第18話 横領犯の解雇
城内に話が広まったのは、三日後のことだった。
「帳簿に不正があって、下役人が解雇になった」——ミレイが息を切らして報告しに来た時は、朝食を終えて記録の整理をしているところだった。
「解雇、ですか」
「はい。侯爵様が直接、呼び出して。数字を突きつけて、解雇にしたと」
「そうですか」
私は手帳に「問題:横領の件、解決」と書き留めた。数字が正しかった。それだけだ。
「……夫人、驚かないんですか」
「予測の範囲でしたから」
「でも、解雇って……その方は、どうなるんでしょう」
「分かりません。ただ記録として残った差異は事実ですから、侯爵が判断されたのでしょう」
ミレイが「そうですね……」と呟いた。
城の廊下を歩いていると、使用人の数人が小声で話しているのが目に入った。「帳簿の差異を見つけたのは誰なのか」という話をしているようだった。気づいていないふりで通り過ぎた。
午後、食堂でお茶をもらっていると、若い侍女が「夫人、先日の書類の件、夫人がされたのですか」と話しかけてきた。
「何の書類ですか」
「食糧倉の照合書類……カルル様がそう言っていたと聞きまして」
「特に何もしておりません」
それだけ答えて、お茶を飲んだ。
一方、執務室では——。
エドヴァルドは帳簿分析の書類を片付けながら、カルルに言った。
「夫人が作成した書類が発端だということは、広めるな」
「……はい?」
「内部の問題は内部で処理する。夫人の名を出す必要はない」
「承知しました。ただ……使用人の間では既に噂が」
「噂は仕方ない。公式には言うな」
カルルは「分かりました」と答えながら、内心でため息をついた。——侯爵は庇っているのか、それとも公式化するのを避けているのか。どちらにせよ、夫人への言及がない。
夫人は今頃、次の問題に向かっているのだろうに。
「侯爵」
「なんだ」
「夫人に……直接、何かおっしゃらなくていいのですか」
短い沈黙があった。
「俺が言うべきことは、続けるように、だ。それは既に伝えた」
「……そうですね」
廊下で、レティシアとすれ違った。彼女は何か考え事をしているような顔で歩いていて、私に気づいた時には軽く礼をした。
「夫人、この前の件——」
声をかけようとした使用人を、カルルが「今はよい」と目で制した。
夫人は通り過ぎた。何事もなかったかのように。
カルルはその背中を見ながら、「本当に変わった方だ」とまた思った。問題を解決して、解決したことにも特に反応せず、次に向かっている。
それが当たり前のことなのだという顔をして。




