第23話 発熱の増加
使いを受け取ってすぐに、ミレイを連れて診療所へ向かった。
「八人」と私は歩きながら確認した。「昨日は何人でしたか」
「三人と聞いています」とミレイが答えた。「一日で倍以上……」
「そうですね」
診療所の前に着くと、すでに数人が入口の前で待っていた。ヘルダが扉のところに立って、「中に入れる人数の限界があって」と困ったような顔をしていた。
「来てくれたか」
「ええ。記録帳を見せてください」
診療所の隅で記録帳を広げた。始めてまだ数日だが、患者の名前と居住地域と症状が書き込まれている。ヘルダの字は大きくて読みやすい。
私は居住地域の欄だけを順に確認していった。
西区一丁目、西区三丁目、西区一丁目、西区二丁目、東区……西区三丁目、西区一丁目——。
「ヘルダさん」
「なんだ」
「患者の方に、どこの水を使っているか聞いてもらえますか。今日来られた方全員に」
「水? 飲み水か?」
「飲み水と、料理に使う水です。できれば井戸か水場の場所まで」
ヘルダが「分かった」と言って、診察を始めながら患者に一人ずつ聞いてくれた。
私は診療所の隅で記録帳の数字を書き写した。今日の八人のうち、七人が西区の患者だ。東区からは一人。
しばらくして、ヘルダが「三人に聞いた」と戻ってきた。
「全員、西区の古い井戸を使ってると言っていた」
「西区の古い井戸、というのは同じ場所ですか」
「おそらく。西区の端に、昔からある共同井戸がある。あの辺の古い家は大体あそこを使ってるはずだ」
私は手帳に書き込んだ。まだ確認中の段階だが、輪郭が見えてきた。
「まだ仮説の段階ですが、その井戸が感染源かもしれません。もし今日の患者の方全員に同じ答えが出れば、かなり確実になります」
「……なるほど」とヘルダが腕を組んだ。「それを知ってどうする」
「使用を止める提案をする必要があります。でも——誰に、どのように言うかを考えなければなりません」
それがこの場でできる私の判断の限界だった。井戸の使用を止めるには公的な判断が必要で、それは城が動かなければならない。
「城の人に言うのか」
「そうなります。ただ、確認が不十分な段階では動いてもらえない可能性もあります」
「じゃあ確認を急げ」とヘルダが言った。簡潔な答えだった。
「そうします。残りの患者の方にも聞いてもらえますか」
「ああ。あんたが来てくれてよかった」
夜が近づいてきた。ヘルダの診療所を出ようとした時、外で使用人に会った。カルルの配下の者だった。
「夫人、城下で発熱の患者が増えているということを侯爵に報告しました。夫人はこちらにいらっしゃると伺いまして」
「はい。状況を確認していました」
「何かお分かりになりましたか」
私は少し考えてから答えた。
「現段階では仮説ですが、西区の特定の井戸が感染源の可能性があります。明日、追加の確認を取った後で報告できます」
「……承知しました。侯爵にお伝えします」
その夜、診療所の帳簿には五人分の追加記録が書き込まれた。全員が西区の患者で、全員が同じ井戸を使っていると答えた。翌朝には患者が二十人を超えるという知らせが届いた。




