5話
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凄く嬉しいです(●'◡'●)♡
「やっと面倒なのが消えたね!ねぇ、自己紹介がまだだったよね、ウチの名前はウィグ!貴方は?」
ニコッと笑って、話しかけてくれたのである。
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突然の出来事に唖然として開けっ放しになっていた口を、急いで閉じた。
「わっ、えと、助けてくれてありがとうございます!」
「私実は、自分の名前が分からないんです。気付いたらここにいて、なんも覚えてなくて!あの、何言ってんのコイツって感じだと思うんですけど、今も本当に、路頭に迷っていまして…」
焦って一気に言葉がとびだす。
「ふふ、そんなに焦らんとっても大丈夫なんよ」
そう言ったあと、本当に小さな声で、いやもしかしたら聞き間違いかもしれないが、ボソッと「やっぱりそうやったんやね。」という声が聴こえた気がした。
(やっぱりって、どういう――?)気になる点ではあったが、聞き間違いだろうとサラッと受け流す。
(てか私ってば気使わせちゃってるし、ほんっと恥ずかしい!それもこんな年下の女のコに…って、この子、絶対見た目通りの年齢じゃないよね?)
「あの、ここはどこなんでしょうか?」
「ここはね、大御神ニカ様の管轄地帯、リュー王国・南部地区商業都市コーヴァの―――って、分かる?」
「何もわからないです、すみません…」
「うーんとね、まぁ、港町の市場とでも考えとって!」
「えーっと、ならまぁ、最悪乞食でもすればご飯はもらえそうですね!良かったです!」
まぁ、なるべく盗むのは最終手段にし――――
「えっ?ウチん所で働いてくれるんでしょ?」
「…えっ?」
「え?」
「えぇ!?!?!?」
良いんですか――と言いかけて、ふと嫌な考えがよぎる。
仕事って、もしかして――
「あの、何の仕事なんですか?」
「えっとね、さっきウチがレヴィと戦っとった時とおんなじ感じでねー、」
そして、嫌な予感というのは当たるものである。
「ああいう、”こっちの世界”に侵略してくる天使達をぶっ飛ばすお仕事よ!」
(げぇぇ……あんな戦いの中に入れ、ってコト?無理に決まってんじゃん!!!!!!訳も分からず首が飛ぶわ!!!!!!)
「あの、何を勘違いされてるのか知らないですけど、私って、ほんとにただの一般人ですよ?かっこよく武器なんて扱えないし、そもそも憎んでもない人を殺せるほどの精神も持ち合わせてないんですよ!」
「ですからその、部屋のお掃除とか、料理とか、そういうお仕事なら是非させていただきたいんですけど、突然戦えといわれても、無駄死にするだけなんです」
ですから、貴女の役にはたてなさそうなんですよ、ごめんなさいね――という、強い気持ちを込めた台詞だったのだが……
「?一般人やとか、そんなわけないやん。ちょっと訓練すれば大丈夫やって」
(だっからさぁ、本当に私に戦闘スキルなんてないんだって!!!ちょっと訓練すれば大丈夫とか、大丈夫なわけないじゃん!!!)
