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誰の役にも立たないと言われて嫁いだ先で、私はようやく普通に仕事ができるようになりました  作者: ヲワ・おわり


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第17話 食糧倉の完成

 食糧倉の管理整備が完成したのは、城に来てから二十日目のことだった。


 全数確認、記録帳の整備、入出庫の記録方法の引き継ぎ。その三つが揃って初めて「完成」と言える。私が城を離れても、仕組みさえあれば担当者が続けられる状態にしておくこと——それが目標だった。


「……これが今秋の在庫です。麦が三百十二袋、豆類が四十八束分、塩漬け肉が六十七樽……」


 担当の使用人、四十代の朴訥な男性であるレルムが、記録帳を読み上げた。


「はい。このペースで出庫が続くとして」と私は計算を見せた。「来春まで問題ない数字になります。さらに来冬に向けた追加の備蓄も、この計画通りに動けば間に合います」


「……本当ですか?」


「数字の上では。ただし毎月の入出庫を記録し続けることが条件です」


「そ、それは……やります。やれます。分かりやすいので」


 レルムが記録帳を大切そうに持ち直した。最初は警戒していた彼が、今は熱心に記録をつけてくれている。慣れれば難しくない、と本人も言っていた。


「夫人が作ってくれた表、本当に助かります。何をいつまでに補充すればいいか、一目で分かって」


「そのためのものですから」


「今まで……こんなものがあるとは思っていなかったです。毎年冬に足りなくなって、上に怒られて。でも今年は大丈夫そうだと思うと、なんか……ほっとします」


 そうか。この人も、毎年冬のたびに焦っていたのか。記録がないから対策が打てない、でも対策できないことへの責任は現場に来る。その繰り返しだったのだろう。


「今年の冬は足りなくなりませんよ」


 私はそう言った。言い切れることだから言った。数字がそう示している。


 ミレイが「ほんとうに?」と声を上げた。


「計算上は」


「すごい……」


「去年より在庫が多くて、消費ペースが把握できていれば、足りなくなる前に手を打てます。それだけです」


「夫人って、なんでそういうことが分かるんですか」


「前世で似た仕事をしていたので」


「また前世が……」とミレイが呟いた。


 倉の外に出ると、秋の光が傾き始めていた。鉱山に向かう男たちが通り過ぎていく。クレスタの町から、薪を割る音が聞こえる。冬の準備が始まっている。


 前世でも、こういう仕事をしていた。誰かのための仕組みを作る仕事。誰かが困らないように、記録を整えて、計画を立てて。誰かに褒められることはほとんどなかった。でも問題が防がれれば、それで充分だった。


 今も、同じだ。


 レルムが「また何かあれば相談してもいいですか」と声をかけてきた。「もちろんです」と答えた。


 城に戻りながら、次にやるべきことを考えた。


 診療記録の整備。そして、帳簿の全体把握。ガストンの抵抗はあるが、エドヴァルドの許可は出ている。もう少し丁寧に進めれば、見えてくるものがある。


「夫人、帳簿室でまた何か動きがあったみたいですよ」とミレイが言った。「侯爵様が昨日も遅くまで……」


「そうですか」


「気にならないんですか?」


「侯爵が確認されているなら、それでよいと思います」


 私は先を歩いた。


 次の問題がある。今日だけで考えていることが多すぎる。

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