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出会い

「暑っ・・。」

太陽が輝いている炎天下の中、俺こと秋世晶は歩いていた。

「・・つたく、なんで補習なんか・・・」

そう。俺は今自分の通っている学校である緑聖高校の補習を受けた帰りだった。

緑聖高校はまあ普通の高校で、レベルもふつう、人数もふつう。

そんな高校に普通に入り、普通に1年間をすごし2度目の夏休み、今を迎えてるわけだ。

「おっ!」

視線の先には俺のオアシス「デパート秋坂」があった。さっそく俺はオアシスに飛び込んだ。

「ふ~。よみがえるぜ~。」

店内は冷房がガンガンにきいており、とても涼しかった。

さあーて、どうすっかな?とりあえず本屋にでも行ってみっか。


本屋に向かう途中、よく見知った顔をみかけた。あれは・・・薫?

近くに行ってみるとやはりそれは薫だった。


井上薫。俺の中学時代からの知り合いだ。良く言えば友達?悪く言えば腐れ縁である。

中学時代は俺と薫と勝平でよくばかやったけ・・。勝平についてはおいおい語るとして・・。

「おーい、薫―!」

振り向いたその顔はやっぱり薫だった。髪は肩にかかるくらいで目は大きくパッチリしている。世間でいう「美人」の部類に入るだろう。

「あっ、晶?どど、どうしてここに?」

 いきなりあらわれた俺に驚いたのか顔を真っ赤にしている。

薫が近づいてきて話しかけてくる。

「どうしたもこうしたもねーよ。補習だほしゅ・・。」

今頃になって気づいた。薫の隣に見知らぬ女子がいた。しばらく見つめていると

俺の視線に気づいたらしく、にっこりと笑ってくれた。

「あのさ薫、そのこ・・・。」

俺が薫に聞こうとした瞬間、

「やっばっ、もうこんな時間。次いかないと間に合わない!。」

薫が腕にした腕時計を見ながら叫んだ。

「ごめん晶。今、私たちショッピングの途中なの。早くいかにとしまっちゃう!。

 あそこ3時で閉まるのよね~。」

「あ、あぁ。それじゃーな。」

「うん、ごめんね。よしっ、いこっ奏!」

「う、うん。」

薫はその子の手を引いてさっさと走って行ってしまった。

奏・・・か。あの子奏っていうんだな・・。薫とは真逆でおとなしそうな子だったな。

あとで薫に聞いてみっかな。今は本屋、本屋とっ。

俺が本屋へ行こうとしたとき、

「おっ、晶じゃん。何してんのこんなところで~?」

振り返るとそこにはよく見慣れた金髪が笑いながら立っていた。

「えーと・・、あっそうだ、久しぶりだな山田君。」

どんっ!!金髪が派手に転んだ。

「ちげーよ、勝平だよ!!さ・な・だ・か・っ・ぺ・い。誰だよ山田って!」

いつも通りの勝平になんだか笑えてくる。

「ははっ!」

「なんだよ。なんかおかしいか?」

「いや別に。」


真田勝平。中学時代の悪友のもう1人だ。こいつも中学からずっと一緒で、

バスケをしている。そのためか背が高く筋肉質でTシャツがよく似合う。


「晶、今日はどうしたんだ?」

「ん?あぁ、補習が終わって涼みにここに入った。そしておまえとあった。」

「そうか・・・。ハァ。」

勝平がつまらなそうにつぶやく。

「なっ、なに?そのつまらなそうなテンションは!?」

「いや、実はよ。晶もこれを買いに来たんじゃないかと思ってたんだけどよ・・。」

そういって勝平は手に持っていた紙袋をあけ、中のものを俺に見せた。

「おぉ!これは・・・。」

「すげえだろ。」

「後で見せてくれよ。」

「あわてんなって。わかってるからよ。」

そんな約束をして僕たちは分かれた。


さあて、いえにかえっかな。俺は大きく伸びをし、家を目指して歩き出した。


「ただいま~。」

家に帰ると何やらいい匂いがした。母さんが何か作ってんのかな?

