13
「真実……」
いったい、何を聞かされるというのだろうか。エリスの胸は緊張でドキドキと高鳴る。
「俺とエリスは、エリスが生まれるずっとずっと前、はるか昔に出会っている。俺は神獣のままだが、エリスはエリスではない。エリスの前世とでも言えばわかりやすいか」
「前世?」
エリスが目を大きく見開いてイリオを見つめると、イリオはエリスを見ながらエリスに誰かを重ねるようなまなざしをして微笑む。
「ああ、お前は前世で森の精霊だった」
「精霊……!?」
(人間じゃ、ないんだ!?)
驚くエリスに、イリオは話を続ける。
「お前は、俺がいる森の精霊のひとつだった。精霊の中でも力が強く、姿を自在に変化することのできる精霊で、名前はリーリア」
「リーリア……」
イリオにリーリアの名前を呼ばれたとき、エリスの胸は大きく高鳴る。何か懐かしいような、嬉しいような、こそばゆいような、それでいてすこし悲しいような気持ちになる。
「俺とリーリアは神獣と精霊だが、種族を超えてお互いに好意を持ち、愛し合う仲だった。お前と過ごす時間はとても有意義で幸せな時間だった。だが、そんな時間は突然あっけなく奪われてしまう」
イリオは辛そうに自分の掌を見つめ、ギュッときつく拳を握り締める。
「リーリアは心の美しい、優しい精霊だった。困っているもの、傷ついているもの、悲しんでいるものを見つけるとほおっておけない精霊だったんだ。ある時、森の中で傷ついた人間の男を見つけ、リーリアは人の姿に変身してその男を介抱したんだ。重傷を負っていたその男は、リーリアのおかげで回復し、元気になった」
そこまで言って、イリオは痛々しそうにエリスを見つめる。
「その男は、人間の姿のリーリアに恋をした。だが、リーリアは人間ではなく精霊だ。なにより、俺と愛し合っていた。だからリーリアはその男の思いを、申し訳なく思いながらも断ったんだ。それが悲劇の始まりだった。その男は、あろうことかリーリアを殺した」
「えっ、でも、リーリアは、精霊だったんでしょう?人間が、精霊を殺せるの?」
驚くエリスに、イリオは憎らしそうに宙を見つめ、唸る。
「あの男は、リーリアが精霊だと知ってもしぶとくリーリアにつきまとい、精霊が人間になる方法を探し求めた。そして、禁断の闇魔法に手を伸ばし、精霊であるリーリアを人間の姿のままになるようにして、殺したんだ」
イリオの言葉を聞いた瞬間、エリスの脳内に突然不思議な光景が現れる。それは、いつぞや見た夢をもう一度見ているようだった。突然のことに、エリスは頭を抱えてうずくまった。
「うっ……!」
森の中を必死に走って逃げている。走っても走っても追いかけてくる男。その男に、エリスの前世であるリーリアは殺された。死ぬ直前、リーリアを見つけたイリオが泣き叫ぶ。
(これは、前世の、記憶……?)
「エリス、大丈夫か!?」
イリオがエリスの元に駆け寄ると、エリスはうう、とうめきながら顔を上げる。そしてイリオをじっと見つめ、口を開いた。
『イリオ……ごめんなさい、あなたを残して、死んでしまうなんて』
「……まさか、リーリアなのか?」
イリオが両目を大きく見開いてエリスを見ると、エリスはフッと気を失い、倒れこむ寸前でイリオに抱き止められた。
「エリス……!リーリア……!」