「ですから本当に、私には戦闘スキルなんて一切なくって――」
断ろうとしたその時。大変お恥ずかしいことに、お腹の音がぐーっと鳴った。
「あ…」
ばっと手で顔を隠す。
「ふふふっ、よかったらウチ等の活動拠点だけでも見に来ない?キッチンもあるし、何かつくってあげれるからさ」
(これ以上善意を断るのは逆に失礼、かな)
「なら、お言葉に甘えても?」
「そうこなくっちゃ!」
ウィグはそう言うと、閉じていた翼を大きく広げて、その小さな体をものともせず私の体を持ち上げ抱っこした。
「えっ⁉えっ⁉」
「それじゃあ、ちゃんとつかまってて!」
「えっ⁉いや、ちょっとま――」
次の瞬間、ぶわっと翼をはためかせて空に浮く。
みるみる高度をあげ、つい先程までいた地点がゴマ粒のように小さく見える。
そしてそのまま、勢いよく空を駆けた。
「きゃぁぁぁぁぁ!?!?!?」
「もー、だいじょぶだって。最悪落ちても骨は拾ったげるし」
「大丈夫な要素が一つもないんですけど⁉」
「あはは、冗談よ、冗談。」
そして、10秒もせず。
「とうちゃーっく!」
ウィグが砂埃をあげながら、ズザザザザッとスライディングを決めて地面におりる。
(し、死ぬかと思った……)
スライディングによってつけられた地面の跡が、勢いの強さを物語る。
そして目の前に見えるのが、彼女の活動拠点だろう。
みたところ2階建てのさび付いたバラック建築で、思ったよりも大きい。
所々で鉄骨がむき出しになっているものの、色も種類もバラバラな金属板や布(どこから拾ってきているのかお店の看板なんかも使われていた)、で一応補強されていた。
大きなシャッターが開いており、中が見える。
シャッターの中は、たくさんのランプが吊り下げられている車のガレージという感じだった。
いわゆるビルトインガレージである。
アスファルトによく似た地面や、2階へと続く階段、並べられた椅子、観葉植物、たくさんの工具箱、積まれた荷物などが見え、開いたシャッターの右端から左端にかけては、チェーンがかけられている。
チェーンには、『closed』と書かれた木札がぶら下げられているが、防犯面では心配になる設備だった。
(オフィスというより、アジトみたい。大分ぼろいけど、秘密基地だと思えばかっこいいかも)
「ウチについてきて」
「分かりました、お邪魔します」
ウィグは、チェーンを外しガレージの中に入ると、階段を上がって重そうな鉄扉に手をかける。
扉がギィィッと不快な金属音を鳴らし開いた。
部屋の中は意外と綺麗。
気にすべきなのは――
「ウィグ、お帰りーーー!!!その子が前に話してた子?」
そこにいる美女であろう。
太い黒縁のメガネに、二人静のウェーブヘア。
ふっくらとした真っ赤な唇と、バチバチに上がった睫毛が特徴的だった。
「ただいま。後で紹介するから、ちょっと待っとって」
(先客いるなら、お邪魔だったかな?)と考えていると、パチッと目が合った。
「初めまして。ご挨拶が遅れてすみません。お邪魔してます」
「えー!!カワイイじゃん!!どこ住み?どこ住み?」
「えーっと、実は自分に家があるかも分かってなくて――」
「ちょっとオルカ!ウチ、後で紹介する言うとったよな?」
ウィグが頬を膨らませて怒る。
「げーっ、おっかないおっかない。じゃあまた後でね、オネーサン!」
パチッとこちらにウインクすると、嵐のように奥の部屋へ引っ込んでいった。
「ごめんごめん、いこっか」
「あの方は?お仕事仲間ですか?」
「そう。ウチのルーキーよ!…ちょっと仕事が大雑把すぎるのが難点なんだけど、ね」
ふふっと笑って、顔に手をあてる。
(仲良いんだろうな)
「この場所に住まれているんですか?」
「あれ?いってなかったっけ。そうそう、6人でね」
「6人も!?」
「うん、ウチとオルカと――って、それはまた後で説明するんよ。まずはご飯よ、ご飯。『腹が減っては戦ができぬ』……ってね!」
ウィグはそう言うと、鼻息交じりに壁に立てかけてあったフライパンをとる。
「お手伝いします。何すればいいですか?」
「もー、いいっていいって。休憩しとってくれたらいいから!」
適当に椅子座っとって――と言われてしまったので、他人に家のキッチンを使われるのも嫌なものかなと思い、木製の椅子に腰かける。
(ちょっとお世話になりすぎてしまった。何かお返しできるものがあれば良いんだけど、どうしよう)
明日の晩御飯どころか、今日の寝る場所さえ検討もつかない私は、取り敢えず目の前のことを考えてみようと思ったが、
(私が本当に戦えるなら、バイトでもさせてもらいたいところだけど、絶対足引っ張るだけなんだよね)
うーん、八方塞がりだな――という結論にたどり着き、まいってしまう。
(まぁ、なんとかなるっしょ)
前向きに考えよう、前向きに!
問題は山積みだけど……ね。
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