台所に行くと案の定母さんがが何か作っていた。

「母さん、ただいま。」

「あら?晶。おかえり。」

そんな会話を交わし、俺は自分の部屋に向かった。


――30分後・・

「晶―!ごはんよー。」

一階から母さんの声がした。ごはん・・・みたいだな。

「わかった。今いく。」

そう返事をし、ベッドから体を起こし一階に歩いて行った。


「おっ!うまそー。どうしたんだこれ?」

テーブルの上には豪華な料理がたくさん並んでいた。だけど・・・。?・・。

「母さん。箸と茶碗が2つしかねーよ?父さんのは?」

俺がそう聞くと、あっ、と何かを思い出したかのように言った。

「お父さんねー、入院だって。」

「・・・・・・はぁ??!」

「だからー、入院。今日会社で転んだらしく両足骨折だって。」

「・・・・」

あのくそ親父!!転んで骨折だぁ?小学生か!?なせけねぇ、情けなくて

泣けてくるぜ、ううぅぅ。

「ん?何泣いてるの?」

「ちょっと目にゴミが・・。」

そう。俺のうちは親父がまず情けない。とにかく情けない。どれくらい情けないかというと中学生にカツアゲされるくらい情けない。まぁひょろっとした体形に小さい目。その目からは全くの威圧が感じられない。しょうがねえか。

そんなことを考えながら飯を食べていると、

「そうだっ!晶。あんた明日、お父さんのお見舞い行ってきなさいよ!」

そんな、母さんのの言うことを、俺はまた始まった。と感じながら聞いていた。

「なんで?いいよ。めんどいし・・。」

行くのが面倒なのでそういっとくと、

「いいじゃない。行ってあげなさいよ。お父さん、喜ぶわよ!」

そんなもんかな・・?まあ いいや明日はどうせ暇だしな。

「わかったわかった、行くよ、行けばいいんだろ。」

そういうと母さんは満足したのか、笑顔でお皿を下げに行った。

 はぁ・・。めんどくせーな・・。



2章・・・・


「暑っ・・。」

そんな、いつも思っているようなことを口にした俺は、町にある

病院に来ていた。

「たしか・・・083号室だったな。」

なぜ俺が病院にいるかというと、そう、昨日母さんに見舞いに行くと言ってしまったからで、朝起きた俺はあまりの暑さに、

「母さん。俺今日、見舞いはいいや。パス。」

「いまなんつった?」

母さんは笑顔のまま、少しひきつった笑顔で言った。

「いやっ・・だからパスって・・・」

「あぁ!?」

母さんが笑顔で、(まあ内心笑顔かわからないが・・)にらんでくる。

うちは父さんが情けない代わりに、母さんが怖い。マジ怖い。

普段はそうでないが、何かあると今のような状態になり始める。1度父さんの

浮気疑惑で母さんがマジ切れした時があった。それはもうひどかった。だから俺は、

母さんは切れさせてはいけないと、その時固く誓った。

「すごくいきたいなーー!。早く父さんに会いたいなー。」

俺は苦肉にもこういうしかなかった。

「そう。ならよかった。」

母さんはいつもの表情に戻り朝飯の支度に戻った。

あぶねーー!!内心ビビりまくってた俺はホッと胸をなでおろした。

「あっ、晶これ。」 

そういって母さんは俺に1000円札を3枚とメモ帳を渡した。

「これは?」

「手ぶらじゃなんだから、花でも買ってってあげて。それとお父さんの病室のメモ。」

「うーす。」



そして今に至るわけだ。

「えーと・・。たしか花だったな。」

病院の売店で適当に花を買った俺は、父さんのいる病室を目指した。


・・・・


あれ・・・?どこだここ?

周りには人はいなくただ病院の白い壁があった。

えーと・・。たしかここから来たから、こっちか?いやこっちかな?

迷ってしまった・・・。病院で迷うとか、俺は小学生か!!

