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第十五話


奴隷、フランカの両目は治った。

どうしてかわからないけど、どうしてか呪文が使えて。


ロレッタやフランカ曰く、俺の使ったのは無詠唱。基本的に魔術は詠唱がなくては使えないはずなのにも関わらず、俺は無詠唱で魔術を使うことができた。

しかも、使った魔術は回復魔法の中でも最上級にあたる復活魔法、『リザレクション』だ。

本来ならば回復魔法を専門的に扱う『聖魔術師』と呼ばれる人々が長々とした詠唱を何時間も続けてやっと出来るものらしい。

しかもそれは何年も前に死んだ人とか、失った視力、切り落とされた腕などは治らない。

だからこそ俺のしたことは異常なのだ。


「天使と悪魔のハーフだからこそ、なのでしょうか」

「いや、俺にも皆目見当がつかない」

「そうですか…でも、さすがカナメ様って感じですぅ!」

「…です」


さきほど泣いたことが恥ずかしかったのか、それとも生来の性質なのか、フランカは無口だった。

あまりしゃべらない子っていうのも可愛いと思う。

俺が時々視線を向けると、恥ずかしそうに目をそらすのも可愛い。


「これから先、調べていく必要がありそうだな」


俺がそういうと、フランカとロレッタはこくんと頷いた。


さて、今日はどうしようか。

もう日は落ちかけている。

明後日の朝にはもう、宿を出ようと思っているし、勇者の情報収集もしたいところだけど知っていることがありそうな人もいないだろう。

今日と明日はのんびりするか。


「とりあえず、今日と明日はゆっくりしていようと思う」

「かしこまりました」


ロレッタは丁寧にお辞儀をした後に少し首をかしげる。

そして、そっと彼女はフランカの手を引いた。


「そういえばこの宿には、大きな浴場があるらしいですよ?」

「浴場、か?」

「外にあって、大人数で入るものらしいです。私はフランカちゃんをお風呂にいれてきますが、カナメ様はどうしますか?」


大浴場。

つまりは温泉ということか。


「ああ、俺も後で向かうよ」

「はい、了解しました」


ロレッタがフランカの手を引いて歩き出す。

フランカとロレッタが仲良くなれているみたいでなんだかほほえましい。

まるで姉妹のようだ。


さて、大浴場に行くとしてもどうしようか。

魔剣や杖を置いていくのはいささか心もとない。

なら脱衣所まで持っていけばいいか、と剣と杖を持って大浴場に向かう。


大浴場は日本と同じように脱衣所が男女に分かれていた。

この時間、人は誰もいない。

服を脱いで、俺は浴場に向かった。


湯煙で視界が煙っている。

日本よりも硫黄の香りが強いような気がした。

軽く体を流してお湯に浸かる。ぐったりとした体をお湯の中に預けると、心がゆったりとしてくるような気分になる。

極楽極楽。


「…カナメ様、お背中流しましょうか?」


ゆったりした気分はその瞬間までだった。

俺は聞こえてきたロレッタの声にあわてて振り返る。

そこにはタオルひとつ纏っていないロレッタの姿と、フランカの姿があった。


「…っへ?」

「どうしましたぁ?カナメ様。お背中お流ししましょうか?って」

「…フランカもやる…」

「い、いや!遠慮する!」


フランカの褐色の身体には余計な凹凸もない。

何も纏っていないからこそわかったことだが、彼女の肋骨は浮き出ていて痛々しいほどだった。

それに対してロレッタは豊満な体つきをしている。

服の上から見たときにはわからなかったけれど、そこまで胸も小さいわけではないらしい。

っていうかここ混浴なのかよ。脱衣所わけた意味ってなんだよ。


楽しそうに寄り添って来ようとする二人。

俺の横に腰掛けて楽しげに話しかけるロレッタと、初めて見る大きな風呂に目をきらきらさせながら俺の横に座り込む。それに、腕に抱きついてくる。

エロゲみたいな状況だ。

フランカの肌はもちもちすべすべしていた。


「…俺はもう出る」

「えぇ、入ったばかりじゃあないですかぁ」

「魔王様から頂いたカルネテルを部屋に置いてきてしまった」

「…仕方ないの…」


俺は慌てて風呂を出た。

まさか混浴だなんて思ってなかった…。


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