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 目が覚めたエリスの目の前でイリオとファシウスが戦っている。蒼白い閃光と赤紫の禍々しい光がぶつかり合っている。二人の戦いのせいで、周囲の木々は焼け焦げ、近くにいた動物たちは慌てて避難し始めていた。


(森が、悲しんでいる……森が、泣いてる……!動物たちも住まいを奪われて、混乱しているわ!どうしてそう感じるのかわからないけれど、もしかしてこれも、リーリアの力なの?)


「イリオ!ファシウス様!やめてください!森がかわいそうです!」


 エリスがそう叫ぶと、ファシウスがエリスを見て嬉しそうに笑う。


「リーリア!」


 ファシウスから赤紫の光が幾重もエリスに伸びてくる。だが、エリスに届く前にレイヴンの羽根によって光は遮られた。そして、イリオがエリスを庇うようにしてエリスの目の前に立つ。


「ファシウス様!もうやめてください!私はエリスです!あなたの望んでいるリーリアではありません!」

「何を言うんだリーリア!その魂に刻まれた楔はリーリアである証だ!この戦いを辞めて欲しいなら、俺と一緒に来い。俺と結婚して、君はこの国の王妃になるんだ。誰にもじゃまされることなく、この国でずっとずっと一緒に幸せに暮らそう、リーリア」


 手をエリスへ差し出しながら、うっとりした顔でファシウスは言う。だが、エリスは厳しい視線をファシウスに向けて否定するように首を振った。


「私は一緒に行きません。私が一緒に行くのは、イリオとです」

「……また、そいつを選ぶのか!俺じゃなく、そいつを!どうして!」


 ファシウスが咆哮をあげると、びりびりと電流が走ったかのように地面が揺れる。だが、エリスはめげることなくキッとファシウスを睨んだ。


「どうして?私はあなたではなくイリオと一緒にいたからです。前世であるリーリアだって、そうだった。ただそれだけなのに、あなたは卑怯な手を使い、自分の身勝手な思いでイリオとリーリアの仲を引き裂いたのでしょう!私の中で、リーリアも怒っています。……ううん、悲しんでいる。あなたがそんなことをしてしまったことを、今またこうして同じことをしていることに、悲しんでいます」


 エリスは胸元をギュッと掴んで瞳を閉じる。まるでリーリアと対話をしているかのようだ。それを見てイリオはワフ、と悲し気に小さく鳴いた。


「ははは、リーリアが悲しんでいる?それは俺と一緒になれないからだろう?あの時、せっかく俺と同じ人間にしてあげたのに、どうして逃げてしまったんだ。逃げなければ、俺を拒否しなければ、あんなことにはならなかったのに。森を焼き尽くさない代わりに、俺と一緒になるか死かどちらかを選べと言ったら、当然のように死ぬことを選びやがって。なんて馬鹿げてるんだ。俺を選べばよかったのに!」


 ファシウスの言葉にイリオは驚いたように両目を見開く。エリスは目を開きファウスをジッと見つめるが、その瞳は涙をいっぱいに浮かべていた。


「どうしてわからないんですか?あなたを選ぶくらいなら人間のまま死んだ方がいいと思ったからですよ。リーリアはイリオの森を守りたかったし、イリオを守りたかった。イリオ以外の相手を選ぶなんて絶対にしたくなかった。だから、死を選んだんです」


 ――そんな……!


 イリオが驚愕の声をあげると、エリスは悲し気に微笑みながらイリオへ向けた。


「イリオは何も知らなかったんだよね。リーリアは突然人間にさせられて、一緒にならないなら森を焼き尽くすと脅されたの。リーリアは全力で抗議したわ。そんな卑怯な手を使わなければ自分を手に入れられないのか、そんな人間を選ぶわけがないだろうと。考え直すように何度も説得した。でも、何も変わらなかったの。だから、あなたを選ぶなら死んだほうがましだと言った。そしたら、あっけなく胸を刺されて殺された」


 エリスの話に、イリオは目を大きく見開き茫然とする。


「でも、リーリアは刺された時、言ったの。自分が死んだあと、この森を焼くようなことがあったら絶対に許さない、森の精霊たちがあなたとあなたの子孫たちを未来永劫呪い尽くすからと。そして、どの未来でも二度とあなたと自分が出会わないようにしてみせる、そう言ったわ」


 エリスが言い終わると、ククク、と嬉しそうに笑う声がする。その声のする方へ目を向けると、ファシウスの顔は愛憎で醜く歪んでいた。


「そう、そして俺はそれを恐れて、森を焼くのを止めた。未来で二度とリーリアに出会えないなんて困る。今リーリアを手に入れられないなら、生まれ変わってから手に入れればいいと思った。だから、胸を刺した時、楔を打ち付けたんだよ。どこにいても見失わないように」



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