と、心の中で自己嫌悪していたとき、

「あのっ。」

後ろから声がした。振り返るとそこには自分と同じ年くらいの女の子がたっていた。

パジャマだった。入院してるのかな?などと思っていると

「どうしたんですか?」

そう彼女は話しかけてきた。

「いや、ちょっとね・・・。」

「・・・?」

いえない。「病院で迷った」なんて言えない。恥ずかしくて言えやしない。

そんなことを考えていると、

「もしかして・・・迷っちゃったりしてますか?」

そう彼女は少しいたずらそうに笑った顔で言った。

・・・つーか、ばれてるし・・・。

「じつはそうなんだ。いやー、恥ずかしくてさっ。」

 俺は頭をかきながら、自暴自棄気味に言った。

クスクス。彼女は手を口の前に置き静かに笑った。

「そうだったんですか。私でよければ案内しますよ。」

「ほんとっ!?悪いね、手間かけさせて。」

「いえいえ。それで、どこに行きたいんですか?」

「えーと・・・」

俺はポケットからメモ帳を取り出し、読み上げる。

「緑聖市立中央病院・南棟の・・」

そう俺がゆっくりと読み上げていると、彼女が俺に体を寄せ付けメモを覗き込んできた。

彼女はメモを読みながら、「えーと・・ここは・・こういって・・・」などと

つぶやいてる。そんな顔を俺はどこかで見たような・・?などと思いながら見ていた。

「分かりました。ここなら知っています。ついてきてください。」

そういって彼女は歩き出した。

彼女の後ろを俺が追う。そのときも俺は彼女をどこかで見たことあるような・・・。

そんなことを思っていた。あれはたしか・・・。

「おーい!奏ー。」

ナース服を着た女性が彼女をのもとに走ってきた。担当の看護婦かな?そう思っていると、

まてよ・・・。かなで?どっかで聞いたような?えーと・・。

「あー――‼そうだぁッ。」

突然の俺の叫びに彼女も看護婦もぽかんとなっていた。

思い出したっ。そうだ、たしか彼女は昨日薫といた・・かなでと呼ばれていた子だ。

「えー・・・、ゴホンッ。」

看護婦がわざとらしく咳ばらいをした。いけねっ。ここ病院だった。

「まあ、いいや。それより奏。来週から検査だから、覚えておいてね。」

「うん。ありがと。新さん。」

看護婦は俺を見た後、彼女を見てにやにやしながら、去って行った。

すると彼女がこっちを向き

「駄目だよっ。病院なんだから静かにしなきゃっ。」

怒られた・・・。怒られたといっても全然怖くない。むしろかわいいくらいだ。

「あっ、あぁ悪い。」

「・・で、どうしたの?」

彼女が俺に聞いてくる。

「あ・。そうだよっ!あのさぁ、俺たち昨日会ったよな?スーパーで。

 君、薫といたよね?」

彼女は少し俺の顔を見ると、うーん・・と考え始めた。

――――数秒後―――――

「ああ!たしかにーー!」

彼女は目を輝かせていった。どうやら思い出してくれたらしい。

「あれだよね。たしか・・薫の奴隷のっ!」

「そうそう。薫の奴隷の・・・」

 ・・・??

 薫の奴隷?

「ちがーーうっ!!」

「きゃっ」

 いきなりの大声に驚いたのか、奏が声を上げた。

「違う違う。薫とは友達っていうか腐れ縁っていうか・・・」

 奏は少し考えてあと納得したように言った。

「そうだよね。奴隷なわけないよね。薫ちゃんも照れ屋だなー。

 素直に友達っていえばいいのに・・」

 可愛く怒りながらぶつぶつ言っている。

 どうやらわかってもらえたらしい。よかった・・。

 ・・そうだな。この際だ。間で荷も聞いてみるか。

「えーと。そ、その、か、奏は薫とはどんな仲なんだ?」

「うーん・・。そうだねー。」

 奏はそういうと、俺に背を向け

「ついてきてっ、長くなるかもしれないから私の部屋で話そっ」

そういって走って行ってしまった。

「ちょ、ちょっとまっ・・」

 いっちまった・・。あたりを見回す。

「は・はは・・ここどこ?」

・・・・だれもいねえ・・・。

「わっ!!」

「うわっ!!」

な、なんだ?後ろを振り返る。そこには・・。

「ごめんごめん。つい急いじゃって・・」

奏だった。

「ふぅー。奏か、よかった。また迷子になるわけにはいかないからな・・」

 奏はそうだねって感じで笑った。なんか思ってたよりも元気っていうか・・活発っていうか・・まあ、想像してたのと違うな。まてよ・・。入院してるってことは

何か病気なのか・・?

