表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰の役にも立たないと言われて嫁いだ先で、私はようやく普通に仕事ができるようになりました  作者: ヲワ・おわり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/27

第18話 横領犯の解雇

 城内に話が広まったのは、三日後のことだった。


 「帳簿に不正があって、下役人が解雇になった」——ミレイが息を切らして報告しに来た時は、朝食を終えて記録の整理をしているところだった。


「解雇、ですか」


「はい。侯爵様が直接、呼び出して。数字を突きつけて、解雇にしたと」


「そうですか」


 私は手帳に「問題:横領の件、解決」と書き留めた。数字が正しかった。それだけだ。


「……夫人、驚かないんですか」


「予測の範囲でしたから」


「でも、解雇って……その方は、どうなるんでしょう」


「分かりません。ただ記録として残った差異は事実ですから、侯爵が判断されたのでしょう」


 ミレイが「そうですね……」と呟いた。


 城の廊下を歩いていると、使用人の数人が小声で話しているのが目に入った。「帳簿の差異を見つけたのは誰なのか」という話をしているようだった。気づいていないふりで通り過ぎた。


 午後、食堂でお茶をもらっていると、若い侍女が「夫人、先日の書類の件、夫人がされたのですか」と話しかけてきた。


「何の書類ですか」


「食糧倉の照合書類……カルル様がそう言っていたと聞きまして」


「特に何もしておりません」


 それだけ答えて、お茶を飲んだ。


 一方、執務室では——。


 エドヴァルドは帳簿分析の書類を片付けながら、カルルに言った。


「夫人が作成した書類が発端だということは、広めるな」


「……はい?」


「内部の問題は内部で処理する。夫人の名を出す必要はない」


「承知しました。ただ……使用人の間では既に噂が」


「噂は仕方ない。公式には言うな」


 カルルは「分かりました」と答えながら、内心でため息をついた。——侯爵は庇っているのか、それとも公式化するのを避けているのか。どちらにせよ、夫人への言及がない。


 夫人は今頃、次の問題に向かっているのだろうに。


「侯爵」


「なんだ」


「夫人に……直接、何かおっしゃらなくていいのですか」


 短い沈黙があった。


「俺が言うべきことは、続けるように、だ。それは既に伝えた」


「……そうですね」


 廊下で、レティシアとすれ違った。彼女は何か考え事をしているような顔で歩いていて、私に気づいた時には軽く礼をした。


「夫人、この前の件——」


 声をかけようとした使用人を、カルルが「今はよい」と目で制した。


 夫人は通り過ぎた。何事もなかったかのように。


 カルルはその背中を見ながら、「本当に変わった方だ」とまた思った。問題を解決して、解決したことにも特に反応せず、次に向かっている。


 それが当たり前のことなのだという顔をして。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