3、頭の回転が加速装置。
どうも、こんばんは。矢暮です。
なんだか訳の分からないこんなエッセイもどきなんかに、こりずにお付き合いいただいている方々に感謝いたします。
今日は少しだけ足を踏み外して、
『僕が見たかったガンダム』
と称して、くだらないことを語ってゆきたいと思います。
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それはそうと、上記のテーマが何を意味するかというとですね、
僕はいわゆる〝トミノガンダム〟が好きです。
他のストーリーも面白いと思うのですが、トミノガンダムは僕にとって別格の存在です。
その理由につきましては、今度別の機会に語ることにいたしまして、
その〝トミノ哲学のガンダムストーリー〟をですね、
あの天才演出家の故〝出崎統監督〟で、ガンダムを創ったものを観てみたかったなぁ、と思う次第なのです。
いわゆる、〝ディック〟+〝リドリー・スコット〟=〝ブレードランナー〟みたいな?」
☆☆☆
時は宇宙世紀。とある古びたスペースコロニーの中に、人情の行き交うドヤ街がある。
その生活者たちのほとんどは、コロニー公社の下請けの日雇い人で構成されている。
そんな中で育った少年ナロ・ショーセッカは、作業用プチモビルスーツを動かせば、この辺りで右に出る者がいないほどの腕を持つ。
しかし、多少気が荒いのが玉に瑕。
そんなある日、ドヤ街に、ロココ調に装飾されたモビルスーツの軍団が降り立つ。
「あ、あれはプリセース財団の私設モビルスーツにちげぇねぇや!」
おののく住民を横目に、一人の高貴な美少女が胸のハッチからタラップを使い優雅に足をつける。
「ここにおられる住民の方々に、われらプリセース財団からの申し出があります。あなた方は、この旧態依然としたコロニーから直ちに撤収し、財団の所有するトンデーモコロニーに移住していただきます」
なんと、見目麗しい気品あふれる美少女の口から放たれた言葉は、人情であふれかえったドヤ街の住人たちには過酷なものであった。
「そ、そんな嘘っぱちなことってあるかい! 俺はそんなの認めねぇぞ!」
プリセース財団の強引なやり口に、ナロ少年はプチモビルで突進するが、
「キーシ・リキテル大尉! よしなに!」
と美少女の言葉と同時に、気品あふれる輸送艦から出てきたのは、これまた気品あふれるモビルスーツ〝モンマルトール〟。
その性能の違いと習熟度の違いから、ナロ少年の機体は秒殺されてしまう。
「うわぁーっ!!」
「己の立ち居地の違いというものを学んだだけでも有難いと思うのだな、少年」
「キーシ殿、あまり手荒な真似は」
「心得ております、マリーナル・アン・プリセース嬢。これでも私は、あなた様の高貴なるしもべにてございます」
そんなこんな状況を影から窺っていたのは、隻眼で体中が傷だらけの中年。その男の名は、あのリバイアサン戦役で〝虹色の月影〟の異名をとった伝説のモビルスーツ乗り、〝ダンケシェン・D・ダンプラー〟少佐の姿であった。
「こ、こいつはおどろいた! わ、わしは見たぞ! この目でとっくと見た! あのプチモビルで最新鋭の機体に挑む根性、そしてあの反射神経! これはわしのモビルスーツ乗り人生の中でも一二を争う逸材じゃわい!」
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もう、時間がないので悪乗りはこの辺までとします。
なぜか、コロニー内で穏やかに流れる一級河川と、夕焼けの河原の情景。そしてポンポン船。
ライバルとすれ違うときに演出される〝止め絵〟の三方向カット。
なぜか、ビームライフルを撃つと、ほとばしる汗がキラキラとたなびいたりなんかして。
そんな出崎演出の心の機微がにじみ出るような〝ガンダム〟が観たかったです。