「ほらっ、いくよ。ついてきてっ!」

 奏はもう走り出しそうだった。

「あ、あぁ。待ってくれよ。もうちょいゆっくりさ・・」

「はははっ!ほら早く早く~。」

 まあいいか。どうせなんか軽い病気だろう。そう思いつつ俺は走っていく奏の後を

 追って行った。



「はいっ!ここが私の部屋。遠慮せずに入って。」

 そういって奏は病室のドアを開けた。東棟の092号室・・。そこが奏の部屋だった。

俺は部屋に入り、見回した。

 なんもないな・・・・。それが感想だった。それは病室とはいえ女の子の部屋なのだから、人形があったり、化粧品が置いてあったりと、勝手な想像を俺がしていたからである。

「まあ、座ってよ。ここ、ここ」

 奏が別途の横にいすを置きながら呼んでいる。俺はベッドの横に歩き椅子に座った。

 その間に奏はもうベッドに入ってた。

「えーとねー・・。それじゃ自己紹介からしよっかっ!」

 彼女はそう言い続けた。

「私は時田 奏。緑聖高校2年C組で・・好きなものは

 リンゴと読書ッ」

 奏はそう一気に言った。緑聖高校・・・?俺と同じ高校じゃないか。しかも2年生だ。

 だけど見覚えがないぞ・・?

 そんな疑問を頭の中で並べていると、

「ねえっ」

「ん?あ、あぁ。なに?」

 奏が話しかけてきた。・・そうかっ!自己紹介の途中だった。

「君は?君はなんていうの?」

「えーと・・。俺は、秋世 晶。君と同じ緑聖高校2年。クラスは

 A組だけど・・」

互いに自己紹介が終わるとしばしの沈黙が流れた。

やべー・・。なんか気かずい、そもそも俺って女の子とあんましゃべったことないし。(薫は別として・・)何か喋んないと、

「あっ、あのさ・・」「あっ、あの・・」

 ・・・かぶった。俺が話そうとした声を出した途端、奏も声を出した。

「ごっ、ごめん」

「ううん。こっちこそ・・」

 奏が頭を振りながら謝ってくる。うわっ、最悪のケースだよこれ・・。そんなことを思っていると、

「あっ、あのそれで・・・」

「うん。それでどうしたの?」

再び彼女が何かを言い始める。いったいどんなことを聞かれるんだ・・?。

「秋世さんと薫ちゃんって、本当はどんな関係なんですか?」

 彼女は上目使いで俺に聞いてくる。関係か・・・。中学からの悪友?でいいのかな?

