いつもはポニーテールだけど今日は編み込みが入ってるの。
今日はちょっと奮発して買ったヒールなの。
手を差し出してるんだから、察してよ!
私がふくれっ面をして「気づいてよ」と言うと貴方は困り顔で
「わがまま言うなよ。」
と言っくる。
だけどね、わがままなんていってないのよ?
私は貴方にただ「可愛いね」って言ってほしいだけ。
「どこ行く?」
「ケーキ食べたい…今すぐ食べたい。」
貴方は微笑むと私の手を引いて歩き出す。
「?!」
彼が不意打ちで手を握ってきたの事で、色々な感情が混じって声にならない叫び声をあげた。
私の顔を見てドヤ顔をしてくるあなたの顔、少しムカつく…
「…それでね、って聞いてるの?」
注文したモンブランを頬張りながら、私は貴方に聞く。
「聞いてるぞ。」
貴方は澄ました顔で言ってくる。
「じゃあ、何の話だった?」
「…上司がウザイだっけ?」
少し考えてから貴方は答える。
「聞いてなかったでしょ。同僚の円が結婚する話してたの!」
貴方は「そうだったか?」と首を傾げる。
ちゃんと話聞いてよ。
「ねぇ、そんなに甘い物ばっかり食べてると太るぞ。」
「なっ?!」
でも、言われてみればそうだと思う。
今私は、モンブランが食べ終わったので新しく注文したフルーツタルトを食べていた。
これは…私、太っちゃう?
私はフルーツタルトを食べるのをやめた。
「食べないのか?」
貴方は私がタルトを食べないのを、体調不良だと思ったのか1口サイズに切ったタルトの刺さったフォークを私の口元に差し出してくる。
いわゆるアーン状態だ。
これは食べないと損…
ダメダメ!
食べないって決めたんだから!
ナイスボディになって、「太るぞ」って言ったの後悔させるんだから!
そのために、今はケーキもアイスもぜーんぶ封印。
覚悟してね?
「帰るか。」
結局、私のフルーツタルトは貴方の胃袋に収まっちゃった。
まぁでも、いつかあのフルーツタルトもう1回食べるからいいもん。
そんなことを考えていると、不意に抱きしめられた。
「?!」
「危ないだろ?」
貴方が耳元で囁く。
離れると道路側に立って歩いてくれる。
それどころかさり気なく手を繋いでくれる。
貴方を見ると耳が少し赤くなってる。
ポーカーフェイスを装ってるけど、本当は照れてるのね。
口に出さないだけで、私をお姫様扱いしてくれる貴方が大好き。
だから、明日もお姫様扱いしてね?