2、現実を鏡のように、人の心も鏡のように。
こんばんは。矢暮です。
まったく、いつゆっくり休めるのか分からない状態でこういうのを書くと、気持ちに余裕ができないので、ものを考えるのに支障を来すのではないかと心配です。
どうせなら、若いときのようにアドレナリンが常時分泌してハイテンションな状態が続いていたほうがよいのではないかと思うときがありますよ。
などと、くだらない話題は置いといて。
☆☆☆
このエッセイもどきを、
『なぜパプテマス・シロッコは赤い彗星を“ニュータイプのなり損ない”と揶揄したのか?』
にしたのかというと、これを読まれている方々がお察しのとおり、僕は『ガンダム』が好きだからです。
べつにフィギュアを集めたりするような趣味などはありませんが、時どき自分の脳内に集積された映像が反芻されてそれを鑑賞したとき、
「なるほど、この物語はこういうことを現実とリンクして鏡のように踏まえて言いたかったんだな」
と、感心させられるからです。
☆☆☆
それで、さっき唐突に思い出したことがありましてですね。
僕は子供ころから、まったく名も知らぬ立場も分からぬ人と、街なかや公共の場で突然声を掛けられたりなんだりして、いろいろと長い時間話し込んだりしてしまう妙な特殊能力があることを、以前のエッセイもどきや活動報告などで紹介してきましたが、
この話も数年前にさかのぼります。
僕は仕事で外回りをしていたのですが、なにげなく休憩をしていると、ある年配の方がうろちょろとしているのが目に入りました。
そして目が合うと、僕にはその方が〝いかにも話を聞いて欲しそうな〟雰囲気をかもし出しているのが分かったので、
「どうも、こんにちは」
と、声を掛けたら、案の定その方は身の上話を延々とし始めたのです。
そしてベンチに腰掛け、何十分と話を聞くにつれて、その方がある機関の特殊部隊に身を置いた方であること。そして数年前に定年により退官したことを知るのでした。
まあ、僕にとっては、その話が嘘であろうと本当のことであろうとどちらでも良かったのですが、その方がご丁寧に自分の乗ってきた高級RV車の中から、証拠となるアルバムを持ち出してきて、過去の足跡などを説明し始めたので、これは真実であるということを確信せざるを得ませんでした。
それにしたって普通の方なら、そういう身の上話を「うざい」ぐらいに思うのかもしれませんが、僕は少しだけ変わっていて、そういう話は大好物。
ここぞとばかりに人間マニアとしての躍動が目を覚まし、興味津々に聞き入ってしまうのです。
しかし……
☆☆☆
しかしですね。
なんだかどうも話を聞いていても、その方の話しっぷりや表情から確固たる何かが伝わってこないのです。
この方の話す内容が嘘ではいことは分かるし、それだけの肩書きがあれば部隊〝エリート〟なわけですから、男としても人間としても、これだけのことをやってきたんだ、という自信もあるはずなのに、どうにもこの〝虚無的な〟なにかが拭えない。
それはなんなんだろう、と話を聞きつつ考えていると、
「ああ、なるほど!」
とひとつのキーワードが思い浮かんだのです。それは……
☆☆☆
〝実戦経験がない〟もしくは、〝実戦経験に乏しい〟
のではないかという憶測。
そう、日本は他の国に比べて比較的平和な国です。
だから、実際の作戦行動より、訓練に明け暮れるほうがはるかに多いはずです。
いや、その方が治安的には良いはずだし、その国の住みやすさがうかがわれるはずなんだけど、
そのプロフェッショナルに関わる人たちからすれば、
〝実戦経験のなさ〟
は、その人たちのアイデンティティを確実のものにしていないだけに、なにか空虚なものにしてしまうのかもしれない、と感じたわけです。
だから、その方は、どこかに言い知れぬ虚無感を覚えて、誰かに何かを認証してもらいたかったのかも知れない。
と、まあ、僕ごときが勝手に思ったわけなんですがね。
☆☆☆
これはZガンダムにおける、
〝ティターンズのジェリド・メサ中尉〟のジレンマとでも申しましょうか。
同じティターンズの〝ヤザン・ゲーブル中尉〟と比較すれば説明もつきます。
つまり、ヤザンは実戦経験も豊富で過剰なほどの自信に満ち溢れていますが、
同じエリート軍閥所属であっても、ジェリド中尉は当初は実戦経験が乏しくて、独断専攻に走り、空回りをして、ガキ扱いのカミーユにすら歯が立たないという描写が見られました。
☆☆☆
僕の中の哲学では、男という生き物は潜在的に女性より気持ちが弱くできていて、だけどその反面、とことん世間にもまれて鍛え上げられれば女性より伸びしろは大きく、はるかに器量を増す、と考えています。
それには、何らかの実戦経験を踏まえないと、男はそのアイデンティティを保つことができない。
しかしそれができなくて、補おうとする行為が〝虚勢を張るというものだったり、肩書きのみに頼ったりすることなのだと、
〝ティターンズ〟
は語っているのだと思うのです。
☆☆☆
やべ、もう時間がないので、今回はこの辺りで。
それではみなさん、またの機会に。
ありがとうございました。
(⌒∇⌒ゞ