「ん?あぁ、薫とはね・・・中学からの腐れ縁っていうのがしっくりくるかな?」

 奏は、そうなんですか、と小さく言い微笑んだ。そうだな・・。薫と奏の関係を聞いてみるか。

「奏と薫はどんな関係っていうか・・仲なんだ?」

「そーですねぇ・・。」

 奏はそういうと腕を組み、うーん、とうなっている。

「ちょっと長くなりますけどいいですか?」

「あぁ、別にかまわないけど・・」

 わかりました。そう奏ははいうと、薫と知り合ったいきさつを話し始めた。





「薫ちゃんと初めて会ったのは、去年の夏でした。私がいつものように病院の中を

 散歩していると、何やら困った顔をしている女の子がいたんです。その子に話しかけて

 理由を聞くと、道に迷ってたらしいんです。今日の秋世さんみたいにです」

クスクスッ。奏は笑っていて。そうか・・薫も迷ってたんだな・・。よしっ後でバカにしよっ。

「うるせぇ」

 俺はこれ以上自分の恥を聞きたくなかったため、苦笑いしながら、奏に言った。

「ごめんなさい。ついおもしろくて・・クスッ」

 ・・・まだ笑ってるよ・・。

「ごめんごめん。それじゃぁ続けるねっ」

「あぁ、そうしてくれ」

 奏は再び話を続けた。

「それでね、その女の子の目的の場所に連れて行ってあげたの。病院ではこれだけなんだけど・・、その次の日に偶然本屋さんであったの。しかも薫ちゃんは私と同じ本を買ってたの。そこで昨日はありがとうね、とか、いやそんな・・、とかいってたのその。その時の声や顔が二人とも変でさ・・。たぶん緊張してたからだと思うんだけど・・。それで二人とも大笑い。それがきっかけかな・・・」

・・・なぜ?なぜそこで大笑いする?女の子の思考がよくわからない。もし俺と勝平が 

 そういう状況だったら、俺は勝平に、うわっなにその顔と声。病気か?気持ち悪いぞ。・・

 とか言ってからかうんだけどな・・・。

「あとは、そこでメアドを交換したりして、休みの日に出かけたりしてたんだよ。

 薫ちゃん面白いし可愛いし、私薫ちゃんのこと大好きっ」

 奏はそう嬉しそうに薫のことを語っていた。

「だけど薫がかわいいって?確かに顔はいいほうだけど・・性格悪くね?」

 俺が半分冗談、半分本気でいうと

「そんなことないよっ。それは秋世さんが気付いてないだけっ」

 そういうものかな?だけど俺は中学時代どれだけあいつ迷惑かけられたか・・・。

 まぁ、それもあいつのいいところかな?

「そ、そうかな?」

「そうだよ。絶対そお」

 まあいい。そういうことにしておこう。・・まてよ?去年から知り合ったるのなら、

 学校でもあってたりするはずだ。それに去年も病院?もしかしてずっと入院してんのか?だから俺は奏を学校で見たことないのか?

「なあ奏?」

「うん、なーに?」

「奏は緑聖高校の2年だよな。俺今まで奏を学校で見たことないんだけど、もしかして

 ずっと入院してるのか?」

 そういうと奏は少しうつむき暗い表情をした。しかしすぐ元の顔に戻した。

「ううん違うよ。たしかに去年の夏は入院してたけど、少しだけだよ。それからは普通に学校に通ってたし。秋世さんと会わなかったのは偶然だよ」

奏はそういった。偶然か・・・。そういうこともあるよな。

「そっ、そんなことよりさぁ・・」

 奏が言った。まるでこのことが聞かれるのが嫌なみたいに・・。俺の勘違いか?

 というか、奏はどんな病気なんだ?すこしって言ってたから。そんな悪くないんだよな。

聞いてみるか

「あのさっ、かなっ・・・」

 奏の顔を見る。目に涙がにじんでいた。近くで見なければわからないくらい、ほんとに少しだ・・。

「んっ、なに?どうしたの?」

 奏もそれに気づいたのか目をこすりながら言った。・・涙?

「い、いや。なんでもないよ」

 奏は不思議そうな顔をした。しかしすぐにはなしはじめた。


・・・・それから俺たちはいろんな話をしていた。薫のことや、新しくできたお店、学校のこと、まあいろいろだ。しかし話している途中も奏の涙が・・頭のどこかに残っていた。

「秋世さんって面白いですね。薫ちゃんが言ってた通りの人です」

 薫の言ってた通り?薫なんて言ったんだ?

「薫、俺のことなんて言ってた?」

 俺がそう聞くと奏は意地悪そうに笑った。

「内緒ですっ」

「内緒って・・・。少しくらいならいいんじゃないか?」

奏は少しの間考える。そして

「そうですねー・・、それじゃあ、ヒントっていうかアドバイス!」

「・・・?」

「もうちょっと薫ちゃんのことをしっかり見てあげて。女の子として・・」

 奏は真剣な顔で言った。・・?薫をしっかりとみる?これでも中学の時から長い間見てきたと思うんだが・・?

