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「イリオ様!」


 倒れこんだエリスを抱きかかえたイリオの元に、一羽のカラスが勢いよく飛んできた。着地すると同時に黒い煙が上がり、そのカラスは人の形になる。


「レイヴン、どうした」

「こちらに、禍々しい魔力をまとった男が向かってきています。応戦しようとしたのですが、あまりの魔力量に近づくこともままならず、急いで報告しに来た次第です。……何もできず、申し訳ありません」


 レイヴンは悔しそうに唇を噛み、一つに結んだ黒い艶やかな髪をサラリとたらしながら申し訳なさそうにお辞儀をする。


「いや、いいんだ。奴の気配は感じていた。あれはどうしようもないだろう。それに、俺自身が決着をつけなければいけないからな」


 

「ははは、決着?そうだね、決着をつけて、その子を――リーリアを返してもらおう」


 突然、イリオとレイヴンの目の前に濃い赤紫の光が竜巻のように現れる。そこには、ファシウスが悠然と立って微笑んでいる。


「もう来たのか」


 レイヴンが憎らしそうにファシウスを睨みつけるが、そんなことは気にしないと言わんばかりの顔でファシウスはレイヴンを一瞥した。


「返してもらうだ?リーリアはお前のものじゃない。それに、今はリーリアではなくエリスだ」

「はっ、エリスね。リーリアの魂を持つ肉体なだけだろ?あちらの世界に逃げようとしたみたいだけど、リーリアの心臓に俺が打ち付けた楔のせいで、あちらの世界に拒否されたんだろう?ざまあないな!俺とリーリアを引き離そうなんてするからだ!」


 イリオの言葉にファシウスが怒ったように反論する。その瞬間、ファシウスからドンッとすさまじいほどの風圧がイリオたちに襲い掛かるが、イリオが張った防御魔法でイリオたちは無事だった。


「レイヴン、エリスを頼む。何があっても守れ」

「はっ、おおせのままに」


 イリオがレイヴンにエリスを託すと、エリスを受け取ったレイヴンは真っ黒な羽を広げた。その羽根が一斉に周囲に飛び散り、エリスを守るようにして包囲している。それを見てファシウスはつまらなそうにふん、と鼻をならした。


「あの時、お前の魂ごと消すことができたならどんなによかっただろう」

「ははっ、そうだろうな。だがお前にはそれができない。リーリアの心臓、いや、魂と言った方が正しいか。魂に楔を打ったことで、俺の魂とリンクしてしまっているからな。俺の魂を消せばリーリアの魂も消える。リーリアは生まれ変わることもできなかったからな」


 ニヤリと口角を上げると、ファシウスは赤紫色の光に包まれながら宙に浮く。


「今回も、俺を殺したところで魂は消えない。俺は何度だってリーリアを求めてお前たちの前に現れる。だが、今回は俺がお前を消す番だ。今度こそ、リーリアは俺だけのものだ」

「させるか」


 イリオの周囲に蒼白い光があふれ出す。イリオの体が変化して、イリオは大きな狼の姿、神獣になった。歯をむき出しにしてグルル、と唸ると、イリオはものすごい速さでファシウスの元へ走り出す。それを見てファシウスは片手をあげると、赤紫の光の矢がイリオへ向けて飛んでいく。


 イリオはそれを軽快に避け着地すると、イリオの目が光った。そしてイリオは口を開くと、口内から蒼白い光が現れ、ドンッという大きな音と共に閃光が走る。光はファウスに直撃するが、ファシウスは傷一つ付かずに悠然と宙に浮いている。


 あちこちで蒼白い光と赤紫の光が交錯する中、ふとエリスの瞼が動く。


「ん……あれは、イリオと、ファシウス、様?」





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