第25話 封鎖の完成
一週間後、新規の発熱患者がゼロになった。
診療所の記録帳の最後のページを確認して、私はそれを確認した。西区の古い井戸を封鎖してから七日間、患者の増加が完全に止まった。既に感染していた者も、ほぼ全員が回復に向かっている。
「全員、快方に向かってますよ」とヘルダが言った。「重症になりかけた人もいたが、薬が揃っていたので助かった。解熱薬と鎮痛薬が特に」
「薬品庫の在庫を確認しておいてよかったです」
「……あれも、あんたがやってたのか?」
ヘルダが少し驚いた顔でこちらを見た。
「最初に補充計画を立てておいたので、今回必要な量は手元にありました」
「……食糧倉は? 帳簿の件は?」
「ええ、少し関わりました」
ヘルダが腕を組んだ。
「薬品庫の整備も、食糧倉も、帳簿の問題も、今回の封鎖提案も、全部あんた一人でやったのか」
「一人というより、ミレイやヘルダさん、倉の担当者の方々に手伝っていただいて」
「あんたが考えて動いたんだろ」
「……問題があれば放置できない性分で」
しばらく沈黙があった。診療所の小さな窓から、冬の光が差し込んでいる。
「あんた、すごいね」
ヘルダが静かに言った。大げさな言葉ではなく、ただ確認するような口調だった。
「そんなことは」
「たいしたことじゃないと言うな。あんたが来る前と後で、この町が変わったのは本当のことだ。私が一番よく分かってる」
私は何も言わなかった。言葉が出なかった。前世でも、こんなふうに言われたことはなかった。記録を整えて、問題を解決して、でも誰かに「すごい」と言われたことは——。
「ありがとうございます」
それだけ言った。
「礼はいい。また困ったことがあれば来てくれ」
診療所を出ると、城下管理官のハルネット氏が待っていた。
「夫人、今回は本当に……」と彼は頭を下げた。「夫人のおかげで被害が最小限で済みました。ありがとうございます」
「記録があったからです。ヘルダさんが記録をつけてくれていたおかげです」
「ですが、記録を作ったのは夫人が」
「ヘルダさんと一緒に作りました」
ハルネット氏がまだ何かを言いたそうにしていたが、私は「お気遣いありがとうございます」と礼をして先を歩いた。
城への道を歩きながら、ミレイが「夫人、今日はいい顔してますよ」と言った。
「そうですか」
「はい。いつもより少し、ほっとしてるみたいな」
「助かったので」
「患者さんがですか」
「それも。今回は薬が足りました。以前は足りなくて、亡くなった方がいると聞いていたので」
ミレイが「……そういうことまで考えてたんですね」と静かに言った。
城に戻ると、カルルが待っていた。「侯爵より、今夜時間が取れれば話を聞きたいとのことです」という言葉を持って。
私は少し驚いた。侯爵が直接話を——?
「分かりました」と答えた。「ご都合のよい時間をお教えください」