「考えてみるよ」

「うんっ。そうしてあげて」

 その後も話は続いた。・・・・


時計を見る。もう6時だった。さてとそろそろ帰るかな。奏にも悪いし・・。

「奏、俺そろそろ帰るよ。奏にも悪いしな」

「そっか・・、そうだよね。もうこんな時間だしね」

「それじゃあな奏。また今度な」

「うんっ」

 俺はそういい席を立った。そしてドアに向かって歩いた。ドアノブに手をかけ開けようとしたとき

「秋世さんっ」

 後ろから声がした。振り返る。

「あっ、あの・・。今日はとても楽しかったです。できればまた来てください。」

 奏はそういうと夕日のせいか、少し頬が赤くなった気がした。

「・・わかった。今度・・っていうか明日かな?明日は

ほんとの見舞いとしてくるよ。」

俺はそういい奏に向かって笑みを向けた。すると奏もうれしかったのか

 テレながら笑い返してくれた。

「あっそれと・・」

「はい?」

「俺のことは晶でいいよ。俺も奏のこと奏って呼んでるしな。

 まあ奏が嫌じゃなかったらだけどな」

 俺はそういっておいた。秋世さん・・・悪くないがなんかこちょがしいっていうか恥ずかしいっていうか・・。名前で呼ばれてたほうがまだ楽だ。

「そんな嫌だなんて・・。そ、そうですね、それじゃその・・・あ、あ、晶くんと呼ばせていたただきます・・・」

 なぜ丁寧な敬語?それにうつむいてしまった。いったいなんなんだ?

「あ、あのっ。晶くんっ!」

 いきなり奏が顔を上げるので驚いてしまった。反射的に後ろに飛び退く。

「どうしたんですか?」

「いやなんでもないよ。それどうした?」

 奏は少しためらいながら・・

「またねです。晶くん」

 ・・・それだけ?奏を見ると不安そうに俺を見ている。そんな奏がかわいく見えて、

 俺は自然と笑顔を返していた。

「おうっ。またな」

「はいっ」

 奏が手を振ってくれたので、それに手を振替し、俺は病室を後にした・・。


 ふー・・、楽しかったな。病院を出た俺はそんなことを考えていた。

 奏・・・・かわいかったな。・・・いかんいかん、俺は首を激しく振った。俺は何を考えてるんだっ!。そんなことを駅に向かう途中何度か繰り返した俺だった・・。


駅に着いた。駅はちょうどに帰宅の時間と重なったのかすごく混んでいた。ったく、めんどくせーなー。そんな文句を心の中で言っていると・・。

「・・・・・・・から・・・おくれ・・・だよ。それじゃ切る・・」

 よく聞きなれた声。その声が聞こえたほうを見る。周りよりも浮き出た頭。筋肉質の

 体。・・勝平だった。何話てんだ?しかもでかい声で。

 勝平に走り寄る。

「おい、勝平」

そう声をかけると勝平も俺に気づいたらしく、手を挙げた。

「おー、晶。何してんだ?」

「見ればわかったろ。帰るんだよ」

 そういうと勝平は俺のことを見ると一瞬疑問を浮かべた顔をし、言った。

「そうか・・・。それじゃ一緒に行こうぜ」

 別に断る理由もないし・・・いいか。

「ああいいぜ。」

 そんな話をしてるうちに電車が来た。それに乗った俺と勝平は電車の中で他愛もない

 話をし、自分たちの町の駅まで電車がつくのを待っていた。



「ふぅー、窮屈だったぜぇー。ったくよぉ、人多いんだよ」

 そんな文句を垂れてる勝平の横を俺は歩いていた。

少しするといつもの分かれ道についた。右に行くと俺の家。左に行くと

勝平の家がある。そこをいつものように

「じゃ、俺こっちだから」

 いつもならここで勝平がおうっまたな、と会ってわかれるんだが・・

 今日は違っていた。

「あのよ・・晶。ずっと疑問に思ってたんだが・・・」

 何やら真剣な勝平。

「な、何を思ってたんだ・・・?」

「あ、あのよ・・・」

 ゴクリ・・。つばを飲み込む。

「その手に持ってる花束なんだ?」

 ・・は?花束?何のことだ?俺はそう思いつつ手を見る。

 そこにはたしかに花束。・・・・・・・あっ!!

 そうだっ、もともと俺は父さんの見舞いに行ったんだった。だけど

 奏と会って、話をして、そのまま帰ってきてしまった・・・。

 忘れてた・・・。

「どうした?」

 そんなことを考えていた俺の様子を見て勝平が言った。なんて言おう?

 正直に言っても別にいいよな?・・・・いやだめだっ。こいつは

 何かあるとすぐにそいつの恥ずかしいエピソードをいう、別名「人の過去 検索屋(自称)だからな。これを言ったらなんて言われるか・・。

 よしっ!隠しとおそう。俺はそう決めた。

「じ、実はこの後デートなんだ。い、いいだろー」

 我ながらくそへたくそな演技である。しかし勝平は興味があるように

「まじでっ!?誰と誰と?」

 誰・・・か。そこまで考えてなかったな・・・。えーとえーと、適当に思いつく女・・・。

 薫でいいか・・。考えんのもめんどいし。

「薫だよ、薫。」

俺がそう言うと、勝平は何か疑問があるのか、手を組んで考えてる。

「薫と?」

「ん?そうだけど」

「ってことは、薫ちゃんといえたんだ。良かったじゃん」

「言われたって・・何を?」

 そういうと勝平は納得したかのようにいつもの道を歩いて行った。

 何がいいたいんだ?あいつは?・・・・まあいいや。

 それよりも・・・

「この花、どうしよう・・・」




「ただいま~~」

「あら?おかえり~、早かったわね。どうだった?お父さん喜んでたでしょ?」

 結局俺は、花を土に返してきた。返したといっても、単に土に埋めただけだが・・・。

「う、うん。すげー喜んでたぜ・・・」

 俺は棒読みでそういう。すると母さんは笑みを浮かべると台所に戻って行った。

 さて・・・。飯まで時間をつぶすか。そう思いながら自分の部屋へと足を運んだ。

 ドアノブに手をかけ、ドアを開ける。・・・・・・



「お父さん、元気そうだった?」

 晩ご飯の途中母さんが聞いてきた。むろん、見舞いに行っていない俺が

 父さんの容体など知る由もないわけで・・・。

「ああ、元気そうだったよ」

 適当に合わせておいた。実際はどうか知らんけど。

「そういえば今日、薫ちゃんから電話来てたわよ。

 あんた携帯忘れていったから。」

「えっ?」

 俺はあわててズボンのポケットに手を入れ確認する。・・・・ない。

母さんが自分のポケットから携帯を出す。たしかに俺のだった。

 母さんは気を付けてね、と言いながら俺に携帯を渡した。

 薫から・・?なんかようでもあったのか?

 後で電話してみるか。

 今はご飯ご飯~とっ。


 ご飯を食べ終えた俺は自分の部屋にいた。薫から電話来てたんだよな・・・。

 携帯の着信履歴から薫の名前を見つけた。通話ボタンを押し、薫に電話をかけた。

 何度かコールした後、薫が出た。

「もも、もしもし。あ、晶?ど、どうしたの?」

「どうしたって・・・。薫が電話してきたんだろ?

 何か用でもあったのか?」

「えーとね・・、その、用ってわけじゃないんだけど・・・」

「だけど?」

「そ、その明日って・・・・暇?」

 明日か・・・。たしか奏にまた来るって約束した気が・・・。

「明日はちょっと・・。見舞いに行くって約束したんだ。」

「見舞い・・?そっか、お父さん入院してるんだったね。そっかだめだよね・・」

「ちがうちがう。薫も知ってるだろ。奏のだよ、奏の。

 今日偶然会ったんだ。迷ってるところを助けてもらったんだ。」

 応答がない。・・・?どうしたんだ?

「おい、薫どうした?」

「・・・・・・」

「おいっ!薫っ」

「ご、ごめん。そっか・・・、会っちゃったんだね・・・。」

 会っちゃった・・?なんか引っかかる言い方だな。

「そういうわけで、明日は奏の見舞いに行くことになってんだけど・・・。

 薫も行くか?」

 ・・・・・・・、少しの時間が流れる。その間、薫はしゃべらなかった。

「・・・うん、わかった。私も行くよ。」

「そっか!それじゃ一緒に行こうぜ。待ち合わせ時間とかは

 後でメールするから。切るぞ?」

「・・・・うん。」

 ?・・元気ないな?なんかあったのか?

「薫っ」

「な、なに?」

「なんかあったのか?」

「べべ、別になんもないよ。うん、全然」

 何かをごまかすように言う。・・・何かあったんだな。

「薫・・・。何かあったら言ってくれよ?

 これでも俺は薫とは長い付き合いだし・・心配なんだ。

 だからさ・・・」

「・・うん、わかった。ありがとうね晶。

 でもほんとに何でもないから・・」

 これ以上は無理そうだな・・・。

「分かった。それじゃ明日な?」

「うん、おやすみ」

「おう」

それを最後に電話を切った。薫・・大丈夫かな?

俺はメールを打ち込みながら考えていた。

「明日、駅前に10時集合・・・送信とっ」

 さーて、風呂に入って寝るかな・・。

 風呂に入った後俺は布団に入った。頭の中にではいろんなこと

考えていた。

奏の涙・・・、薫の元気がない・・・、ほんの少しの父さんへの罪悪感・・。

「奏・・泣いてた・・・よな?」

 そうつぶやく。そんなことを考えてるうちに俺は寝てしまった・・・・。



3章・・・^^^^


 やべっ・・、完全に遅刻だな・・。

 俺は急いでた。目ざまし時計がまさか壊れるとは・・・。

 そう・・・。寝坊してしまったのだ。

 集合時間は10時。

 腕時計を見る。・・・・10時24分。

 薫まってくれてるかな・・?


「はぁ、はぁ。やっと・・着いた。」

 炎天下の中走ったせいでシャツがくっつきうっとうしい。

 そうだっ、薫は?待っててくれるといいんだけど・・・。

 ・・・・いた。駅の日陰に立っていた。俺の視線に気づいたのか、

 薫がこっちを向く。俺は急いで薫のもとに駆け寄った。

 近くで見る薫はその・・なんていうか、可愛かった。普段めったに着ない

真っ白なワンピースを着て大きな麦わら帽子をかぶってる。

数秒見とれていたのが自分でもわかった。

「遅いっ!何分待ったと思ってるのっ!」

 そんな風に起こる薫の子も耳には入っていなかった。

「あ、ああ。その・・・悪かった。ごめん・・。」

 俺がうつむいてそう謝ると、薫が顔を覗き込んできた。

 しかもかなりの近距離で。そして俺に満面の笑みを向けた。

「わっかたよ。今回は許してあげる。今度は気を付けてねっ」

「あ、ああ」

 俺も笑顔を返す。

「あ、あのさ・・薫」

「ん?なに?」

「きょ、今日の服とても似合ってるよ。

 そ、そのなんて言うか・・・か、可愛いよ」

 思っていたことをそのまま言った。すると薫は照れたのか、顔を真っ赤にした。

「ばっ、バカっ!お、お世辞なんていいよっ」

「いや・・お世辞じゃなくてほんとに可愛いって。

 これはほんとだ」

 薫が顔を真っ赤にしてうつむく。するとちょうどそこに電車が来た。

「ほらっ、電車が来たぞ・・・薫?」

 薫に声をかけたが反応がない。まだ照れてるらしい。下を向いて

 動かない。

 バス行っちまうぞ・・。

 しょうがねーなー・・。

俺は薫の手を取る。薫のは手はとても小さかった。

しかしあたたかかった。

薫はビクンッ、と驚き、

「ちょ、ちょっとなに?晶?」

「電車来たんだよ。早くいくぞ」

 薫の手を引く。その時薫が何かつぶやいた風に聞こえた。

「あり・・う。ほめ・・くれ・・・うれし・・った」

 あたりが騒がしくよく聞こえない。

 なんて言ったんだ?


全くの初心者で、

よく小説を読むんですが、

結構エンディングに納得のいかないのがあったので

自分で納得のいく終わりを作ろうと思い

小説書いてみました。

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